対人支援に役立つ 会話例で納得!コーチングのススメ 第5回 会議場面で役立つコーチングの手法 ~傾聴~
2025/05/29

ケアマネジャーには、さまざまな場面で円滑なコミュニケーションをとることが求められます。一方、実際の場面では「困難さ」を抱えるケアマネジャーも少なくありません。本連載では、人間関係構築や多職種連携に役立つコーチングの手法を紹介します。
この記事の監修者
眞辺一範(株式会社ふくなかまジャパン代表取締役社長)
1998年、日本初のプロコーチを養成する「コーチ・トレーニング・プログラム」を履修し、認定コーチを取得。現在は国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ、(一財)生涯学習開発財団認定マスターコーチ、コーチ・エィ アカデミアクラスコーチ、日本コーチ協会京都チャプター事務局長としてコーチングの活動や実践に取り組んでいる。
たかが会議、されど会議
ケアマネジャーにとってミーティングや会議といえば、サービス担当者会議や地域ケア会議だけではなく、関係機関や利用者本人、介護者家族等との電話、もしくはちょっとした立ち話による打ち合わせや情報交換等があります。
法人内や事業所内で開催されているルーティンの会議も少なからずあり、会議に要する時間だけで仕事全体の約2割を占めているといわれています。
ケアマネジャーとは切っても切れない関係にある会議ですが、コーチングスキルを適切に活用することで、会議が新たな可能性を生み出す創造的な場になり、参加者全員が有益と感じられるようになります。今回は会議で活用できるコーチングスキル「傾聴」について学んでいきましょう。
NGな会議の特徴
まずは、あまり効果的ではない会議の特徴を押さえていきます。たとえば、「一方的で参加者の発言の機会がない」「何時間議論しても結論が出ない」「率直な意見を述べたら個人攻撃される」といった会議では、参加する意義が感じられないのではないでしょうか。
私がこれまでに見聞きしたNGな会議の主な特徴を表にまとめました。これらのうち5個以上該当すればその会議は黄色信号、10個以上該当すれば赤信号で、会議の改革が急務です。
▼NGな会議の特徴
□本当に必要な会議なのか疑わしい |
□会議中に別の仕事をしている |
「傾聴」で合意形成をつくる
一方で、理想的な会議とは何でしょうか。NGの状態の逆を考えればよいのですが、とくに「コンセンサス」「アサインメント」「フィードバック」の3つが創造的な会議にするためのポイントです。
1つ目の「コンセンサス」とは、合意形成のことで、この時間に明確にしようと決めたことが、参加者全員の合意のうえで明確になっていることです。
参加者の意見はさまざまで、最初から同じ意見で一致しているとは限りません。それでは、最終的に参加者全員の合意を取るにはどうすればよいのでしょうか。
ここに「傾聴」のコーチングスキルを活かすことができます。まず参加者全員に発言する機会を保証します。「意見がない」という発言も立派な意見です。
そして、それぞれの参加者の発言にほかの参加者全員が耳を傾け、「Aさんはそのような意見なのですね」「Bさんの視点はそこにあるのですね」とあるがままの主張を受け入れ理解することが「傾聴」のスキルです。
「傾聴」で安心感のある環境をつくる(心理的安全性の高い状況をつくる)
傾聴のスキルの徹底で、話している途中で口を挟まれたり、批判や非難されたりすることなく、自分の考えや気持ちを自由に述べられる環境を創り出せます。
会議ではこのような「言いたいことを言い、それを聴いてもらえる」という安心感のある傾聴と主張の機会を全員で相互に繰り返すことで、自分の意見へのこだわりが減っていきます。そして、全体に合わせ自分の意見を譲ってもよい心理状態になるのです。これが全体の合意へと導きます。
しかし、実際には、参加者全員が一つの意見にまとまっているわけではありません。個人的な意見は依然としてもちつつも、最終的な決定に関しては全体の総意として譲っているという状態です。ですから、譲ってもらったことへの配慮や感謝が求められます。
「傾聴」スキルを活用し会議を円滑に進める
上に挙げたNGな会議の特徴に、心当たりのある方(事業所)は少なからずあるのではないでしょうか。会議やミーティングにおいて、「なんだかいつもうまくいかないな」と感じている場合は、「傾聴」のスキルを意識してみましょう。「傾聴」のコツは、参加者の意見を“あるがままに”受け入れ、理解することです。
次回は、同じく会議やミーティング場面で活かせる「要望」と「フィードバック」のスキルについて解説します。