誌上ケース検討会 第92回 利用者に食事をご馳走になったヘルパーへの対応を考える (2008年1月号掲載)

2025/11/25

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


スーパーバイザー

高橋 学
(プロフィールは下記)

 

事例提出者

Tさん(居宅介護支援事業所・社会福祉士)

 

提出理由

 本ケースは生活保護を受給しながら週3回の訪問介護を利用している精神障害を有する単身女性へのかかわり方について、ケアマネジャーとしての考え方や発言が、この利用者を担当する登録ヘルパーに誤解を与え、一時的に登録ヘルパーとの間に距離感ができてしまった事例である。今後に生かすため、専門職のかかわり方として具体的にどのような対応をすべきであったかを振り返りたく、提出致しました。

 

事業所の特性

 居宅介護支援事業・訪問介護事業を併設している。スタッフ数は、常勤でケアマネジャーが5名、訪問介護はサービス提供責任者が3名、登録ヘルパー約60名、事務職1名。事例提出者は、ケアマネジャーと訪問介護事業所の管理者を兼任している。

 

利用者の背景

 Bさんは64歳の女性。生活保護を受給しながら民間アパートでの単身生活。結婚歴はあるが離婚しており、現在元夫や2人の子どもたちとの交流はない。
 精神疾患があり、診断は「うつ傾向を有する人格障害」で、時にヒステリー症状が出るタイプとのこと(精神科入院歴あり)。その他、骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折あり。「腰椎圧迫骨折を起こすほどの骨粗鬆症」による特定疾病で「要介護2」の認定を受けている。
 ナロンエース(市販の解熱鎮痛剤)への依存が強く、1週間で10箱(1箱16錠入り)服用したこともある。
 調子がよいときは自立していて、一見すると何の支援も必要ないように見えるが、調子が悪いときは要介護5のような状態である。精神状態によって生活能力がかなり左右されるので、ヘルパー派遣での活動内容も流動的である。


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プロフィール

高橋 学(たかはし まなぶ)

1959年生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程満期退学。東邦大学医学部付属大森病院、北星学園大学を経て昭和女子大学大学院福祉社会研究専攻教授。専門は、医療福祉研究、精神保健福祉学、スーパービジョン研究、臨床倫理など。