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梶川義人の「虐待相談の現場から」

終結事例検討のススメ

 先日、特養の管理職の方から、こんなお話を伺いました。「利用者家族からたびたび苦情があり、入院を期に退所した事例があったが、改めて検討しておく必要があると思い、デス・カンファレンスのようなものを開いたところ、時間にして30分程度だったが、とても学ぶことが多かった」というのです。

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 デス・カンファレンスは、読んで字のごとく、医療現場での死亡症例の検討会です。本来は、患者の死に至るまでの経過を、関わりのあった職員が集まって振り返り、良かった点や悪かった点などを話し合ったり、利用者やその家族の心情に思いを馳せたりして、今後の対応に役立てるために行われます。

 高齢者虐待事例の場合は、一旦終結すると、本人が死亡していなくても、事後評価のために、同じような検討会が開催されます。もちろん、良い思い出ばかりではなく、辛い思いが蘇ることも少なくありません。しかし、それはそれで、負の感情が表出できますし、即席とはいえ、チームとして関わった仲間がそれを共有するので、カタルシスも得られ、バーンアウト予防に役立ちます。

 また、現在進行形の事例を検討するのに比べて、自分のことも含めて客観視しやすいので、批判の応酬などに陥りにくく、冷静に分析できるようです。冒頭でご紹介した管理職の方は、参加者の全員に発言を求めたそうですが、「職員たちは案外、視るべきところは視て、感じるところは感じているんだな」と、少し驚いたそうです。

 たとえば、「ひょっとして、家族があれこれ苦情を言ってきたのは、○○○な思いからだったかもしれない」、「そういえば、こんなエピソードがあった」など、洞察につながる鋭い発言があったからです。

 そして、最大の成果は、「何かと訴えの多い家族であり、対応の困難性を感じていた職員が多かったにも拘わらず、状況に応じたカンファレンスはあまり開かれていなかった。そのため、家族の真意が十分汲み取れず、苦情につがっていったのではないか」という反省がなされたことだった仰っておられました。

 管理職の方が、デス・カンファレンスを開催した狙いと、まさにピッタリ合っていたわけですが、私は、こうした、職員自らが気づいていく一連の流れが実現して、大変素晴らしいと思いましたので、その旨をお伝えしました。管理職の方は、「わずか30分程度で、こんなに大きな成果が得られるなら、是非、定期的に行いたい」とのことでした。

 おそらく、このデス・カンファレンスが成功したのは、管理職の方が、「何かの答えを見つけ出そう」などと小細工せず、職員の一人一人が、感じたことを素直に言い合って、それを認め共有する場にしたからである気がします。

 参加した職員の方々は、素直に語るうちに、家族に対する感情をいかにコントロールすればよいか、そして、どう考えていけばよいのか、少しだけにせよ、確実に体得できたのではないでしょうか。これを、外部のスーパーバイザーやコンサルタントが、「洞察が足りない!」とか「デス・カンファレンスンなんて定期開催が当たり前でしょ!!」などと先走りしたのでは、効果は薄いと思います。

 デス・カンファレンスに限らず終結事例の検討は、参加者の「ホットな心とクールな頭」を大いに鍛えてくれますし、専用の様式に記録して蓄積すれば、得難い財産となります。私が思うに、これは事後評価の勘所でもあります。


コメント


こんにちは。
初めてコメントさせていただきます。

梶川氏は某センター(←名前が出てきません。ごめんなさい。)の理事、事務局長であったと記憶しておりますが、プロフィール欄には記載がされておりません。
既に退任をされてしまったのでしょうか?


投稿者: Anonymous | 2013年10月26日 14:20

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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