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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

障害をもつと、謝る機会が増える

 人に傷つける言葉を言ってしまったり、ミスをして迷惑をかけてしまったりすると「ごめんなさい」と謝る機会があると思います。これは、人と関わっているのであれば、普通のことです。しかし、これは、自分に明らかに非がある場合です。ですが、自分に非がないのに、謝るしかない場面というのが存在すると思います。

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 先日、新幹線に乗った際に、1歳にも満たないであろう子どもが大きな声で泣いていました。これに対して、母親は、迷惑がかかるので、席を立ち、人がいないスペースへと移動して、あやしていました。しかし、その親子は窓際だったので、通路側にいる人たちの前を通らなければなりませんでした。その際に、親子の隣にいる人が「うるさいはね、静かにしてよ」と言い、母親は「申し訳ありません」と返していました。でも、子どもは基本的に泣くのが仕事というくらい、泣くのです。そのまま、その場であやしたりしていたら、確かに他の乗客の手前、配慮しなければいけないと思いますが、きちんと、配慮した上での行動です。でも、本人たちは悪気がないのに、相手が理不尽に不快に思う時には、こちらが謝らなければならない。これが続くとどうなるのでしょうか。もしかしたら、「自分の子育てが悪い」と自分を責めてしまうかもしれません。

 これは、障害をもつ子どもの親御さんにも言えることです。その子の行動特性によっては、人に迷惑をかけてしまうこともあると思います。そんな時は、親が謝る機会もあります。ただ、そこで、「親のしつけがなっていない」と言ったり、怪訝そうにじろじろ見たりする人って、あまりに安易に人を判断している気がしてならないのです。もちろん、そういう人ばかりじゃないとは思いますが、「この子は障害をもっているんです」と伝えた途端に、「ごめんなさいね、知らずに言っちゃって」と、手のひらを返して、急に謝ってくることもあります。この言葉が自分だけの安易な発想で人を傷つけてはいけない、と思ってのものならいいと思いますが、「障害」=「可哀相」という、また、安易なレッテルは貼ってしまっての言葉なら、さらに傷ついてしまいます。

 そもそも、障害をもっていることが、悪いこととか、可哀相とか、誰が決めたのでしょうか。結局、本人がそんなこと思っていないのに、周りの人たちがそういうことを頻繁に言ったり、おかしな気を使ったりするから、「本当にそうなのかな」と不安になってしまうことって、あると思うんです。だから、本人たちが困っているなら別として、周りの人たちが何も反応しなければいい話だと思いませんか。“愛のある無視”であれば、全然いいんじゃないのかなって。子どもは、子どもですもん。それは障害があるとかないとかの話ではないと思うのです。

 迷惑をかけたことに対して謝ることと、その子どもがここに存在することを謝ることは、違います。その子が存在することを謝ることはしなくていいと思うのです。そこは、どんなことがあっても、譲ってはいけない。子どもが生まれてくること自体がギフトですし、その子がいたからこそ、気づけたこともたくさんあると思うので、そういう部分も大切にしてほしいなって思います。そう思えるような余裕ができるには、やはり、周りの人たちの接し方にかかっているのだと思います。子どもは、みんなで育てるものですもんね。どんな赤の他人であれ、忘れちゃいけないことです。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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