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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

障害を「補うこと」と「隠すこと」

 最近、ありがたいことに取材を受ける機会が増えてきています。

 以前に比べると、発達障害の診断を受ける人たちが増えてきていて、その障害特性に応じて、適切な支援方法で、子どもたちが勉強できるようにもなりつつあります。これは、子どもたちにとって、とてもよい変化ではあります。ただ、少し気になることも増えてきているのも事実です。それは、あまりに障害名にこだわってしまっているのではないか?ということです。

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 9月8日のブログにも『「当事者」って、なんだろう』という記事を書きましたが、最近、『「障害」とは、なんだろう』とも思います。先日、今まで、普通に接してきた友人から「実は、弱視なんだ」という話をされました。正直、「本当に!?」と、私と似たような部分をもっている同士でも、全く気づきませんでした。その友人は、システムエンジニアとして、IT関連会社に勤めていますが、同僚には「弱視」という表現はせず、見えないときには「コンタクトを付け忘れてきた」と言うそうです。確かに、私も、同じような部分はあるなぁ、と思うのです。

 ディスレクシアという言葉を使うと、知らない人にはこの障害のことを一から説明しなければいけなくなります。そうすると、時間がかかってしまって、相手に迷惑をかけてしまう恐れがあります。そんな時は、私も「目が悪いんです」と言うことが時にはあります。 
 書く場合は、目が悪いという表現はせずに、パソコン等のタイピングで補うことにすれば、さほど、問題はありません。もちろん、状況に応じて、使用できるツールと、使用できないツールがありますが、環境整備をすることで、かなり自分の障害を補うことができます。

 ここで、大切なことは、「補うこと」と「隠すこと」は別のことなのです。「補うこと」は、自分の障害特性を把握した上で、改善策を導き出すプロセスなので、よいことです。しかし、自分の障害特性を把握せずに、ただ「隠すこと」で他の人に見つからないようにしているのは、あまり、よくはありません。いずれ、大きな嘘をつくことになってしまう可能性があるからです。見えないものを見えているという嘘をついてしまうと、後々、大変なことが起こってしまいます。実は、数年前の私は、後者の考えでしたので、結果的に、職場の人の信用を失い、解雇されてしまいました。これは、「隠すこと」がついには就業機会を失うという、非常にもったいない結果につながったのです。

 11月4日のギズモード・ジャパンのサイトに「障害を抱えた7歳の少年 生活を変えたのはiPadだった(動画)」(http://www.gizmodo.jp/2010/11/7ipad_1.html)という記事が掲載されていました。
 このような技術の本来の目的は、未来にチャレンジする幅が広がるということだと思うのです。障害は障害のまま、自分の一部として共生していくにしても、その障害がチャレンジする幅を狭めてはいけないんだと思います。

 だからこそ、自分の障害という部分を受け入れた上で、現代社会の財産である、人材や機器を活用し、力を借りて、未来ヘとチャレンジして欲しい。目が悪ければ、眼鏡やコンタクトを付けて、補います。でも、そこからが、自分を生かすチャンスなのです。そして、その障害があるが故に、素敵な出会いや発見があるはずです。

 小さい子どもは、自転車に初めて乗るときに、補助輪をつけます。そして、徐々に補助輪がなくても、自転車に乗れるようになりますが、障害があれば、ずっと補助輪が必要な可能性があり、格好悪く感じるかもしれません。でも、補助輪がついている、ついていないことに価値を置くのか、それとも、補助輪がついていても、自分の力で走れることに価値を置くのか。もう一度、一般的な価値観を考え直してみてもいいかもしれません。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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