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梶川義人の「虐待相談の現場から」

対人援助モード

 私は、大学院の頃までずっと児童福祉を志し、親子や親夫婦などの人間関係を調整する必要から、随分と心理社会的アプローチの修行を積みました。ちっとも上達しないので、当時は嫌気がさしたこともあります。しかし、高齢者虐待に取り組むようになって、あらためて、修行しておいて良かったと思います。

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 とくに、面接などに臨むとき「対人援助モード」のスイッチを入れることを学んだのは大きいと思います。といっても、そう意識するだけのことなのですが、通常モードの時に蓄えておいたエネルギーを使って五感をフル活用できるようになります。

 たとえば、信頼関係の構築に役立つので、初めての来談者が一歩も迷わぬ案内すること。来談したこと自体を知られたがらない人がいるので、入口は目立たないほうが無難なこと。本題と関係ないことを連想しないように、部屋にかける絵は花が無難なこと。窓の光を背負うと権威が高まるので、主体性が弱そうな相手は必ず窓側の席に座ってもらうこと(これを怠ると、相手の本意が歪められてしまいます)。対面すると対決的になりやすいので、座る位置をやや斜めにすると無難である、などです。

 表情や動作など、非言語的なことへの感性も高まります。コミュニケーションでは「言語3割、非言語7割」とも言われるくらい非言語的なものは雄弁です。腕組みが「心の中は打ち明けない」というボディーランゲージなのは有名ですが、約束の時間に遅れるのは忌避感がある、ちょうどに来るのは緊張している、早く来るのは乗り気であるなどと、相手のモチベーションが測れることもあります。同様に、椅子への腰掛け方一つでも相手の緊張の程度を測れます。前の方に座っているなら緊張している、深く座っているならリラックスしている、といった具合です。また、身だしなみや服装や家屋や庭などは、心理的な変化が反映しやすいので、心理状態を推し量る良い材料になります。

 ところで、対人援助は、相手の心が開いているか閉じているか察しながら進めるものですが、この感度も向上します。たとえば、「何か上の空のようだけれど、家に残してきた要介護者が心配なのかしら」といった具合です。当たっていれば、上の空の原因を解消して面接に集中してもらえるかもしれません。

 また、対人援助では、相手を共感的に理解することが欠かせませんが、そのために、相手の話を聞きながら映像をイメージし、相手の想いを追体験していきます。つまり、こちらが自分の立脚点を一旦離れ、幽体離脱のように相手の立場にたってみるわけです。しかし、だからといって、できない共感を無理にしようとはしません。「どこが共感できないのか」を冷静に把握しておくのが対人援助モードです。

 これは、「クールな頭」の部分が備わっているからこそなせる技です。ですから、雑談に興じているだけにみえても、実は、相手の価値観を掴むことに全神経を集中しています。そして、個別の価値観が強く関与している「潜在欲求→理由→ニーズ→ウォンツ」の整理をしているわけです。ちなみに、「体内の水分量を常に一定に保つ→水分量が不足する→喉が乾く→○○が飲みたい」などがこの式の例です。

 いずれにせよ、対人援助モードのスイッチを入れさえすれば、プロフェッショナルとしてのコミュニケーションは格段にとりやすくなりますから、是非お試し下さい。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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