誌上ケース検討会 第95回 死別後、キーパーソンが「悔しい」とつぶやいたターミナルケースへの支援を振り返る (2008年5月号掲載)

2026/01/06

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


スーパーバイザー

高橋 学
(プロフィールは下記)

 

事例提出者

Bさん(総合病院・MSW)

 

提出理由

 本ケースは、Aさんの最後の時をどうサポートするかを家族と一緒に悩み、在宅生活での支援方法、入院生活での支援方法を考えたケースです。家族がいつもバラバラで、どうしたらいいか悩んでいました。最初に登場した家族は、長女、次女、妻の3人です。しかし、ある日、もう1人の家族からMSWに電話がありました。今までまったく介入のなかった、脳性麻痺を患い独居生活をしている長男でした。「後悔したくない、お父さんのためにできることはしたい」。声を出すのも大変ななか、自分の気持ちを伝えてくる長男を前に、何から取り組んだらよいか迷っていました。そして、時期を逃してしまったのです。
 長男の思いをどう実現できるか考え、計画を立てている最中、Aさんは命の終わりを迎えました。看取りの後、長男は複雑な表情で「悔しいよ」とおっしゃいました。「時期を逃した」との思いが私の中に残っています。皆が後悔をしないために何ができたのかを学び、次の援助につなげていきたいと考え、本事例を提出いたします。

 

事例概要

クライアント
A氏(77歳・男性)
病名:上咽頭がん、頭蓋底浸潤、脳転移

 

家族状況

 妻と2人暮らし。MSW介入当初は、家族として全面的に動いていたのは長女と次女。Aさん宅そばに居住。長女は全面的に介護を担当。全力投球タイプ。自分の家庭を顧みず、必死にAさんをサポート。次女は日中仕事があり、Aさんの生活については、一歩引き気味のサポートに伺えた。客観的に状況を見て判断できる方。
 かかわりの当初は、長女と次女は長男の存在をこう表現していた。「長男はいるけれど、障害があって。気にしないでください」。長男はお見舞いに来ない状況だった。
 47歳の長男は、脳性麻痺があり、生活のすべてに介護が必要な身体状況。長く施設で生活していたが、30歳頃よりボランティアに支えられ、独居生活をしている。援助の後半に突然長男から電話があり、かかわりを開始した。


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プロフィール

高橋 学(たかはし まなぶ)

1959年生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学。東邦大学医学部付属大森病院、北星学園大学を経て昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授。専門は、医療福祉研究、精神保健福祉学、スーパービジョン研究、臨床倫理など。