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川村匡由の人生設計ゆとりサロン

雇用を考える(4) 

■不安定な政局もあって予断を許さない情勢

 さて、このような雇用問題に対し、民主党政権はこの年末、通訳業など専門性の高い業務などを除く登録型の派遣業の禁止をはじめ、雇用契約の期間の長い製造業における常用型以外の労働者派遣、日雇いや雇用契約が3か月以内の派遣の禁止、派遣社員と派遣先社員との賃金などの均衡待遇の考慮などを主とした労働者派遣法の改正案を明らかにしています。

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 また、失業などによる生活保護の申請の窓口業務の迅速な対応の促進、雇用保険(失業給付)の切れた者が生活費を受けながら無料の職業訓練を受け、再就職を促進する求職者支援制度、および最低賃金の引き上げに取り組む中小企業に支給する奨励金制度の創設、さらには来年度の税制改正において法人税の実効税率を5%引き下げ、その分を雇用創出に充てるなどの施策を講ずるべく、年明けの次期通常国会に提案したいとしています。

 しかし、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の処理や相次ぐ閣僚の失言、各地の地方選挙における党公認および推薦候補者の落選、また、「政治とカネ」をめぐる野党からの追及を受け、政権内での内紛へと波紋が広がっており、これらの法改正などの審議が順調にできるのかどうか、不透明な情勢です。また、このような民主党政権の“敵失”に一喜一憂し、大所高所からの政策を示し得ない自民党など、野党にも国会での審議の促進に協力を望みたいところです。

 一方、経済界は「100年に1度の経済危機」(?)や経済のグローバル化を理由に海外に進出し、人件費の安い現地人を雇用して巨額の利益を上げているほか、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を政府に迫っています。おかげで企業の全体の9割を占め、長年、日本経済を支えてきた中小企業は受注減によって倒産が相次いでおり、産業の空洞化はますます進むばかりです。

 それだけではありません。貿易の自由化や欧米化した国民のライフスタイルの浸透に伴い、低価格の各種商品が中国などの新興国から大量に輸入されています。その一方で、日本の農業は高齢化の進展や後継者不足、さらには減反政策で専業従事者が急減しており、農業の再生が叫ばれて久しいにもかかわらず、産業・就業構造は日本が世界に誇りうるモノづくりや水、環境、介護などのニュービジネスへの転換に踏み切らず、旧態依然とした大企業の利益優先の土建型公共事業やハコもの行政に終始し、かつ政権内の権力闘争や集票に固執しています。
 しかも、こうした問題を先送りする政治体質は一向に改められず、国際社会から置いてきぼりとなりつつあるのが実態です。

■シニア世代と「新しい公共」

 そのような意味で、新政権が掲げた「コンクリートから人へ」、「強い経済・強い財政・強い社会保障」の公約やスローガンはどこへ行ってしまったのか、懐疑的にならざるを得ません。このような現状を打破するには、たとえばアメリカのように定年(停年)制を撤廃し、働く意思と能力を持っているシニア世代には60歳以降も雇用を保障し、報酬(賃金)の一部を税金や社会保険料として納め、増える一方の社会保障費の抑制に協力してもらうとともに、老化の防止や生きがいの発見、さらには年金や医療に特化している社会保障費を雇用保険(失業給付)や介護、子育て支援に回すなどの事業仕分けに努めるべきではないでしょうか。

 また、大学の新卒者など、若者には都市部にある大企業や有名企業だけでなく、中小企業、あるいは地場産業、とりわけ、農業に関心を持ってもらうよう、国と自治体が一体となってその再生に取り組み、東京への一極集中を改め、地域活性化を図るための施策を大胆に推し進めるべきでしょう。

 具体的には、農業大国であるフランスなどの国策を教訓にすべきです。また、介護などはスウェーデンやデンマークなど、北欧の福祉大国を見習うべきでしょう。

 そのためには経済界の政治への「国家100年の計」に立った参画も必要ですが、何よりも私たち国民一人ひとりが戦後65年、いえ、明治維新以来、150年近くも甘んじてきた「お任せ民主主義」、あるいは「おねだり民主主義」から脱皮し、国民こそが政治や経済の主人公であることを再認識し、従来のソーシャルガバメントから新たなソーシャルガバナンスへと意識改革すべきでしょう。

 いずれにしても、私たち国民は目先の政局の動向やメディアの報道だけに右往左往せず、短期的な問題を見据えながらも、しかし、中長期的な日本のありようについて考え、国をあげてその合意形成を図り、国際社会において名誉ある地位を築くとともに国際貢献するよう、英知を絞ることが最も重要ではないかと思われます。

 とりわけ、「功成り名を遂げた」シニア世代にあっては、その責任もまた、他世代よりも一層大きいものがあるように思われます。それが真の「新しい公共」ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

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ソーシャルガバナンスの担い手として期待されるシニア世代(群馬県富岡市にて)


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プロフィール

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川村匡由
(かわむら まさよし)
社会福祉学者・博士(人間科学・早稲田大学)、行政書士有資格、福祉デザイン研究所所長。シニア社会学会理事、世田谷区社会福祉事業団理事、元大学基準協会評価委員、元社会福祉士試験委員。

主著に『地域福祉とソーシャルガバナンス』(中央法規出版)、『社会保障論(編著)』、(ミネルヴァ書房)、『人生100年"超"サバイバル法』(久美出版)など。山岳紀行家としても知られており、本サイトで「山歩きのすすめ」などを寄稿している。

川村匡由+福祉デザイン研究所のホームページ http://www.geocities.jp/ kawamura0515/

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