言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第10回
2026/03/13
ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。
Q. 子どもと目が合いにくい気がします。何かできることはありますか?
A. 「こっちを見て」と伝えるよりも、目を合わせることの効果に気づける経験を増やすことが大切です。
視線には、コミュニケーションをとるうえで重要な情報が含まれているため、人は自然と相手の目を見て話します。たとえば、目の前にいる相手が会話の途中で時計をチラッと見ると、「何か次の予定があるのかな」「話が長いと感じているのかな」など、相手の状況を考える手がかりになります。
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴をもつ子どもは、こういった“人の視線の意味”に気づきにくかったり、意味の解釈が独特だったりする傾向があり、周りからすると「目を合わせる行為が少ない」と思われていることがあります。今回は、目が合いにくい子どもの背景を想像し、周りの人ができるかかわりについて考えていきます。
「指さし」や「発語」がなく、目が合いにくい子の場合
子どもは、自分と他者を分けて意識できるようになると、人の視線を追うようになります。人への意識が変わってくると、何か願いを叶えたいときに、手を引いたり、指をさしたりして伝える、ことばで訴えるなど、何かしらの手段で人に働きかけようとします。一方で、人への意識の変化や人に対して要求する姿が見られない時期は、自分の世界を楽しんでいて、あまり人の目を見ないことがあります(※指さしや発語がないことと目が合いにくいことは、必ずしもイコールではありませんが)。
人への意識の変化や要求する姿が見られない時期は、目を合わせることよりも、まずは周りの人への意識が高まることをめざしましょう。たとえば、この時期には「こっちを見て」と伝えても見てもらえないことが多いので、大人は子どもが見ている世界にそっとお邪魔して、視界に入るようにします。
水が流れるのをじーっと見ている子がいれば、大人もそばに近づいて「おみず」「じゃーじゃーだね」など端的に声をかけながら、楽しさに共感していきましょう。また、子どもが水に指をかざしていたら、大人も同じように指をかざしてみるなど、大人が子どもの行動を真似する方法も試してみてください。自分の行動が相手に影響を与えたことを、子ども自身が気づけるような機会をつくっていきます。
さらに、くすぐりや高い高いなどのスキンシップ遊びでも、ひと工夫してみましょう。遊びの途中で、大人はあえて一度行動を止め、子どもが「もっとやってほしい」という表情で見てきたら、「もう1回ね」と言って遊びを再開します。人の目を見ることの「効果」(してほしいことをやってもらえた!)に気づいてもらうための方法です。

「指さし」や「発語」はあるものの、目が合いにくい子の場合
「指さし」や「発語」など、人へのはたらきかけの手段を獲得した後も目が合いにくいことはあります。それでも、「発見したことを共有したい」「楽しさを共有したい」という気持ちが育ってくると、目が合う頻度が高まります。したがって、引き続き、「人と一緒に過ごすのは楽しい」と感じられる経験を積んでいくことが大切です。
また、何か好きな遊びに集中していると、まわりの人の存在が見えにくくなり、結果的にあまり目が合わない子もいます。目の前に好きな物がある状態で正面に大人が座っても、好きな物の先にいる人に意識を向けることがむずかしい場合があります。私の臨床経験のなかでは、このタイプの子は、正面よりも横並びか対角で座るほうが、視線が合いやすくなる印象があります。

さらに、たくさんの物が目の入ると目移りしてしまい、視線が定まりにくい子もいます。意識を目の前の人に集中してもらうためには、目に入る情報を減らす環境の工夫があるとよいと思います。
ただし、なかには、目を合わせることがどうしてもむずかしい子どもがいることも、知っておきましょう。目を見ながら人の話を聞くという、2つのことを同時に行うことがむずかしい子や、人の視線が痛く感じてしまう子にとっては、「目を合わせなさい」という指導はとてもつらいものです。目が合いにくい状況の背景を考えながら、かかわりを調整したいものです。
著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)
言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。
▶ ホームページ: miwamomoko.com
▶ インスタグラム:@hattatsu.hoiku.gakkou
