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失語症の人とのコミュニケーション

【Q】
失語症の高齢者とのコミュニケーションの工夫について教えてください。

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【A】
失語症の主な症状
 失語症とは、脳卒中や頭部外傷などで脳の言語中枢と呼ばれる部位が損傷を受けることにより、それまで正常に働いていた言葉の機能が障害された状態です。コミュニケーションの4つのポイントすべてにわたって障害されます。
 具体的な症状は表1に示すとおりです。まずは相手を理解する能力からみていきましょう。
 聴覚的理解では、単語の意味がわからない、単語をいくつか言われるとその一部しか覚えられない、長い文章の意味がわからないなどの症状が起こります。視覚的理解では、文字の意味がわからない、文字の意味を取り違えるなどの症状が起こります。失語症の人の多くは、仮名が苦手です。1つひとつの文字に何らかの意味がある漢字を示されたほうが理解できることがあります。
 次に、自分の考えや気持ちを表現する能力です。発話では、言いたい言葉が出てこない症状が中心です。症状には、全く言葉が出ない「喚語困難」、言いたいことと異なる言葉が出てしまう「錯語」、肝心なことが言えないのでまわりくどく言う「迂言」があります。相手の言ったことをまねできない「復唱障害」もあります。書字の障害は、発話と似ています。字が思い浮かばない「書字困難」、書きたいことと違うことを書いてしまう「錯書」です。

≪表1≫ 失語症の症状
具体的な症状
理解面聴覚的理解単語の意味がわからない。
長い文の意味がわからない。
視覚的理解文字の意味がわからない。
文字を意味を取り違える。
仮名より漢字のほうがよくわかる。
表出面発話喚語困難(言いたいことが全く出てこない)
錯語(言いたいことと違う言葉が出てしまう)
迂言(肝心な言葉が言えず、まわりくどくなってしまう)
復唱障害(相手の言った言葉をまねして言えない)
書字書字困難(文字が全く思い浮かばない)
錯書(書きたいことと違うことを書いてしまう)

特徴を踏まえたコミュニケーション上の工夫
 失語症の人とコミュニケーションをとるときは、4つのポイントごとに、強く障害されている側面と、能力が残っている側面をうまく使ってアプローチすることが大切です。
 失語症の人は相手の言っていることを理解するのに相当の努力が必要なので、こちら思っている以上に疲れやすく、雑音などがあると注意が散漫になります。静かな場所で、できれば1対1で接するのが基本です。難しい言葉よりも簡単な言葉、長い言葉よりも短い言葉で話したほうが理解しやすくなります。
 言葉以外のコミュニケーション手段、例えば絵や写真、身振り、表情を活用するのも方法です。話題を急に変えない、伝わらなければ繰り返す、伝わったかどうかを確認することで、重度でなければある程度のコミュニケーションがとれます。また、仮名より漢字がわかりやすいことが多いので、漢字を活用し、仮名文字を並べた五十音表は使わないようにしましょう(表2)。
 失語症の人は言葉の機能が失われているだけで、ほかの知的機能や記憶能力は正常です。不必要に子ども扱いすると、人としての尊厳が大きく傷つきます。言葉が話せない不安や焦燥を察して、できることを見つけてほめる態度を心がけましょう。

≪表2≫ 失語症の人への対応
・静かな場所で
・ゆっくり
・短く話す
・わかりやすい言葉で
・具体的な内容を
・絵や写真を使って
・身振り、表情も使って
・急に話題を変えない
・伝わらなければ繰り返す
・伝わったかどうかを確認する
・漢字の単語はわかりやすい(仮名や五十音表は難しい)


出典:飯干紀代子『認知症の人とのコミュニケーション 感情と行動を理解するためのアプローチ』中央法規出版、2011年


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