言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第6回

2025/12/19

ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。


Q. 発音が不明瞭です。発音の練習はいつからしたらよい?

 

A. 4〜5歳ごろからが適していると言われますが、それより前の時期でもできることはあります。

 

 小さいころには、「さかな」を「しゃかな」と発音するなどの「発音の誤り」はよくあることです。たいていの場合は、成長とともに、大人と同じように発音できるようになっていきます。しかし、年齢があがっても発音の誤りが長く続く、年齢が低くても不明瞭さが原因で人とのやりとりに支障が大きいといった場合には、発音練習を検討したほうがよいことがあります。今回は、発音について、よくある疑問にお答えしていきます。


発音練習をはじめるのに適した時期がある

 発音の修正の練習を開始するのは、4〜5歳ごろからが適していると言われています。この時期には、日本語に含まれる多くの音を自然に発音できるようになる一方で、誤って発音している音が固定化されてくるからです。また、この時期には、ことばを構成する一つひとつの音に注目する力である「音韻意識」が高まるので、さかなの「さ」のように、音を抜き出して考えられるようになるためです。反対に、音韻意識が育っていない時期の子どもは、「さかな」という一つのかたまりでことばを捉えているため、「さ」を抜き出して発音を修正することに、ピンと来にくいということがあります。
 ただし、発音はことばの発達と関連が深いため、ことばの発達が4歳未満であったり、音韻意識の育ちが不十分だったりする場合には、発音練習はいったん後回しにして、ことばや全般的な発達支援を優先したほうがよいことがあります。ことばの力が育っていない状況で発音練習を積極的に行うと、必要以上に練習期間が長くなるなど、子どもへの負担が大きくなってしまいます。

 


練習を始める前に確かめたい子どもの力

 発音練習をするときには、ことばの発達以外に「人から求められたことに応じる力」が必要です。人から「〇〇をしようね」と言われても、自分のやりたいことばかりをやろうとしたり、ごく短時間しか応じられなかったりする場合には、練習の土俵に乗ることがむずかしいため、まずは人とかかわる力を育む支援から始めます。
 また、「一定時間、目の前のことに集中する力」がないと、音の細かな違いを聴き分けたり、くり返し特定の音を修正する練習がとても負担になります。その場合は、短い時間、好きな遊びに集中することから始めることもあります。
 さらに、明瞭な発音のためには、口をうまく動かす運動機能が必要ですが、口の運動機能は、歩く・走るなどのからだを大きく動かす力(粗大運動)の土台があってこそ育っていくものです。全身を大きく使って遊ぶ時間も大切にしたいです。


練習を始める前の時期でもできること

 最後に、まだ積極的に発音練習ができる状態ではないとわかっていても、「発音が心配…」という場合に家庭や園でできること、専門職(小児歯科医、言語聴覚士など)に相談する目安について紹介します。
 1つ目は、「言えない音が変化していくか」を観察することです。たとえば、「マ行」のことば(例:ママ)は、2歳ごろには言えなくても、3歳ごろには言えるようなることがあります。発音には完成する目安の時期があると言われており、目安の時期までは音が変化してくるかどうかを観察していくことが大切です。もし、目安の時期を大幅に過ぎても、「言えない音」に変化の兆しがない場合には、専門機関に相談してみてもよいと思います。


■発音が完成する時期の目安

 

 2つ目は、「特殊な発音のクセが出ていないか」を観察することです。発音の誤りのなかには、成長のなかで自然と改善していくものと、改善しにくいものがあります。改善しにくいものとして、「ち」が「き」、「じ」が「ぎ」に近い音になったり、唾まじりの雑音を伴ったりするような発音(側音化構音)です。また、「た」が「か」、「だ」が「が」に置き換わる発音(口蓋化構音)も、その1つです。これらのクセが見られ、保護者や本人が改善をのぞむ時には、専門機関に相談してみましょう。
 3つ目は、「口の動きで気になることはないか」を観察することです。発音の不明瞭さが強い子どもは、食べ方にも課題が見られることが多いです。たとえば、食事のときに丸飲みするくせがある(あまり噛んでいない)、速く食べ過ぎているまたは時間がかかり過ぎている、口を閉じずに開けて噛んでいるなどの特徴がある場合には、発達の過程で獲得される舌の運動が何らかの理由で獲得しにくい状況にあると推測されます。また、食事以外でも、よだれが多い、鼻づまりがないのに口がぽかんと開いている、ということがないか確認してみてください。気になる点があれば、4歳以前でも、口の機能を高める練習や食べ方の改善をしていくことで、発音の不明瞭さが改善することもあります。

 

次回は、食事を通して口の機能を高める方法をお伝えします。


著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)

言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。

 

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