【第135回介護保険部会】社会福祉法等改正と特定地域の考え方について

2026/07/15

第135回介護保険部会における報告・議題について紹介します。

 2026年6月29日に、「第135回社会保障審議会介護保険部会」が開催されました。
 主な議題は、「社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)」「第10期介護保険事業計画の基本指針(案)」「介護保険制度における特定地域の考え方」の3つです。部会全体について知りたい方は「 第135回社会保障審議会介護保険部会の資料について 」をご覧ください。

 


1.社会福祉法等の一部を改正する法律について(報告)

 令和8年法律第51号「社会福祉法等の一部を改正する法律」においては、質の高い福祉サービスの確保と社会福祉事業等の安定した経営基盤の確立の双方の実現に向け、地域の実情に応じた包括的な支援体制の拡充、福祉人材の安定的な確保及び定着支援、支援基盤の強化等を主として、社会福祉法、介護保険法、老人福祉法、障害者総合支援法、児童福祉法などが改正されました。
 改正の趣旨は、「小規模市町村での相談支援等に係る事業や人口減少地域における特例介護サービスの類型の新設、一定の要件に該当する有料老人ホームに係る登録制度の創設等の措置を講ずるとともに、福祉人材の安定的な確保や定着を図るため、介護支援専門員の資格に係る更新制の廃止及び法定研修の見直し等の措置を講ずるほか、介護分野等における質の高い福祉サービスの確保等を図るための都道府県協議会を設置すること、一定の要件を満たす社会福祉連携推進法人における社会福祉事業の実施を可能とすること等の措置を講ずる」こととされています。
 これらの改正規定は、一部を除き、2027(令和9)年4月に施行されます。本サイト「 社会福祉法等の一部を改正する法律案 」 の記事でも取り上げていますので、適宜ご参照ください。

 


2. 第10期介護保険事業(支援)計画の基本指針(大臣告示)

 第10期介護保険事業(支援)計画の基本指針(大臣告示)について、見直しのポイント(案)と第9期計画からの 改正案 が示されました。
 2040年にかけて、地域のサービス需要が変化していく中で、第10期介護保険事業(支援)計画からは、都道府県が積極的に関与しながら、2040年等の中長期の介護サービス見込量を見据えて策定していくことがさらに重要となります。そのため、「中山間・人口減少地域対応(後述)」「医療・介護連携」「高齢者向け住まい」「人材確保、生産性向上・経営改善支援」等について、第9期までの取組を前提に、第10期計画における位置づけを明確化したうえで、必要な取組を進めるべきであるとしています。

 

 本部会においては、参考資料として、下記のとおり現時点でのスケジュールも示されました。

 

出典:厚生労働省第135回介護保険部会 参考資料2「基本指針について(参考資料)」p.2  

 

 なお、第10期介護保険事業計画については本サイトの「 2040年を見据えた第10期基本指針について 」でも詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

 


3.特定地域(中山間・人口減少地域)の考え方

 特定地域(中山間・人口減少地域)に関する議論については、第133回社会保障審議会介護保険部会(2025年12月)でとりまとめられた 意見書 の「Ⅰ-2.中山間・人口減少地域における柔軟な対応等」において、いくつかの事項が掲げられています。本記事では、その意見書を踏まえて議論された、第135回介護保険部会の内容を紹介します。

 

①2040年を見据えた地域の類型化とサービス提供体制の構築

 厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に進めてきた地域包括ケアシステムの構築を踏まえ、さらにその先の2040年を見据えた介護サービス提供体制の検討を行っています。今後、2040年には高齢者数がピークを迎える一方で、現役世代の生産年齢人口の減少も見込まれており、自治体の規模によって高齢化や人口減少のスピードに大きな差が生じることも課題となっています。
 このような事態に対応するため、国は「時間軸」と「地域軸」の両視点から、全国を「大都市部」「一般市等」「中山間・人口減少地域」の3つに類型化する方針を示しました。高齢者の人口が急増する大都市部では、ICTやAI等の活用によるサービス基盤整備が重要視される一方、需要が減少する中山間・人口減少地域では、サービス提供の維持・確保を前提とした柔軟な対応が求められています。また、人口構造の変化に伴い、各地域が3つの類型を行き来する可能性もあるため、サービス需要の変化を注視する必要があるとしています。

 


②特定地域における柔軟な枠組みの導入

 高齢者人口やサービス需要が減少する中山間・人口減少地域では、現行の指定サービスを前提とした仕組みだけでは適切なサービス提供や基盤の維持・確保が難しくなることが懸念されています。そのため、住民の理解のもとで人員配置基準などを緩和できる新たな柔軟化のための特例的な枠組み(特定地域サービスなど)を設ける方向性が示されました。
 この枠組みを必要な地域へ限定的に適用するため、介護保険法の中に特定地域の定義規定を新たに設置し、人口減少などの基準に該当する地域を都道府県が定めることとしています。同一市町村内であってもエリアによって人口減少の進展は異なるため、市町村内の一部エリア(旧市町村単位、行政区単位、日常生活圏域単位)を特定することも可能とされました。実際の指定に際しては、介護保険事業計画の策定プロセスにおいて、地域の実情を最もよく知る市町村の意向を丁寧に確認したうえで、都道府県が最終的な対象地域を決定するという仕組みが想定されています。

 

○社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)による改正後の介護保険法(平成9年法律第123号)(抄)
(特例居宅介護サービス費の支給)

第四十二条 市町村は、次に掲げる場合には、居宅要介護被保険者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、特例居宅介護サービス費を支給する。

一・二 (略)

三 居宅要介護被保険者が、指定居宅サービス及び基準該当居宅サービス以外の居宅サービス又はこれに相当するサービスであって、特定地域(人口の減少その他の厚生労働省令で定める基準に該当する地域として都道府県が定めるものをいう。以下同じ。)に所在し、かつ、指定居宅サービスの事業に係る基準のうち都道府県の条例で定めるものを満たすと認められる事業を行う事業所により行われるもの(以下この条において「特定地域居宅サービス」という。)を受けた場合において、必要があると認めるとき。

四・五 (略)

2~8 (略)

※令和9年4月1日施行

 


③「75歳以上人口」に着目した客観的な指標・基準の設定案

 特定地域を客観的に指定するための基準づくりにおいては、現に介護サービスの確保が著しく困難な地域として制度化されている「特別地域加算」や「離島等相当サービス」の対象地域をベースとし、これらをすべて網羅することが前提となっています。
 その上で、特別地域加算・離島等相当サービスの対象地域と同様の現状にある地域も捉えられるよう、介護サービス利用の中心層であり地域の需要に大きな影響を与える「75歳以上人口」に着目した客観的な基準設定が提案されました。具体的な指標としては、介護サービス提供の困難さに着目した「75歳以上人口密度」、地域規模・介護サービスの需要に着目した「75歳以上人口」、介護サービスの需要の減少に着目した「75歳以上人口変化率」を組み合わせる考え方が示されています。
 指標・基準のイメージとして、「75歳以上人口密度が5人/㎢未満」、または「75歳以上人口が1,000人未満かつ減少」とする考え方が提示されており、特別地域加算の対象地域と同様の現状にあるほかの地域を、実態に即して抽出する方法が模索されています。

 


4.まとめ

 3つ目の議題である特定地域については、地域ごとのサービスの偏在対策を講じることや、令和7年度の国勢調査の速報値を利用し、最新のデータで人口減少の推移などを把握した上で対策を講じるべきであることも指摘されました。
 今後の介護保険部会の開催予定は、 厚生労働省のホームページ をご確認ください。