言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第7回
2026/01/09
ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。
Q. 発音や口の発達が気になります。家庭でできることはありますか?
A. 食事のときに、お口をしっかり使えているかを確認してみましょう。
第6回 では、発音の不明瞭さが気になるときの対応について解説しました。今回は、積極的に発音練習に取り組む前の時期に、日々の生活のなかで、お口の発達を促すためにできることをお伝えします。
発音が不明瞭な子は、食べかたにも課題がある
発音と食事には、いずれも唇や舌を細かく協調的に動かす力が必要です。したがって、口の動かし方が苦手な子どもは、発音と食べることの両方に課題が見られることが多いです。食事の課題としては、食べ物を丸飲みする、年齢相応のかたい食べ物を食べられない(食べ物を口から出す、かたいものを避けようとする等)、噛むときに口が開く、食事に時間がかかりすぎるまたは食べるのが早すぎる、口いっぱいに食べ物をつめ込む、偏食がある、などがあげられます。
視点を変えると、食べかたを改善していくことで、口の動きが全体的によくなり、発音にもよい影響が出ることがあります。
調理方法が子どもの「食べる力」に合っているかを確認する
子どもの食べかたで気になることがある場合には、まずは、「食材の調理方法(食形態)が子どもの食べる力に合っているか」を確認しましょう。一般的に、子どもの運動の発達や歯の生えかたに応じて、6か月ころにはペースト状のもの、1歳前には歯ぐきでつぶせるものなど、食材のかたさや大きさなどの調理方法を変えていきます。3歳以降は、大人に“近い”咀嚼の力を獲得していくといわれています。
しかし、口の発達が実際の年齢どおりに進んでいるとは限らないことに注意が必要です。口の動かしかたに不器用さがあったり、年齢相応の咀嚼力を獲得していなかったりする場合は、年齢相応のかたさの食べものを提供しても、口の中でうまく処理できないことがあります。うまく処理できないときには、食べ物を口の中にため込んだり、丸飲みしたり、口の外に出したりという姿が見られます。
そのような姿が見られるときには、試しに、いまの食材の調理方法から前の段階の調理方法に戻してみてください。たとえば、幼児食がうまく食べられない時には、離乳食完了期程度(歯ぐきでつぶせるくらいのかたさ)の食材の調理方法に戻します。その結果、気になる姿があまり見られなくなったら、その段階で練習を重ね、上達してきたころに、次の段階の調理方法に進みます。子どもがどの段階にあるかを確認するには、離乳食や幼児食の本やインターネットの情報が参考になるほか、自治体や幼稚園・保育園の栄養士に相談してもよいでしょう。口の動かしかたについては、小児歯科医や言語聴覚士に相談してみましょう。

ちょうどよい一口の量で食べられているかを確認する
もう1つ確認してほしいのは、口の中に食べ物をつめ込んでいないか、つまり「噛みやすい一口量で食べられているか」ということです。
食べ物を飲み込むためには、奥歯や舌を上手に使って、消化しやすいように細かく砕いたり、口の中で移動させながら、飲み込みやすい形のかたまりにする必要があります。そのときに、口の中いっぱいに食べ物がつまっていると、噛みづらかったり移動させづらかったりして、食べ物の処理がままなりません。結果的に、食べ物を口の中にため込んだり、口から出したり、丸飲みをしたりという姿につながってしまいます。
口の中につめ込む癖がある場合には、「どのくらいの一口量がよいか」を教えていきましょう。たとえば、幼児用のスプーンの半分くらいまでを目安にすくう経験や、一口の量を減らしてお口を閉じて食べているときに「いいね」とほめられる経験を重ねていきます。
この方法が難しかったり、衝動的に食べ進めたりする場合には、大人と一緒にかじりとりの練習をすることをおすすめします。練習の方法は、大人がスティック状に切った食べ物を持ち、子どもに前歯で一口ずつ噛み切ってかじりとらせます。このときに、奥歯よりも敏感な前歯を使うと、「このくらいの力で噛めばよい」という感覚を得やすくなり、咀嚼力を上げることにもつながります。また、子どものお口が空っぽになってから次の一口をかじりとらせることで、子どもが感覚的に「口が空になっているほうが噛みやすい」ということを理解できるようになります。何度もやらされると子どもがいやになってしまうので、おやつのときや、お腹が満たされて残り数口で食べ終わるときなど、タイミングをみながら行うのがおすすめです。日々の食べかたを見直して、口の動かしかたを上達させる参考にしてみてください。
なお、摂食・嚥下障害がある場合には、小児科医や小児歯科医の指示のもと、食べる練習を行ってください。また、窒息や誤飲などのリスクに十分配慮してください。

著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)
言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。
▶ ホームページ: miwamomoko.com
▶ インスタグラム:@hattatsu.hoiku.gakkou
