言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第9回
2026/02/20
ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。
Q. 絵カードで視覚支援をしているのに、うまくいかないのはどうして?
A. まだ絵カードを効果的に使える発達段階ではなかったり、絵カードの使い方がその子に合っていない可能性があります。
発達凸凹キッズをサポートする方法として、「絵カードによる視覚支援」を提案されることも多いと思います。発達凸凹キッズは、“目に見えないもの”をとらえることが苦手なので、絵カードは、“先の予定”を視覚的に示して見通しをもてるようにしたり、“ことばによる指示”を絵で補足して伝えたりと、さまざまな場面で活用されています。
しかし、絵カードを使って視覚支援をしてみたものの、子どもの理解や行動が変わらないという相談も少なくありません。絵カードを効果的に使うためには、どのようなことに留意する必要があるのでしょうか。
絵カードを活用できる発達段階に達していない?
療育や保育において「視覚支援があるほうがよい」という認識が浸透しているのは喜ばしいことですが、「視覚支援での第一選択は絵カード!!」と、やや極端に絵カードが「信仰」されているように思うこともあります。
実際に、目の前の子に対して「絵カードを活用できる発達の状況かどうか」を十分に確認せずに導入すると、うまくいかないこともあります。たとえば、何でも口に入れたり、カードを持たせても投げて遊んだりする発達段階にある子どもには、絵カードの使用は現実的ではありません。また、子どもが絵を注視することができなかったり、描かれている絵の意味がわからなかったりする状況でも、活用はむずかしいと思います。
まだ絵カードを活用できない時期には、実物を見せる、直接現場に連れて行くなどの視覚支援が、理解の助けになります。オムツを替える時にオムツを見せて伝える、トイレまで連れて行って、トイレをしてみようかと確認するといった方法です。

絵カードの「大人が見てほしい情報」に注目できていない?
カードを本来の機能である「見て情報を得るもの」として使えたり、絵をしっかり注視できたりしても、なぜか絵カードがうまく活かされないこともあります。たとえば、発達凸凹キッズのなかには、「全体よりも部分に注目する」という特徴をもつ子どもがいます。そのような子は、大人が伝えたい情報ではない特定の部分に注目していることが考えられます。具体的には、大人はトイレの絵を見せて、これからトイレに行くことを知らせたいと思っていても、肝心の子どもは、絵に描かれた模様や部品などに注目して、全体としてトイレの絵であることを認識していないことがあるのです。したがって、絵カードを活用する前に、「これは何に見える?」「この絵はおうち(または園)のなかのどこにある?」など、絵そのものを理解できているかどうかを確認することが大切です。
また、絵を見て何が描かれているかわかる子どもでも、描かれた絵が実際に使用するトイレと少しでも異なっていると、「同じもの」と認識しないこともあります。そのようなときには、実際に使用するトイレを写真に撮ってカードを作るなどの工夫が必要です。

子どもを「誘導」するためだけに使っている?
絵カードを活用しているうちに、だんだん子どもがいやがるようになり、結果的に絵カードを使ったサポートを「やめる」ということもあります。これは、その子にとって、絵カードが「よい道具」にならなかったということなのだと思います。たとえば、トイレに行くことがきらいな子に、トイレに行く前に必ず絵カードを見せていると、絵カードは「いやな気持ちになる道具」になってしまいます。
発達凸凹キッズにとって視覚支援のための絵カードは、生きやすくなるための道具として長期的かつ効果的に使いたいものです。しかし、使い始めの時期に子どもが素直に応じてくれるからといって、大人の都合のいいように使い続けると、子どもが成長した時に「一生、見たくもないいやなもの」となってしまうこともあります。それはとてももったいないと思います。特に幼児期のころは、たとえば、おやつを食べる前におやつのカードを見せるなど、子どもが好きなことをサポートするために使いましょう。カードの意味がわかるようなったら、外出先から帰るときにおやつのカードを見せて、「おやつを食べに帰ろう」と伝えるなど、別の場面で見通しを示すことにも活用することができます。
視覚支援としては、絵カードのほかに、指差し、ジェスチャー、モデルや見本、写真カード、文字、工程表などさまざまなものがあります。子どもの発達や理解度に合わせて、何を活用したらよいかを検討し、決めていきましょう。
著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)
言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。
▶ ホームページ: miwamomoko.com
▶ インスタグラム:@hattatsu.hoiku.gakkou
