誌上ケース検討会 第96回 アパートでのひとり暮らしを希望する50代の統合失調症の女性への支援を考える (2008年6月号掲載)

2026/01/20

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


スーパーバイザー

野中 猛
(プロフィールは下記)

 

事例提出者

Cさん(作業療法士)

 

事例概要

クライアント

Sさん(56歳・女性)

 

・疾患名:統合失調症

・生活歴:県内で生まれる。きょうだいは2歳下の弟が一人いる。小・中・高と成績は中程度。他県の大学に進学し、卒業後は同県内の百貨店に勤める。就職後1年ほど経った頃から対人関係がうまくいかなくなり、激しい頭痛や不安感を訴えるようになる。県外でのひとり暮らしは無理と判断し、就職3年目に両親の元に帰る。
 頭痛のため一般病院にかかるが、紹介されて精神病院に入院。1年ほど入院した後、退院。両親との3人暮らしに戻る。アルバイトを始めるが、いずれも長く続かず、職場を転々とする。
 娘の状態を心配した両親(特に母親)は、精神保健福祉センターに相談をもちかけ、紹介されたデイケアセンターへ父親の送迎により通所するようになる。
 デイケアでは友人もでき、精神的にも安定した生活を送ることができるようになった。そうした暮らしが15年あまり続くが、父親の死去によりデイケアに通うことができなくなる。以後、母親と二人きりで自宅にとじこもりがちな生活になり、再び精神的に不安定な状態となる。以後10年の間に10回ほど入退院を繰り返す(その間、2年ほどグループホームで暮らしていたことがあるが、ホームの閉鎖により再び自宅での生活に戻っている)。
 2年前に母親が死去。自宅でひとり暮らしとなるが、夜中に大声を出すなど不安定な状態となり、3カ月前に入院(任意入院)。入院後は落ち着きを取り戻しており、本人はアパートでのひとり暮らしを望んでいる。本人の状態を勘案し、その希望をかなえるべくACTに紹介された。
・ACTチームの構成:医師1名、精神保健福祉士3名、社会福祉士1名、看護師1名、作業療法士2名の8名体制。現在のクライアントは約25名。

 ※ACT(アクト)について

 Assertive Community Treatmentの略。入院治療に替わるものとして、多職種によるチームが病院で提供されるすべての機能を地域に移したもので、そのプログラムは24時間アクセスが可能で、スタッフ一人当たりの利用者は10人以下に絞り込み、医学的な観察や薬物の提供など、住居や料理や買い物または経済的な援助も含めて、利用者が住んでいる環境に訪問という形態で直接的なサービスの提供を考え、地域生活の維持を可能にするためのプログラムである。(『精神保健福祉用語辞典』(中央法規)より)


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プロフィール

野中 猛(のなか たけし)

1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。