言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第12回
2026/04/24
ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。
Q. 指差しや発語がありません。あとどのくらいでことばが出ますか?
A. ことばが出るには段階があります。いまの段階がわかると次にめざすことが見えてきます。
子どもがなかなか話し始めないと、保護者から「どうしたら話せるようになりますか?」と聞かれることがあります。そのとき、「もうすぐことばが出そうだな」と感じる子と、「もう少し段階を踏んでいく必要がありそうだな」と感じる子がいます。なぜそう感じるのかというと、ことば・コミュニケーションの育ちには段階があるからです。今回は、「ことばが出るまでの3つの段階」について解説していきます。
段階1:人への要求がまだない
最初の段階は、まわりの大人に対して、自分のしてほしいことを要求することがまだない段階です。まわりの大人が、子どもが自分で何かを取ろうとしたり、泣いたりする姿を見て、「これがほしいのかな」と予想しながら対応しています。この段階では、人とのかかわりが少なく、単独で行動している姿もよく見られます。
この段階の子に「話せるようになってほしい」と願ってもまだむずかしいため、話すことよりも、「まわりの人に意識を向ける機会が増えること」を目標にしていきます。大人が子どもの視界にそっと入ったり、子どもがやっていることを隣で真似して子どもの世界を楽しんだりしながら、「自分の近くに、何かしてくれる人がいる」という気づきを育んでいけるとよいでしょう。
段階2:人に直接、触れて要求を示す
まわりの人への意識が育ってくると、自分と他者が「別々の存在」であることに気づき始めます。そして、自分の目的を叶えるために「要求する(他者を動かす)」という方法を使い始めます。これが2つ目の段階です。
この段階でよく見られるのが、いわゆる「クレーン行動」です。何かしてほしいことがあるときに、大人の手をぐっとつかんで動かそうとします。たとえば、お菓子の袋を開けて食べたいという状況で、大人の手を引っ張ってお菓子の袋に近づけようとします。また、牛乳が飲みたいときにコップを出してくるような、関係するものを直接、渡してくる行動も見られます。2つに共通することは、「人に直接、触れて要求を示す」ことです。
この時期の目標は、「人とかかわることを心地よく・効果的に感じてもらうこと」です。本人が要求を伝えてきたときは、「ちょうだい、なのね」「食べたいのね」など、ことばを添えながら要求に応えていきましょう。また、くすぐりや高い高いなどのスキンシップ遊びを通して、人とのかかわりの楽しさや「もっとやってほしい」という気持ちを育むことが、次の段階につながっていきます。

段階3:ジェスチャーや声で要求を示す
発語の直前ともいえる3つ目の段階では、「人に直接、触れなくても、伝えることができる」ことに気づき始め、表現の手段が広がってきます。触れずに伝えられる手段といえば、手を叩いて「ちょうだい」を表現するようなジェスチャーや指差しがあります。この時期に少しずつ指差しの頻度が上がってくると、要求場面だけでなく、「飛行機がいた!」といった、発見や驚きを分かち合おうとする場面でも指差しが見られるようになります。

さらに、声の意味にも少しずつ気づき始めます。「ああ〜!」と声を出したら大人が振り向いたといった経験が積み重なることで、「声を出すと、直接、触れなくても人が動く」ことに気づきます。ことばも、人に触れずに思いを伝えられるツールという点では共通しているので、ことばまでもう一歩のところまで来ていると期待できる段階です。
この時期は、子どもの声が聞こえたときには、大人がすぐに反応し、「呼んでくれたの?」「そうだね、〇〇だね」と声で返していくと、声の効果に気づきやすくなります。また、子どもの出した音(声)を大人が真似して返すことで、「人に向かって声を出す効果」を子どもが感じやすくなります(音声の逆模倣と言います)。人とかかわり、伝えることの楽しさを知る経験をたくさん積んでいくことが大切な時期です。
そして、この前後の時期から、まわりの人のことばに対する理解も少しずつ始まります。話せなくても、いま見ているものや体験していることと、ことばとを一致させることで、理解できることばが少しずつ増えていきます(
第1回
・
第2回
参照)。
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子どもがいま、ことばの発達のどの段階にあるのかを知ることで、「次にどんな段階がくるのか」が見えてきます。私の経験ではありますが、ことばがなかなか出ないことに悩んでいる保護者でも、「いまはこの段階だから、まずはこれをめざしましょう」と伝えると、「まだ話せないのか…」とショックを受けるよりも、むしろほっとした表情を見せてくれることが多い印象です。
漠然と先が見えない状態を解消し、いまはどの段階で、次に何をめざせばよいのかがわかることで、かかわりに見通しをもてることが大切だと感じています。
(参考文献)
立松英子・齋藤 厚子『子どもの心の世界がみえる 太田ステージを通した発達支援の展開』学苑社、2021年
矢幡洋『自閉症児のことばを育てる発達アプローチ〜ことばの6ステージ・特徴の理解と逆転の支援〜』ぶどう社、2023年
著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)
言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。
▶ ホームページ: miwamomoko.com
▶ インスタグラム:@hattatsu.hoiku.gakkou
