言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第11回

2026/04/03

ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。


Q. 子どもが困ったときにSOSを出せるようになるには、どうしたらいい?

 

A. 子ども自身が困っている状況に気づいているのか、誰かに助けてほしいと思っているのかを確認してみましょう。

 

 自分ひとりではできないことに直面したときに、人に対して「手伝って」「教えて」などのSOSを表現できる力があると、困りごとが早くに解決したり、一人で抱えてつらい思いをしなくてすんだりします。うまく人に頼れると、子ども時代だけでなく大人になってからも、生きやすいのではないでしょうか。
 発達凸凹キッズのなかには、SOSを表現することが苦手な子どもがいます。大人は、SOSを出してほしいときに「こういうときは、何て言ったらいいのかな?」など、表現の仕方を問いかけることがありますが、実は、この方法ではなかなかSOSを出せるようにはなりません。
 今回は、SOSを出すことが苦手な子の背景に目を向け、どうすればSOSを出せるようになるのかを考えていきます。


そもそも自分が「困っている」と認識していない?

 SOSを出せるということは、「わからない」「できない」「むずかしい」など自分の困っている状況に“気づいている”ことが前提になります。しかし、発達凸凹キッズは、自分がどのような状況・気持ちなのかを客観的に把握することが苦手であることが多く、「困っていると気づいていない」または「困っていると気づくまでに時間がかかる」ということがあります。子どもによっては、トラブルがあったときには何も言わずにニコニコしていても、少し時間がたってから「あのときはいやだった」と伝えてくれることもあります。

 

 

 また、発達凸凹キッズは、先を予測することが苦手なことが多く、「ゲームに負けてしまった」「工作が自分のイメージ通りに完成しなかった」「スケジュールが変更になった」など、本人の想定や思い込みと異なる結果が生じると、大混乱してしまうことがあります。この場合、本人としては、いよいよ困った状況になっていますが、困っている状況を自覚するころには取り乱しているので、残念ながら冷静にSOSを出せる状況ではなくなっていることが多いです。
 一方で、まわりから見ると「困っていそう」に見える状況でも、実は本人は「まったく困っていない」ということもあります。例えば、保育園や学校で先生からクラス全体に向けて指示が出されたときに、ぼんやりと突っ立っている姿を見ると、まわりは「わからなくて困っているのかな」と心配しますが、当の本人はいたってマイペースで、さほど気にしていないというような状況もあるのです。


「人にサポートされてよかった」という経験が少ない?

 「うまくできなければいけない」という思いが強いと、「わからない」「できない」「むずかしい」など、自分の困っている状況を伝えること(SOSを出すこと)が、むずかしい場合があります。そのような子は、「うまくできなくても大丈夫」という安心感や、人にサポートしてもらえてよかったという経験を積むことで、少しずつ表現できることが増えてくるように思います。
 反対に、できないことがあったときに叱られた経験が多かったり、サポートされてよかった経験が少なかったりすると、SOSを出すスキルは身につきにくくなります。また、本人は手伝ってほしいと思っていないのに、「そういうときは『手伝って』って言うんだよね?」とSOSを強制されてしまうと、自分の気持ちと言葉がつながらないので学習しづらくなります。


SOSを出せるようになるためには

 子どもが困っているときにSOSを出せるようになるには、まずは、発達凸凹キッズの困っている状況や気持ちの変化に気づき、大人のほうから歩み寄っていきましょう。「〇〇がむずかしかったね」「〇〇でいやだったね」というように子ども気持ちを大人が代わりに言葉にすることで、子ども自身が困っている状況や気持ちの変化に気づくことが、第一歩です。
 もしも、発達凸凹キッズがサポートを求めていることに気づいたら「手伝って、かな?」のように、子どもの代わりに言葉にしながら、伝え方のモデルを示していきます。サポートしてほしいのかどうかわからない状況であれば、「私は、手伝いたいと思ったよ」「手伝ってもいいかな」というように、大人が感じたことを伝えたり、子どもに確認したりしましょう。
 また、子どもが困っている状況やSOSを表現できたときには、できるだけ時間をおかず、「教えてくれてありがとう」と伝えて気持ちよく解決の方向に向かうようにサポートします。子どもがせっかくSOSを出したのに、「もう少しがんばってみよう」と言ってサポートをしなかったり、「もっと早く(SOSを)言わないとダメじゃない」など、注意やお説教から入ったりすると、「SOSを出してよかった経験」にはつながりにくくなります。

 


進級・進学時には、これまでのSOSスキルが使えないことがある

 一度、SOSを出すことができるようになった子どもでも、進級・進学のタイミングなど、環境やかかわる人がかわると、再びSOSをうまく出せなくなることがあります。相手との信頼関係や安心できる環境があってはじめてSOSを出せているということもあるので、環境が変わるときには、きちんと伝えることが大事です。「SOSがうまく出せなければ、大人から子どものSOSを汲み取って、代わりに表現するところから始めてほしいです」などと、伝えるとよいと思います。


著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)

言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。

 

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