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梶川義人の「虐待相談の現場から」

特別な配慮と職人芸

 今回は、特別な配慮が必要な場合の支援シナリオと、その実践についてみてみましょう。まずは、タイプ別のシナリオについてです。

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嫌々タイプ
 問題意識が薄い、介入拒否があるなど、支援への参加性が悪いタイプです。この場合、対応者から問題提起はしません。その代わり、なるべく問題から離れた、それも小さなことを、褒めたり労ったりします。「お庭が綺麗」でも、会ってくれたことに対してでも、何でもOKです。そして、少し雑談に興じたら、あっさりと終了します。立ち話程度に1回の面接時間を短くして定期的に何度か会い、信頼関係を構築していくわけです。雑談を通して、相手の人となり、とくに価値観を体系的に把握するのがコツです。これが掴めれば、後のやりとりは格段にやりやすくなります。
不平不満タイプ
 他者の悪口を並べたてるなど、他責性が強いタイプです。この場合も、対応者からの問題提起はせず、問題からなるべく離れた小さなことを、リフレーミング(意味づけを変える)技法を用いて、褒めたり労ったりします。「赤鼻のトナカイ」と同じです。とくに、相手の観察力を褒めるのが効果的です。「そんな細かい(重箱の隅をつつくような)ことによく気づきましたネ」といった具合です。また、「教えて下さい」という姿勢も効果的です。そして、面接の終了時、他者や状況の観察をしたり、不平不満の「例外」を捜したりする課題を出して、次回はその結果報告から話して貰うようにすると、信頼関係構築への近道になります。

 いずれのタイプも、信頼関係ができたら、後は一般的なシナリオに移行します。しかし、パーソナリティー障害が疑われる場合は違います。まずは、精神科医など、専門家の意見を軸に支援計画を立てて、コミュニケーション時間を一分一秒でも短くするのがおすすめです。相手に振り回されにくくなるからです。もちろん、治療目的で接する場合はこの限りではありません。

 また、虐待を告知して対立的に介入する場合は、認知行動変容的なスタイルをとります。信頼関係の構築は放棄はしないものの、相手には、望まないことでも実行して貰うことにやすいので、入念なシミュレーションが必要になります。もちろん、合法の範囲内に限りますが、私はいつも、借金取りの「追い込み」を教科書にしてきました。

 つぎに、シナリオの実践についてですが、よく「理解はできるが、実行するとなると…」というように、さすがに一筋縄ではいきません。話しやすいような環境心理学的配慮は欠かせませんし、コミュケーションの約7割を占める非言語的なものへの感受性や配慮が、その後を大きく左右するからです。本来なら、面接の様子を録音や録画をして、逐語録を起こし、スーパービジョンを受けるなかで、自ら考え体得していくような修行が必要不可欠だと思います。

 もっとも、きちんとしたスーパーバイザーを確保するだけでも一苦労です。そこで、簡単にできるわりに効果的な方法をご紹介します。それは、時間の長短に関係なく、立ち話程度でも1回の面接と考えて、全ての面接に通し番号をつけることです。こうすれば、「第○回から第○回まで信頼関係構築」など、プロの面接の代名詞である構造化を意識しやすくなりますし、工夫次第ではグラフ化できますから、より科学的な分析も可能になります。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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