誌上ケース検討会 第105回 40年間精神科病院に入院している男性の退院支援(在宅復帰)を考える (2009年3月号掲載)

2026/05/26

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


スーパーバイザー

野中 猛
(プロフィールは下記)

 

事例提出者

Sさん(PSW・精神科病院)

 

クライアントの状況

Aさん・男性・73歳

 

事例の概要

・診断名:統合失調症
・年金:障害基礎年金2級
・家族構成
 3人きょうだいの末っ子。長男は5年前に亡くなっている。姉(長女)は76歳。実家の近くで家庭をもっている。5年前まで実家で母親がひとり暮らしをしていた(特養ホームに入所後、1年前に亡くなっている)。

・キーパーソン:姉
・生活歴・病歴
 小・中学校時代、成績は中ぐらいだった。工業高校に進学。高校卒業後、大学進学を目指して上京。東京で予備校に通うが、「外から誰かが入ってきて自分を呼んでいる、廊下から誰かが入ってくる」等の妄想発言が聞かれ、東京都内の神経科を受診。1カ月ほど投薬を受けたが、その後も妄想発言がたびたび聞かれたため、地元に戻り、病院を受診した。その後半年ほど入院した後退院するが、難関大学の受験に失敗し、そこから症状はあまり思わしくなくなった。
 その後(20歳くらいから)製造業に勤務するが、「おまえは天皇の子だ」という幻聴や妄想があり、仕事は長く続かなかった。25歳から48歳までそのような症状が続き、当院に6回ほど入退院する。
 50歳頃、家族に対する粗暴行為と暴言が顕著となり、当院に医療保護入院をする。以後、外泊を繰り返すが、自宅では薬を飲まなくなるため、母親に対する暴言、暴力が顕著になり、そのつど、入院を繰り返す。65歳のとき、「家に帰れ」という幻聴が聞こえ、自宅まで電車とバスを乗り継いで帰ってしまう。強制的に病院に連れ戻され、以来、入院生活が続いている。


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プロフィール

野中 猛(のなか たけし)

1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。