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野田明宏の「俺流オトコの介護」

4年間 ありがとう

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 母が通うデイサービスで一人の職員が退職した。母は、胃ろう造設した翌月から今のデイサービス出陣だから4年近くになる。その4年間の最初から母をお世話してくれた職員の一人だった。このブログでも何度か写真掲載している。
 退職をオレが聞かされたとき、
 「エッ! なんで?」
 当然の質問をした。母を、母の詳細を知る職員だから、介護者としてのオレには極めて痛い。母も同感なはず。
 「父のこと、子供のこともありますね。プライベートな事情でスミマセン」
 もう、これ以上は問い詰められない。お父さんに介護が必要になったことが想像できる。オレと同じフィールドにこれから立つのだから。

 とはいえ、彼女が母の傍からいなくなるのは困る。
 まず、彼女とは気軽に会話ができた。オレがかなり年上ということもあるので、敬語も忘れることはなかった。オレは、かなり言いたい放題を彼女に言えた。つまり、母の介護に必要な微細なことまでも要求した。
 「ハイ 分かりました」
 彼女はいつも、オレの無理難題に応えてくれた。オレという介護者の欲求を満たしてくれた。
 自分の両親等、家族がお世話になっている場合、介護者から言えることがキッチリ言える職員が存在してくれることは極めて有り難い。有り体に言えば、遠慮なし。
 こんな事を言えば、デイサービスで母への対応が?
 一切、考えることはなかった。
 
 介護を必要とされる老人が増え、必然的に施設も増えた。比例するかのように介護を職とする人も増えた。増えれば増えるほどに、介護職員の質が問われるようになった。質の格差。
 だけど、質。介護職の質とは何を指すのだろう? 介護技術を持っていることは当然。もっとも、これは、努力と年月で克服できる。
 オレが思うに、質とは? 向き・不向きではないか? と推測する。とにかく、楽しくお年寄りと接することができる人。これは天性のものに違いない。この天性を教えることは難しい。いや、無理なはず。
 楽しそうに と 楽しい の距離はかけ離れているのだから。楽しそうに、は、あくまでも 楽しそうな振りなのだ。振りならば、教えることも教えられることも全然可能だ。そして、その振りである仮面を剥がしたとき、お年寄りへの不満は爆発する。
 彼女は、楽しくお年寄りと接し、お世話していた。母への対応も同じだった。だから、本当に残念なのだ。質の良い職員に去られるのは。
 誤解があるとエライことなので付け加えるが、母が通うデイサービスは介護保険施行前から存在する老舗。アチコチから研修生も受け入れてきた。オレが問う介護の質は、職員の皆が高い。
 楽しければ、自然と優しくもなれる。そんな光景をオレは今のデイサービスで頻繁に見てきた。

 彼女が現場で働く最後の日。オレは花束を渡した。彼女の目から熱いモノが落ちた。
 4年間、母をありがとう。
 4年間、オレにストレスの掛からない職員でありがとう。
 この二つの意味を込めて。

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コメント


野田さんが 花束を!
サプライズ (゜_゜;)


投稿者: 熊夫 | 2011年07月16日 08:59

熊夫さま

サプライズ ですか?
まあ、私の人相 風体から察するなら
そうですよねー。
でも、もう何十人もの女性に贈って 手渡して
きたんです。
楽しいですよ。
花を贈って怒れたことはありませんから。
例外はもちろんあるでしょうが、
まあ、間違いないです 喜んでもらえること。
その笑顔が、また嬉しいんです。


投稿者: 野田明宏 | 2011年07月19日 19:48

楽しそうを追及すること、仮面を絶対に脱がないことが介護のプロだと思います。
天性を問われると、専門性ってなんだろうって思ってしまいます。
でも、家族って天性を求めるんだよなぁ。


投稿者: 真夏の蚊 | 2011年07月20日 10:28

真夏の蚊さま

はじめまして。
コメントありがとうございます。
私が思うに、
仮面を絶対に脱がないのであれば、
それは、天性と識別できないはずです。
基本的には異なりますが、
家族介護者にそこまで判断つかないでしょう。
しかし、家族介護者の目は節穴ではありません。
ちょっとした不満が表情に出る。見逃しません。
お子さんを持つ母の目も同様では?
ただし、これは私個人の声です。
在宅介護者 施設に託した介護者
皆さんの声を代表してるモノではありません。
そこは、あしからず察していただきたいと想います。
ここまで書いて、矛盾するようですが、
天性も、環境が整わないで駆逐されていった介護職を多く知っています。
忍耐 我慢 辛抱
こんなのも、介護職の専門性のような気がします が、
社会では 当たり前のことでもありますね。
へんてこな返信になりました。スミマセン。


投稿者: 野田明宏 | 2011年07月20日 16:06

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
野田明宏
(のだ あきひろ)
フリーライター。1956年生まれ。約50カ国をバックパックを背負って旅する。その後、グアテマラを中心に中央アメリカに約2年間滞在。内戦下のエルサルバドルでは、政府軍のパトロールにも同行取材等etc。2002年、母親の介護をきっかけに、老人介護を中心に執筆活動を開始。2010年現在、83歳になる母と二人暮らしで在宅介護を続ける。主な著書は『アルツハイマーの母をよろしく』『アルツハイマー在宅介護最前線』(以上、ミネルヴァ書房)など多数。『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)にて、「僕らはみんな生きている」連載中。
http://www.noda-akihiro.net/
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