独立・開業で広がる!ソーシャルワーカーの新しい働き方ガイド Vol.7【独立・開業を選んだ人③】坂根 匡宣さん(一般社団法人ダイアロゴス)の場合

2025/10/17

福祉職(社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー等)必見!

 この連載は、介護や福祉の仕事に熱い想いをもち、これから資格取得を目指している方、あるいはすでに資格をもっていて、さらなるスキルアップを考えている方に向けてお届けします。
今回は、障がい者支援の現場からソーシャルワーカーとしての独立・開業の道を選んだ坂根さんへのQ&Aを通じて、独立・開業に必要な心構えや視点をお伝えします。

 

聞き手:横田一也(株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ代表)


坂根さんのプロフィール

株式会社ソーシャルプランニング流 創業 現取締役/一般社団法人ダイアロゴス代表理事/社会福祉士/公認心理師。同法人で障害者の作業所(就労継続支援A型・B型)などを多数運営するとともに、フリーのソーシャルワーカーとして大阪地方検察庁再犯防止対策室社会福祉アドバイザーや社会福祉法人の第三者委員などを務める。

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Q1 「独立・開業」の原動力となったものは?

 2000年、介護保険制度が始まった20代の頃、父の病気をきっかけに介護に携わり、社会福祉の専門学校で学び始めました。当時は「福祉=高齢者介護」という風潮が強い時代でしたが、社会福祉士の勉強を進めるなかで障がい福祉分野のソーシャルワークに関心をもつようになり、障がい者支援の仕事につきました。
 5年間の実務経験を積むなかで、より自由なソーシャルワークを実践したいという思いと、元々抱いていた起業への意欲が日に日に高まり、独立・開業を志す大きな原動力となりました。

 

Q2 「独立・開業」までのプロセスは?

 独立準備期間は、成年後見人としての活動と養成校での講師業を並行しながら、法人設立を進めました。そして、当時まだ数が少なかった就労継続支援A型事業所を開設。事業所での就労支援の取り組みとして、ホームページ作成やデザインといった実務的なパソコン作業を主軸に据え、利用者が具体的なスキルを身につけられる環境を整備しました。
 特に若い利用者にとっては、実践的な就労経験を積みながら自信を育み、自立へとつなげるための重要な支援になったと考えています。

 

Q3 独立・開業して良かったことは?

 独立・開業して最も良かったと感じるのは、自らの理想や価値観に沿った支援を、自分の手で形にできたことです。組織の枠にとらわれず、多様な働き方を選択でき、時間や支援方法を柔軟に組み立てられるため、利用者や地域のニーズに即した支援が可能になりました。
 また、これまで社会に存在しなかった仕組みやサービスを新たに生み出すことで、社会が抱える課題解決の選択肢を少しでも広げられたことは、大きな喜びであり、独立の醍醐味だと感じています。

 

Q4 独立・開業して大変だったことは?

 独立・開業後に最も大変だと感じたのは、組織を運営するなかで、経営面と理念の両立を図ることの難しさです。安定的な収益確保や人材管理など経営者としての責任を果たしつつ、理念に基づいた支援の質を維持・向上させるためには、日々の判断や優先順位付けに細心の注意が求められます。
 理想と現実の間で葛藤する場面も多く、そのバランスを保つことは、想像以上にエネルギーを要する課題でした。

 

Q5 どんな人におすすめしたい?

 独立・開業は、自らの理念や価値観に自信をもち、それを実際の支援や事業として「絶対に形にしたい」という強い意志をもつ方におすすめしたいです。もちろん困難やリスクも伴いますが、自分の考えを貫きながらも柔軟に対応し、社会に新しい価値を提供したいという情熱があれば、独立は大きな成長と達成感をもたらしてくれるはずです。
 「理念と実践を一致させたい」と強く願う人にとって、独立は最良の選択肢となり得ると考えます。


Q6 事業運営のノウハウ

 業務運営においては、ホームページやSNSを積極的に活用しています。ただし、それは単なる宣伝のためではなく、地域の社会資源と連携するための「きっかけづくり」や「プラットフォーム構築」を重視しているからです。これにより、地域内外での情報発信やネットワーク形成が進み、利用者さんや関係者との接点を着実に増やすことができています。

 また、こうした活動は、私たちの就労支援の分野とも密接に結びついています。たとえば、利用者がスキルを活かして制作したホームページが、外部からのホームページ作成の仕事の依頼につながるなど、事業継続の観点からも重要な取り組みとなっています。この「支援が事業になり、事業が支援になる」という循環は、私たちの活動が単なる支援事業の枠を超え、社会的課題を解決するソーシャルビジネスとしての側面をもっていることを意味します。これが今後の成長と持続可能な発展に向けた基盤になっていると確信しています。