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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

読書週間で考えたこと

 『読書週間』が始まる10月27日が、「文字・活字文化の日」に制定されました。今年は「国民読書年」で、読書週間標語は「気がつけば、もう降りる駅。」です。「読書の秋」というのは、昔から言われていることですが、私はこの季節になると、喜びと憂鬱が交じり合った心境になります。憂鬱の理由は、学校でも読書に重点を置かれてしまうと、読むことが苦手な人間としては、自分の年齢相応の本というのは、なかなか、読めません。文字を追うことがやっとで、内容理解まで進まずに、周囲を見渡しては、すらすらと読んでいる友達を見て、「自分は、なんて、バカなんだろうか」と責め続けていた日々を思い返します。

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 それと同時に、誕生日が11月ということもあるのかもしれませんが、この季節の風や匂いというのは、心をホッとさせてくれて、誕生日当日には「おめでとう」という言葉をもらうのが楽しみで、学校に行っていたような部分もあります。でも、考えてみれば、その「おめでとう」という言葉をくれる友達がいてくれたことが、学校を“楽校”と思えて、通い続けることができたんだと思います。
 よく、自己肯定感を高めることが大切と言われます。私の場合、読書という点だけ見れば、できのわるい子であったと思います。でも、その読書に対して、もし、当時、支援があったなら、少しずつ自力でやるよりは、文章読解力が向上していたかもしれません。でも、それだけでは、学校で生活し続けるというのは、成り立たないと思うんです。学校には、先生以外に友達もいます。その友達とは、この先、ずっと一緒にいるわけではないけれど、同じ時間や空間を分かち合う仲間です。その仲間と、一喜一憂することも、また、学校での大切なことなんですよね。だから、その仲間がそこにいてくれて、何気なく接してくれることって、案外、大切な要素だと思います。

 これはあくまで仮説ですが、文字の読み書きがこの世からなくなれば、ディスレクシアは障害でも、ハンディキャップでもなくなるわけで、そうしたら、自分は、普通の自然な人間なんだろうなって思うことがあります。視力がわるい人は、めがねやコンタクトがあれば、それは特に気にする必要がないことになるんですよね。最近、その違いについて考えてみると、実はあまり、変わらない気がしています。

 先日、このような記事が出ていました。

ディスレクシア児支援 デジタル教科書の効果に期待(産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/101028/sty1010280729002-n1.htm)

 もちろん、機器ばかりに頼っていると、いざという時に、厳しい状況になるかもしれません。バッテリーがなくなれば、どうしようもないですからね。でも、それは、目が悪い人も同じだと思うんです。めがねが壊れてしまえば、ほとんど、見えなくなってしまいます。だから、今使えるものは、使ってしまうのも手だと思うんです。

 大切なことは、学び続けることができる環境の整備であるので、もしかしたら、楽していると思われるかもしれないけれど、他の人の意見を気にしてばかりだと、その学びの機会すら失ってしまって、路頭に迷ってしまう。それだけは、避けなければいけないことだと思っています。

 そして、苦手な部分があっても、「この人なら、自分の赤裸々な想いを話してみよう」と思う人に色々なことを話してしまうんだと思います。案外、そういう大人に出会う機会って、少ないだけに、そういう、懐の深くて、痛みをわかろうとしてくれる人がもっと、多くなればいいなって思っています。
 何かができるとかできないとかじゃなくて、「何もできないかもしれないけれども、ずっと、ここにいるよ」という大人は、やっぱり、信じたくなりますもんね。

 そんな大人がその子の学ぶ力を引き出してくれて、学びづらさ、生きづらさがあっても、共に生きていく方法を探し、見つけ、成長していくんだと思います。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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