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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter59「私が受けたい治療に家族が反対している その6」

 前回の続きです。Bさんはがんの手術をしたのですが、数か月後に再発していることを医師から告げられました。Bさんの娘のRさんは別の医師に新しい治療をしてもらうことを勧めましたが、Bさんの思いは違いました。

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 Rさんは初めて、父親が長期間の入院を強いられるのであれば、いかなる治療も受けるつもりはない、という意思を知りました。そうなると、Rさんの考えていた都会での治療は無理になります。治療を諦められないRさんは、もう一度父親に確認しました。「新しい治療を専門の医師に受けたくないの?そのためには入院が必要なのよ」しかし、Bさんは黙ったままでした。そして「どうしてもやれというのなら…」と答えました。

 そこで私はRさんに、ラジオ波という治療は、遠くまで行かなくても今かかっている病院で受けることができること。ラジオ波の専門医は一定の症例数をこなしていれば良いと言われていること。今かかっている病院は地元ではトップクラスの症例数をこなしていることを資料を元に説明しました。「ではなぜ、主治医はこの治療法について教えてくれなかったのか」とRさんは言いました。私は、その理由は「おそらくラジオ波が今のBさんにとって効果のある治療法かどうかはまだ実験段階にあるためだと思います」と伝えました。そして「まずはこの治療の効果について主治医はどう考えるのかを聞いてみてはどうか」と伝えました。がんの進行度合いや転移のある場所などによっては、試してみる価値はあると考える医師もいるかもしれません。個別の診断は、医師でなければできないことを伝えました。

 私はBさんに、ラジオ波は順調にいけば一週間以内の入院ですむことが多いが、入院期間についても主治医に尋ねてみて、Bさんが入院はできるだけしたくないと考えていることを伝えて下さい、と言いました。Bさんは、今の主治医のもとで受けることのできる治療であれば安心であること、短い期間で済む治療であれば、皆が望むのであれば、多少入院が長くなっても家に近い病院で頑張ってみる、と答えました。

 こうしてBさんは、次回の受診時にラジオ波治療について検討していることを主治医へ聞いてみることになりました。Rさんは、これからは自分がBさんの診察には同行して、きちんと医師と話し合っていこうと思う、と語りました。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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