言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第8回
2026/01/30
ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。
Q. 質問をしても自分の話ばかりします。どうすれば、質問に答えられるようになりますか。
A. 質問に答えられない理由を把握して、対応を工夫しましょう。
発達凸凹キッズはコミュニケーションが苦手だったり、コミュニケーションの方法が独特だったりすることが多いです。多少お話ができるようになっても、何か質問をされると、「新幹線のN系がね…」というように、質問にまったく関係のない話題を一方的に返してくることがあります。そして、自分が話し終えるとスッとその場からいなくなったりするので、まわりは驚いてしまいます。
このような行動は、「自己中心的」「相手の気持ちがわからない」などと評価されてしまうことがありますが、実は、さまざまな背景が考えられます。今回は、質問・応答のやりとりが成立しづらい子どもの行動の背景と対応の工夫について解説していきます。
質問に答えるために必要な力
質問に答えるためには、①相手の話に意識(注意)を向ける、②話の内容を理解する、③(話に合わせて)自分の思いを言葉にする、という3つのステップが必要です。どこかにつまずきがある場合には、質問に答えずに立ち去る、質問に答えず自分の話ばかりする、または質問に答えてはいるものの求められていることからズレている、という状況が生まれます。
相手の話に意識を向ける力
まず、相手の話に意識(注意)を向けられなければ、質問に気づかなかったり気づくのが遅くなったりして、質問・応答が成立しづらくなります。たとえば、まわりの音や目に入る刺激に敏感に反応するタイプの子は、目の前の人が話を始めても、話に集中しきれず聞き逃しやすくなります。また、過集中の傾向があるなど、自分の世界に入りやすい子は、人から話しかけられても気づきにくいことがあります。さらに、最初は話を聞こうと努力していても、会話のラリーが続いて複雑になったり、興味・関心がわきにくい話題だったりすると、意識を向け続けることができず、話を聞けなくなる子もいます。
相手の話に意識を向けることが苦手な子どもには、名前を呼ぶ、肩をトントンとたたく、子どもの視界に入って意識喚起をするなど、まずはしっかりと意識を向けてもらってから、話しかけていきましょう。また、長い話に意識を向けるのが苦手な子どもには、話をコンパクトにまとめる、子どものわかる長さの言葉で話す、イラストなど注目してもらえるような要素を取り入れながら話すなどの工夫も大切です。

「どうしていつも聞いていないの!」と怒られると、誰でも話を聞くことがいやになるでしょう。反対に、「人の話に意識を向けてよかった」と感じられる経験を積むことができると、話を聞く構えが変わってくることが多いです。あえて子どもにわかる短い声かけをして、「よく聞いていたね」「聞いていたから、うまくできたね」など、ポジティブな言葉を返していきましょう。
話の内容を理解する力
何を聞かれているかわからないと、当然、質問にうまく答えることはできません。わからないことが増えるのが苦手なタイプの発達凸凹キッズは、話の内容がわからないと逃げてしまいます。
まずは、どのような質問であれば答えられるのか(または答えられないのか)、子どもの力を把握する必要があります。どの子も、最初からいろいろな質問に答えられるわけではなく、まずは「なに?」→「どこ?」→「だれ?」「お名前は?」など、物の名前や場所に関する質問、次に「いつ?」→「なぜ?」「どうやって?」など、時や理由、方法に関する質問の順に、少しずつ答えられる質問が増えていきます。また、最初は「これはなに?」など目の前に見えているものしか答えられなかったものが、3歳前後には「どこに行ってきたの?」など目に見えない直近の過去の出来事を振り返ることができるようになります。
もし、質問をしたときに、うまく答えが返ってこないときには、「この質問はまだ難しいのかもしれない」と考え、質問の難易度を下げて聞いてみてください。そして、子どもが答えられたときには、「教えてくれてありがとうね」というポジティブな言葉も忘れないでください。

※順番が多少前後することもあります
自分の思いを言葉にする力
たとえ相手の話を理解できても、どのように答えたらよいかわからないときは、質問・応答は成立しづらいです。このような場合には、ある程度、子どもの答えが想定できる質問をしてみましょう。「いま、何をしているの?…ブランコで遊んでいるね」など、答え方のモデルを示します。また、漠然と「今日はどうだった?」「幼稚園で何をしたの?」などと聞かれても、子どもはどの部分を話せばよいのかわからない、ということもよくあります。そこで、写真など見てわかるものを活用して、「今日はすべり台で遊んだの?」などと具体的に聞いてみたり、「幼稚園で朝の会をして、その後は何をしたの?」など時系列にそって聞いていくと、答え方がわかる子もいます。
ただし、話し始めたばかりの時期は、ひとりで話すのが精一杯で、相手の話に注目しながら自分の思いを言葉にするのは難しいものです。「とにかくお話したい!」という時期には、質問・応答よりも、話す楽しさを味わってもらうことを優先しましょう。話を組み立てる力がついてくると、相手の話をふまえて話す力もついてきます。もし、やりとりをしたいときには、子どもの話している話題にそって質問をしてあげてください。新幹線のことを話したいのであれば、「どっちの新幹線がかっこいいの?」などと聞くと、よろこんで答えてくれるかもしません。
著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)
言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。
▶ ホームページ: miwamomoko.com
▶ インスタグラム:@hattatsu.hoiku.gakkou
