誌上ケース検討会 第85回 視覚障害をもつ夫と認知症の妻の生活支援を考える (2007年6月号掲載)
2025/08/19

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Wさん(居宅介護支援事業所・社会福祉士)
提出理由
あまり話をしてくれない、本音がわからない利用者Gさん。視覚障害はあるものの司令塔的存在である夫に気を使っている様子も見られ、それでも担当年数を重ねていくうちに、少しは話してくれるようにはなったが、やはりうわべだけのように感じられる。さらに、夫の入院に伴い、突然あらわれた親族(義妹夫婦)が、さまざまな行動を起こしてくる。その行動が果たしてGさんの思いと合っているのだろうか。今まで「Gさんご夫婦のために」と3年近く担当をしてきたが、ケアマネジャーとして本人の本音をどのように汲みとれるのか、どこまでやればよいのか、すっかり方向を見失ってしまった。
このようなケースに今後どのように対応していくべきか、ケアマネジャーとしてどれをどこまでやっていけばよいのか……。もう一度自身で考えてみたいと思い、事例提出した。
クライアント
Gさん(83歳・女性)
紹介経路
H16年5月、前任のケアマネジャーが退職するにあたり、Gさんの夫の担当となる。しだいに妻のGさん自身に短期記憶低下などの認知症状が出現しはじめ、17年3月に介護保険申請を行う。要介護1となり、正式に契約を交わす。
クライアントのプロフィール
病状:診断名は不明。高血圧、骨粗鬆症、認知症の治療薬を服薬。胃腸が弱く、下痢をよくおこす。
現在の状態:歩行はふらつきがあるが、杖等の使用はなし。入浴は促しがないと入らない。IADLは、自発性低くヘルパーのサポートが必要。体力がなく、いつも横になって過ごしている。
家族構成:夫と2人暮らし。子どもはいない。
生活歴:裕福な家庭に育った様子。今の夫とは再婚。経緯の詳細は不明だが、前夫は会社の経営者だった模様。Gさんはその話題には触れたくない様子。今の夫とは、再婚同士。
経済状況・住宅状況:現在住んでいる土地は、本人名義(建物は夫名義)。その他、預金・株券などかなりの額の資産がある様子。本人の母親が亡くなったとき、きょうだい間(遠方に住み、ふだんの付き合いはまったくない弟が一人いる)での遺産分けは済んでいるとのこと。住まいは閑静な住宅街。二階建ての一戸建て。庭も広い。
ここから先は、誌面の PDFファイル にてご覧ください。
プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。