誌上ケース検討会 第81回 知的障害と身体障害をもつ20代男性の就労支援を考える (2007年2月号掲載)

2025/06/24

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


スーパーバイザー

野中 猛
(プロフィールは下記)

 

事例提出者

Mさん(通所授産施設・作業療法士)

 

提出理由

1.言葉による表現が少なく、心の細やかな理解が難しい。
2.障害がどのように生活や人間関係、就労に影響しているのか十分に理解できていない。
3.ご本人の希望に対して自分たちは何ができるのか、知恵を分けていただきたい。

 

利用者のプロフィール

クライアント:Aさん・25歳・男性
診断名:知的障害及び適応障害
通所授産施設利用開始年月:H18年4月
家族構成:父、母
障害者手帳の有無:あり(療育手帳・等級B2)
経済状況:障害基礎年金2級(約6万円/月)
公共職業安定所障害者求職登録:あり
職業評価:受けたことがある
免許:普通自動車免許

 

利用開始の状況

 高校卒業後仕事に就くも長続きしないため、公共職業安定所から障害者就業・生活支援センターDを紹介される。同センターとの面接のなかで知的障害があると判断され、はじめて障害と向き合うこととなった。同センターのスタッフと2人で当施設の見学のために来所。はじめは「なぜ俺に福祉施設なんかを勧めるのか」と不満と憤りの感情をもっての見学であったが、当施設が「明るいと思った」ことと、「就労のための準備になる」との説得に応じて利用を開始することとなった。

 

主訴と施設の利用目的

主訴:「早く仕事に就きたい」
施設利用を希望する理由:「仕事習慣をつける」「規則正しい生活リズムを身につける」「自信をつけたい」「人間関係を上手くできるようになる」


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プロフィール

野中 猛(のなか たけし)

1951年生まれ。弘前大学医学部卒業。藤代健生病院、代々木病院、みさと協立病院、埼玉県立精神保健総合センターを経て、日本福祉大学社会福祉学部教授。専攻は臨床精神医学、精神障害リハビリテーション、地域精神保健、精神分析学など。主な著書に『心の病 回復への道』(岩波新書)、『図説ケアマネジメント』『ケア会議の技術』『多職種連携の技術(アート)』(以上、中央法規出版)、『ソーシャルワーカーのための医学』(有斐閣)などがある。 2013年7月逝去。