誌上ケース検討会 第107回 夫と別居後、ひとり暮らしを続ける高齢女性への支援を考える (2009年5月号掲載)
2026/06/23
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
スーパーバイザー
野中 猛
(プロフィールは下記)
事例提出者
Aさん(居宅介護支援事業所・社会福祉士)
クライアントの状況
Bさん・女性・87歳
提出理由
クライアントは87歳の女性。82歳のとき、夫と同居していた家を飛び出し、自分で建てたアパートの一室でひとり暮らしをしている。日常生活を娘たちに支援してもらっているが、一方的に彼女たちを責めることがあり、娘たちは本人を怒らせないようにと腫れ物に触るように接している。
ケアマネジャーとしては、高齢となった本人が本当に信頼できる人を見つけられないまま残りの人生を過ごしていいのかが、非常に気になっている。本人と娘たちが真剣に向き合うために、ケアマネジャーとしてどんな支援をしていけばいいのかヒントをいただければと思い、提出した。
事例の概要
82歳のときに夫に首を絞められて家を飛び出し、その後は娘や息子宅を転々とする。娘たちが夫とグルになって自分の財産を狙っているとの被害妄想があり、些細なことで娘たちと口論になり、本人のほうから世話になっている家を飛び出していくので、一カ所に落ち着いて生活できない状況にあった。85歳のときに自分でアパートを建て、その一室を自宅として暮らしはじめ、精神的にも一時安定する。しかし、その後も住み込みで介護していた三女を泥棒扱いして三女が出て行ったことから、またイライラするようになった。現在は、近くに住んでいる長男の嫁と次女が交代で介護しているが、本人の言動や猜疑心の強い発言により強いストレスを感じている。
生活歴
地元にて出生。尋常小学校卒業。7歳のときに両親が病死、弟は戦死。小学校卒業後は女中をしていた。18歳のときに紡績工場に勤務。23歳で結婚。24歳で夫と豆腐店を開業。一男三女に恵まれる。60歳まで働き、豆腐店を閉める。その後、清掃員として63歳まで銀行に勤務する。
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プロフィール
野中 猛(のなか たけし)
1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。
