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南雲明彦の「発達障害と生きるということ ~当事者からのメッセージ~」

先生の自己肯定感―地元開催の講演会への思い

 少し先になりますが、8月1日に私の地元である新潟県南魚沼地域にて、講演を開催することになりました。私は、この地域で18年間過ごしました。当日は、おそらく当時の担任の先生達が大勢来られると思います。
 私が学校へ通っていた時代には、「発達障害」の概念自体があまり浸透していませんでした。だから、その当時の先生方を責めたり、恨んだりする気持ちはありません。ただ、これから自分のような子どもの教育に当たる場合には、特別支援教育の観点も入れて、指導に当たって頂きたいという願いがあります。

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 大人になってから発達障害とわかった後で、当時の先生を前にお話しする機会に恵まれる人は、ほとんどないのではないでしょうか。しかし、啓発活動をしていくにあたって、これは避けて通れないことだと思います。私も当時を直視し、先生達にも当時を直視してほしい。確かに結果として、私はもがき、彷徨い続けました。でも、先生達が、自分の良い部分を見つけ、褒めて、伸ばし、信頼してくれていたことは、何よりの宝物です。
 
 当時の先生には、以前行った新潟での講演や私の講演録が新潟の学校に配布されている関係で、ほぼ全ての先生が自分の障害のことを知り、「気づいてあげられなくてごめんね」と言っていただきます。しかし、私は、先生からの謝罪を求めて、このような活動をしているわけではありません。もちろん、気持ちは嬉しいのですが、先生が懸命に自分と向き合ってくれたからこそ、こうして、生きる力を持ち続けることができたのです。だから、とても感謝しています。ただ、「ディスレクシアへの配慮があれば、さらに良かった」という話なのです。

 教育や福祉の現場で、サービスを受ける側の自己肯定感を重要視するのであれば、それを提供する側の人達の自己肯定感も少なからず考えていく必要があるのではないのでしょうか。本人もそうですが、支援してくれる人達も、本当に頑張って下さっています。まず、その点をきちんと、受けとめた上で、「批判」ではなく、「提案」をしていく。その方が、ずっと、本人も周りの人達も楽になるのだと思うのです。

 支援を受ける立場であっても、ただの「受け身」だと、どこか、自分の都合を優先させてしまい、独りよがりになってしまう可能性があります。そして、支援をする立場の人達だって、プロとは言え、同じ人間です。たまにはミスだってあります。モチベーションに波がある時だってあります。しかし、日頃の態度や行動を、きちんと見ていれば、些細なミスを突くより、それを許し、萎縮することなく、思いきり、持っている力を出してもらった方がいいのではないでしょうか。

 もちろん、私はどちらの敵にも味方にもなるつもりはありませんが、当事者の方々にもこの点、しっかりと心のどこかに置いておいてもらえたら嬉しいと考えています。人は、一人では生きられないから、手を借りるのです。信頼関係や安心感の相互関係を築くことができると、「不平不満」ではなく、「喜びや愛」に満ちた場所が、もっと増えてくる気がします。

 講演会で、当時の先生達に伝えたい言葉があります。それは、「先生に教育を受けたことを今でも誇りに思っています。しかし、一昔前と比べて、様々な特徴をもつ子ども達が増えてきました。だからこそ、教育もパラダイムシフトしていきましょう」と。もちろん、子どもと同じように先生達も無理のない程度に。自分が壊れたら、意味がないですからね。


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プロフィール
南雲 明彦
(なぐも あきひこ)
アットマーク明蓬館高校
共育コーディネーター
1984年生まれ。21歳の時に自身が発達障害の一つである「ディスレクシア(読み書き困難)」であることを知る。その後、「ディスレクシア」の存在が世の中に知られていないことから、啓発、支援活動に尽力中。
著書に『僕は、字が読めない。~読字障害(ディスレクシア)と戦いつづけた南雲明彦の24年~』(小菅宏著/集英社)、『私たち、発達障害と生きてます~出会い、そして再生へ~』(共著/ぶどう社)がある。
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