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梶川義人の「虐待相談の現場から」

虐待発生予防の明日

 児童虐待、DV、障害者虐待、高齢者虐待、それぞれに取り組みのマネジメント・サイクルが展開し、法律もできて体制が整備され、対応方法も改善されてきています。にもかかわらず、発生数は一向に減りません。これは、私達の社会が持つ発生予防力が脆弱である証なのではないでしょうか。

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 私達は、現実をふまえて、それなりに皆が幸せになれるよう、社会的なシステムを構築し、それを機能させているはずです。しかし、虐待などの社会的問題が発生してしまう。一体どこに落とし穴があるのでしょうか。最近、私は、「現実がちゃんとふまえられていない」のではなかと思うようになりました。

 つまり、「現実をふまえて」とはいうものの、「それは出来ない」と合理化し、現実に目をそむけているところがあるように思うのです。「虐待するのは人間の性だから、発生するのは仕方がない」という人もいます。しかし、虐待していない人のほうが多いのもまた事実です。ですから、「虐待をしない人たちは、虐待をする人間の性とどう向き合っているのだろうか」など、虐待を減らすヒントは必ずあるのではないでしょうか。

 かつて、新幹線の生みの親である技術者は、開発目標の達成を疑問視する周囲に対して、「出来ないというのは、出来ないという可能性が全て否定されて初めて言えることだ」と言ったそうです。私も、出来る可能性を追求していきたいと思います。そのせいか、近頃、主人公の台詞「倍返し」が流行りのドラマを観ても、むしろ、主人公がありとあらゆる手段をつくす姿に感じ入っています。

 法律ができて何年もたてば、虐待防止も社会的にシステム化されてきますが、改善に努めていても、いずれはイノベーションが必要になります。つまり、新しい価値の創造が求められるわけです。私には、発生予防力の脆弱さが、虐待防止のための社会的なシステムの改革の鍵を握っているように思えます。

 9月5日のブログ「私の世界、あなたの世界、そして私たちの世界」でご紹介した立脚点の成立は、個人レベルのイノベーションだといえますが、虐待防止のための社会的システムを人間にみたてたなら、どんな立脚点を成立させればよいのでしょうか。宮沢賢治は「農民芸術概論要領」(青空文庫 図書カード:No.2386)のなかで、「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と述べていますが、そんな立脚点なのかもしれません。「目先の虐待事例だけ追いかけても虐待はなくならない」という教訓でもあります。

 社会問題に対しては、まず喫緊の課題から手がつけられます。つまり、発生した虐待の解決や回復ないし復帰への支援です。しかし、発生予防については、オーソライズされた発生の仕組みの説明がないため、ハイリスクと思われるグループは全て対象にせねばなりません。また、未然に防いだことの証明は、解決などの証明より遥かに難しいものです。そのため、後まわしになりやすいところがあります。これを「仕方がない」として放置すれば、発生予防の力はますます弱まってしまいます。

 こうした事情は、どこの国でも同じでしょう。2020年の東京オリンピックには、各国の虐待問題の関係者も多く来日すると思います。是非とも、わが国の創意と工夫を凝らした発生予防策に驚いて頂けるようにしたいところです。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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