社会福祉法等の一部を改正する法律案

2026/04/22

 第221回国会(令和8年特別会)に、「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が提出されています。
 本記事では、令和7年12月の社会保障審議会福祉部会報告書を参考に、令和9年4月からの施行(一部を除く)を目指して進められている社会福祉法等の改正案について整理します。
 なお、当該改正法案は、社会保障審議会の福祉部会における議論及び報告書を基に準備され、提出に至っています。本サイト「 第32回社会保障審議会福祉部会 」の記事で報告書についても取り上げていますので、適宜ご参照ください。


改正の方向性

 この改正は、2040年を見据えた人口減少や単身世帯の増加に対応し、「誰もが地域で支え合える社会(地域共生社会)」を深化させることを目的として、福祉・介護の提供体制を抜本的に強化するものです。

 

1. 地域生活課題の解決に向けた「包括的支援体制」の拡充

 市町村が、住民の多様な困りごとに対応するための体制が法的に強化・柔軟化されます。

 

防災・消費者保護との連携

 国や自治体が包括的支援体制を整備する際、新たに「防災」や「消費者の利益擁護」に関する施策との連携に配慮することが義務付けられます。

 

「支援会議」の組織化

 地域住民への具体的な支援内容を検討するため、支援関係機関などで構成される「支援会議」を市町村が組織できるようになります。

 

小規模市町村への特例措置

 人口減少により体制確保が困難な小規模市町村に対し、相談・連携・地域づくりを一体的に行う「小規模市町村地域支援連携協働体制整備事業」が創設され、国や都道府県から交付金が交付されます。

 

「地域福祉推進協力団体」の委嘱

 地域住民の理解を深め、支援機関に情報提供を行う民間団体を、市町村長が「地域福祉推進協力団体」として委嘱できる仕組みが整います。


2. 「身寄り」がない方や権利擁護が必要な方への支援

 判断能力が不十分な方や、頼れる家族がいない方の生活と権利を守る仕組みが強化されます。

 

福祉サービス利用援助事業(第二種社会福祉事業)の拡充

 対象者が「近隣に家族がいない生計困難者」等に広げられ、生前の保健医療サービスの利用援助だけでなく、死後の葬祭手続などの支援も事業内容に追加されます。

 

「地域権利擁護相談支援センター」の設置

 成年後見制度等の適切な利用を支援する中核機関として、市町村がセンターを設置できるようになります。

 

居住支援の強化

 生活困窮者自立支援法が改正され、家族がいないことで生活に支障がある生活困窮者等も居住支援の対象に追加されます。


3. 有料老人ホームの新登録制度と「登録施設介護支援」

 一定の要件を満たす有料老人ホームを対象とした新たな登録制度が創設され、入居者へのケアマネジメント機能が強化されます。

 

「登録有料老人ホーム」制度

 介護が必要な状態にある者を入居させる有料老人ホームについて、都道府県知事の登録制度(5年更新)が導入されます。

 

「登録施設介護支援」の創設

 登録有料老人ホームの入居者が、適切な介護サービスを利用できるよう、ケアプラン作成などを行う「登録施設介護支援(予防支援含む)」が介護保険給付の対象として新設されます。


4. 介護・福祉人材の確保と働き方の見直し

 深刻な人手不足に対応するため、資格制度や研修の仕組みが大きく変わります。

 

ケアマネジャー(介護支援専門員)の更新制廃止

 介護支援専門員証の有効期間が廃止され、更新のための研修受講義務もなくなります。ただし、資質向上のための継続的な研修受講は義務付けられ、受講しない場合は業務禁止命令の対象となる場合があります。

 

「准介護福祉士」の廃止

 介護福祉士の養成過程における「准介護福祉士」の資格が廃止されます。

 

養成施設卒業者の国家試験義務化と経過措置

 介護福祉士養成施設の卒業者が、試験に合格しなくても5年間継続勤務した場合に引き続き介護福祉士の資格を有するものとする経過措置の対象が「令和8年度までの卒業者」に限定されます。一方、令和9年度以降令和13年度までの卒業者には、介護福祉士の資格を5年間有するものとする特例が設けられます。

 

都道府県による「人材確保協議会」

 社会福祉事業に従事する人材を確保するため、ハローワークや教育機関などで構成される協議会を都道府県が置くよう努めるものとされます。


5. 災害時や過疎地における提供体制の維持

非常時や人口減少地域でも、福祉サービスを継続するための措置が講じられます。

 

「災害時福祉業務従事者」の登録制度

災害時に派遣され福祉支援を行う人材(介護福祉士、社会福祉士等)を厚生労働大臣が登録する制度が創設されます。

 

「特定地域」での基準緩和

人口減少地域(特定地域)において、自治体が条例で定めることで、人員配置基準等を緩和した「特定地域居宅サービス」などの柔軟なサービス提供が可能になります。

 

市町村による直営事業の特例

特定地域において、民間の提供主体が不足している場合、市町村が自ら地域支援事業として訪問介護等のサービスを実施できるようになります。


6. 法人運営と資産の有効活用

社会福祉連携推進法人の機能強化

 社会福祉法人が連携する「社会福祉連携推進法人」の業務として、社員法人(社会福祉法人)に対する金銭以外の資産(土地・建物等)の貸付け支援が追加されます。

 

解散時の残余財産

 社会福祉法人が解散する際の残余財産の帰属先に、地方公共団体が明確に追加されます。


施行時期について

 防災連携に関する責務や、介護福祉士養成の経過措置見直しなどは、公布日から施行されます。ケアマネジャーの更新制廃止などについては、公布後1年6月以内に施行されます。
 本改正の全面施行(新登録制度や小規模市町村向け事業など)は、令和9年4月1日に施行されます。

 

市民生活への影響

 この改正により、一人暮らしの高齢者が入院手続や死後事務を公的な仕組みで準備できるようになるほか、どの自治体に住んでいても、分野を問わず包括的な福祉相談を受けられる体制が整います 。
 また、災害時に、福祉支援がより確実に避難所に届くようになることが期待されます 。