道なき道をゆく! オルタナコンサルがめざす 強度行動障害の標準的支援 第23回 強度行動障害支援とコンサルテーションの現在地
2026/01/30
この記事を監修した人

竹矢 恒(たけや・わたる)
一般社団法人あんぷ 代表 社会福祉法人で長年、障害のある方(主に自閉スペクトラム症)の支援に従事。厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修」のプログラム作成にも携わる。2024年3月に一般社団法人あんぷを設立し、支援に困っている事業所へのコンサルテーションや、強度行動障害・虐待防止などの研修を主な活動領域とする。強度行動障害のある人々を取り巻く業界に、新たな価値や仕事を創出するべく、新しい道を切り拓いている。
新しい年になりました。みなさん、よい年を迎えられましたか?
私は年末から体調を崩してしまい、初めてオンライン診療を使ってみました。とても便利なのでおすすめです!
年が変わってもつらい日々を過ごしました。咳がなかなか止まらず、体力がガクンと落ちましたが、ようやく回復です。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、年明けの1回目は、国がどのようにコンサルを進めようとしているのかについてまとめてみたいと思います。
コンサルテーションの現在地
強度行動障害の支援現場を見ていると、ときどきデジャブを体感します。
この風景、どこかで見たことがある。
「装備は年季が入っている」
「レベルも相当に高い」
……でも、回復役はいない。
「ここまで来たんだから!」と言いながら、気合で前に進んでいく。
そう、独り旅の勇者です。
先日、ドラゴンクエストⅠのリメイク版をやりましたが、独り旅はつらかった……、まさにこれです。
福祉の現場には、今もこの“ドラクエⅠモード”が色濃く残っていませんか? しかも本人は自覚のないことが多い。「当たり前のことを、当たり前にやっているだけです」と言いながら、実は相当な無理を重ねている。
眠ったら終わり、痺れたら終わり……。まさに人生ハードモードです。ドラクエならいいですけれど、実際の支援となると、ねぇ?
国が示している強度行動障害支援の基本的な方向性
いろいろと私の考えを述べる前に、ここで一度、国の施策についての話を整理しておきたいと思います。
現在、国が進めている強度行動障害支援の方向性は、かなり明確に示されています。もちろん賛否があるのは当然ですが、明確に示されているのは間違いありません。ポイントは、「支援技術の高度化」ではなく、「支援構造の再設計」におかれている点だと思います。
例えば――
発達障害者支援センターによる機関コンサルテーションの明確化、発達障害者地域支援マネジャーの配置、広域的支援人材の育成と派遣、集中的支援加算の創設。
これらはいずれも、「現場が頑張れば何とかなる」という発想から、明確に距離を取った制度設計です。国はすでに、強度行動障害を「個々の支援者の力量の問題」ではなく、「地域と組織の支援体制の問題」として捉え直しています。
私は、この発想をとても大きな転換点だと考えています。
コンサルテーションは「特別対応」ではなく、「標準装備」
国の資料を丁寧に読んでいくと、くり返し登場する言葉があります。それが、「標準的な支援」です。
・行動の背景をアセスメントする
・本人の特性と環境との関係を整理する
・環境調整を通じて行動を予防する
・チームで支援を行う
私の連載の中でも、飽きるほど言ってきた言葉です。
これは、特別な理論でも、新しい魔法でもありません。問題なのは、それが「わかっている」と「できている」の間に、大きな溝があることです。忙しさ、人手不足、判断の孤立、属人化……。
現場には、標準的な支援を崩してしまう要因が山ほどあります。
だからこそ国は、外部の専門的な視点を、計画的に入れること――つまりコンサルテーション――を、制度の中に組み込んでいます。
これは「例外的な対応」ではなく、標準的な支援を実装する場合の前提条件として位置づけられている気がします。いわば「標準装備」です。
行動が荒れているのは、誰かが未熟だからではない
強度行動障害の状態が表面化すると、現場ではどうしても「対応が悪かったのでは」「支援が足りなかったのでは」という話になりがちです。
しかし、コンサルテーションで現場に入ると、たいていの場合、私は別の感覚をもちます。
問題なのは、「支援者の熱量が足りないこと」でも、「知識がないこと」でもありません。多くの現場で足りていないのは、客観的な視点と、支援のために整理された構造だと思います。
・誰が判断しているのか
・どこで詰まっているのか
・何が共有されていないのか
・環境をどう変えられるのか
これらが見えないまま、支援が続けられている。まるで見えない敵と戦っているような状態です。
言い換えるなら、地図も確認しないまま、ボスのいる城に迷い込んでしまった……。そんな状況に近い。
国がくり返し示している「アセスメント」や「環境調整」は、必殺技でも裏技でもありません。それは、支援者が立ち位置を確認し、進む方向を定めるための地図、そのものなのだと思います。
私が現場で行っているコンサルテーションの正体
私が日々行っているコンサルテーションも、「オルタナ、オルタナ」と言っていますが……、実は国の示している方向性と、かなり重なっています。
・行動の意味を一緒に言葉にする
・「なぜ」を支援者の共通言語にする
・支援を個人技からチーム戦に戻す
・現場で再現できる形に落とし込む
・管理職や法人の判断構造も含めて整える
外から答えを持ち込むというより、現場の中にある支援力を引き出す作業です。
制度の言葉で言えば、「コンサルテーション」、「スーパーバイズ」、「体制整備支援」。
私は少しだけ現場寄りの言葉でやっているにすぎません。大きな声では言いませんが、自分では「オルタナティブ」と主張しているだけなのです。
コンサルを呼ぶ=失敗、という誤解
それでも現場では、こんな声をよく耳にします。
「外部(コンサル)を入れるほどの状況ではない」
「もう少し自分たちで頑張りたい」
「コンサルを入れたら、できていないと思われそう」
この感覚、実はとてもよくわかります。
福祉の世界では長く、「一人で背負える人ほど優秀」という評価軸が存在してきました。加えて、この仕事は、単純な効率やスピードで測られるものではありません。10本のノルマに対して11本できたら褒められて、9本だったら怒られるとか、そういう仕事ではありません。
むしろ、時間がかかっても、どんなに回り道をしても、最終的に利用者の生活や幸せにつながることを大切にする。そうした支援者の目線や価値観が、現場を支えてきたのも事実でしょう。
だからこそ、
「まだ自分たちで何とかしたい」
「簡単に外部に頼るわけにはいかない」
という思いが生まれるのは、決して不自然なことではありません。
しかし――。
国の制度設計は、その前提を明確に問い直しているように思います。
強度行動障害支援において国が示しているのは、「できなくなってから外部を呼ぶ」のではなく、「破綻しないために外部の視点を入れる」という考え方です。
コンサルテーションは、HP(Hit Pointの略語。敵から攻撃を受けたときにどれだけ耐えられるのかを表したパラメーター)が少なくなってから慌てて使うアイテムではありません。むしろ、ボス戦の前に立ち寄るセーブポイントです。
一度、立ち止まり、
攻略本を読み、
状況を整理し、
装備を確認し、
役割を整えてから、次の場面に進む。
国が制度として位置づけているコンサルテーションは、そうした支援を持続させるための仕組みなのだと思います。
勇者の時代から、パーティの時代へ
国はすでに、「一人で背負う支援」から「地域で支える支援」へと、はっきりと舵を切っています。それは、支援者を甘やかすための転換ではありません。支援を続けていくために、現実を正面から見据えた判断です。
これからのプロフェッショナルに求められるのは、一人で全部をこなせることではありません。状況に応じて、仲間を呼び、役割を分け、チームを組めること。勇者が一人で戦い続ける時代は、もう終わりつつあります。
これから必要なのは、適切なタイミングで行動を共にするパーティを組み直せる支援者です。外部を頼るのは、弱さではありません。それは、支援を守り、仲間を守り、そして何より、利用者の暮らしを守るための選択です。
勇者の時代から、パーティの時代へ――。
この連載が、その一歩目になれることを想像しながら、今、パソコンに向かっています。
