誌上ケース検討会 第90回 精神障害をもつ息子と要介護3の母親の在宅生活を支援する (2007年11月号掲載)
2025/10/28
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
スーパーバイザー
野中 猛
(プロフィールは下記)
事例提出者
Wさん(居宅介護支援事業所・看護師)
クライアント
Bさん(79歳・女性)
傷病名
アルツハイマー型認知症
介護度・自立度
要介護3、A―2、Ⅱb
家族構成
次男:37歳(統合失調症・精神障害者保健福祉手帳1級)、Bさんと同居
長男:51歳。他県在住。大企業の営業関係の部署に所属し、日本中を飛び回っている
長男の妻:キーパーソン(すべての窓口)
長女:同じ市内に住むが協力は得られていない
現在の支援にかかわる関係機関
Bさん:訪問介護・訪問看護・通所介護・介護老人保健施設・病院(精神科)・市障害福祉課
次男:作業所・訪問介護・訪問看護・病院(精神科)・市障害福祉課
生活歴・支援経歴
・会社員の父と専業主婦の母の間に4人きょうだいの長女として県内他市で生まれる。
・高校卒業後24歳で結婚するまでは家事手伝い。結婚後は夫の事業(自動車修理工場)を手伝う。28歳で長男を出産。その半年後に夫が急死。このとき、うつ状態になるが治療せず回復した。
・生活のために独身寮の寮母の仕事をしながら、栄養士の資格を取得し、企業で社員食堂の栄養管理の仕事に就く。
・34歳で再婚。仕事を辞め、次男、長女を出産。
・小さい子どもを抱えながら、姑の介護を10年以上続けた。
・姑が亡くなったのをきっかけに45歳頃うつ病を発症。3カ月の治療で回復した。
・77歳のときに、夫ががんで死亡。うつ状態となり、近医で治療開始するが、思うように改善せず、昨年の6月に現在の主治医に変わる。
・うつ状態は改善傾向であったが、今年2月頃、手が動かない、足のふらつきが強くなる、寝返りがうてないなどの状態が続き、入院となった。入院の翌日には、立位保持や歩行が自力で可能となり、「私は入院などする必要がない」などの不満の声が聞かれた。
・この時点で、同居している次男から「母親の介護量が増えると大変」「母親の言葉の暴力がある」等の理由から受け入れ困難との情報がある。在宅生活を目標に、かかわりを始める。
・訪問介護等の支援体制を整え、次男も納得の上で2月に退院。さまざまなサービスを利用しながら、次男と在宅生活を送っている。
ここから先は、誌面の PDFファイル にてご覧ください。
プロフィール
野中 猛(のなか たけし)
1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。
