道なき道をゆく! オルタナコンサルがめざす 強度行動障害の標準的支援 第22回 助っ人が入ると、現場は「強くなる」――外部コンサルが引き出す、標準的支援が機能するまでのプロセス
2025/12/26
この記事を監修した人

竹矢 恒(たけや・わたる)
一般社団法人あんぷ 代表 社会福祉法人で長年、障害のある方(主に自閉スペクトラム症)の支援に従事。厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修」のプログラム作成にも携わる。2024年3月に一般社団法人あんぷを設立し、支援に困っている事業所へのコンサルテーションや、強度行動障害・虐待防止などの研修を主な活動領域とする。強度行動障害のある人々を取り巻く業界に、新たな価値や仕事を創出するべく、新しい道を切り拓いている。
「コンサルを入れると、現場はどう変わるのでしょうか?」
コンサルテーション導入の際によく聞かれる質問です。
一律に語れるものではありませんが、現場のみなさんのモヤモヤの背景には、「人が足りない」「余裕がない」「何から手をつければいいかわからない」といった、切実な悩みがあると思います。
即効性のある解決策を期待されることもありますが、実際に現場で起きている変化は、もっと静かで、じんわりと効いてくる構造的な変化であることがほとんどです。いわば、温湿布のようなものです。
今回は、助っ人(外部コンサル)が入ることで、現場がどのように整い、どのように「強くなる」のかについて、一般的なコンサル導入で起きやすい成果と、私自身が大切にしている視点の両方から整理してみたいと思います。
一般的に、外部コンサルが入ると起きやすい変化とは?
外部コンサルを入れると、多くの現場でまず見られるのは、「何かが一気に解決する」という変化ではありません。むしろ多いのは、これまで曖昧なまま扱われてきたことが、少しずつ整理されていくという変化です。
現場ではこれまで、
・忙しい
・大変
・何となくうまくいっていない
といった言葉で状況が語られてきました。それ自体は間違いではありませんし、現場のリアルそのものではあります。しかし、その言葉だけでは、次の一手を考えることが難しいのも事実です。
そこに外部の視点が入ることで、
・何が起きているのか
・どの場面で困っているのか
・なぜそれがくり返されているのか
といった点が、少しずつ言葉に変わっていきます。
これは、解決策を押しつけられるというより、現場の中にすでにあった違和感が整理され、共有されていくプロセスに近いです。
また、内部だけでは言いにくかったことが、「個人の不満」ではなく、「組織の課題」として扱われやすくなるのも、よくある変化です。誰かの頑張りや我慢の問題として処理されてきたことが、「構造の問題」として見えるようになる。この変化は、想像以上に大きな意味をもっていると思います。
さらに、これまで決めないまま回してきたこと、例えば、
・誰が判断するのか
・どこまでが現場の裁量なのか
・何を基準に決めるのか
といった点が整理され、現場が迷いながら動く状態から、少しずつ抜け出していきます。
ただし、ここまでの話は、あくまで一般的なコンサル導入の成果です。
必ずそのような経過をたどるわけでもないですし、整理はされたけれど、「時間が経つと元に戻ってしまう」「研修や会議を重ねても、現場の実感が変わらない」――そんな声も、実際にはよく耳にします。
ここから先は、私自身のコンサルテーション談になります
私自身がコンサルとして現場に入るとき、さきほどお話しした変化をゴールにしているわけではありません。
目指しているのは、外部がいなくなったあとも、現場が自分たちで考え、回り続けられる状態です。
そのために私は、現場の課題を、「何ができていないか」ではなく、「どこが詰まっているのか」という視点でとらえるようにしています。そして、その詰まりを、「組織マネジメント」「支援マネジメント」「支援・技術」の3つの層に分けて整理しています。この3層については、 第15回 の連載でお話ししました。

組織マネジメントの層――役割が整理され、チームが機能する状態に
外部の助っ人がかかわることで、まず起きてくるのは、管理職や役職者の仕事が整理されていくことです。
多くの現場では、管理職や役職者が「何でも屋」になっていることも少なくありません。判断も、調整も、現場対応も、すべて引き受けることで、本来の役割が見えにくくなってしまっています。結果としてガバナンスが効かない組織が生まれています。
コンサルタントが組織マネジメントの層に介入することで、
誰が、どこまで判断し、
誰が、何を担うのか、
その線引きが少しずつ言語化されていきます。
役割と責任の範囲が整理されることで、管理職は「全部を見る人」ではなく、「現場が機能するよう整える人」へと立ち位置を変えていきます。
同時に、役職者もそれぞれの役割に応じて、本来担うべき仕事に集中できるようになります。その結果として生まれるのが、チームが機能する状態です。
誰に相談すればよいかがわかり、
判断が滞らず、業務や支援が特定の人に依存しなくなる。
こうした状態が整うことで、研修や支援の取り組みも、個人の努力ではなく、組織として守られ、活かされ続けるようになります。
支援マネジメントの層――標準的な支援が実装され、研修が効き始める
組織の土台が整ってくると、次に変わってくるのが、支援の実装方法です。支援マネジメントの層への介入で目指すのは、標準的な支援を、実際に現場で実装できる状態です。
ここでいう「標準的な支援」とは、画一的な対応や、マニュアルどおりの支援のことではありません。利用者一人ひとりの特性を踏まえたうえで、チームとして共有できる支援の考え方や手順が整っている状態を指しています。
支援手順書や記録、情報共有のあり方が整理されることで、「誰がかかわっても、一定の質の支援が提供できる」状態が見えてきます。この状態が整ってくると、事例検討や研修の意味合いが大きく変わります。学んだことが、その場限りの理解で終わらず、日々の支援や記録、ミーティングの中でくり返し使われるようになっていきます。
その結果、事例検討や研修は、実践を深め、次の支援につなげる場として機能し始めます。研修の回数を増やすよりも、研修が「効く」状態をつくる。それが、この層で生まれる大きな成果だと考えています。
支援・技術の層――アセスメントを起点に、支援が深まる
支援マネジメントの仕組みが回り始めると、現場では「利用者のアセスメントを中心に考える」視点が育っていきます。目の前の行動に対して、「どう対応するか」だけでなく、「なぜそうなっているのか」「何が影響しているのか」を考える時間が増えていきます。
その結果、支援は経験や感覚に頼るものではなく、アセスメントに基づいた、根拠のある支援として定着していきます。そして、目の前の成功や失敗に一喜一憂するのではなく、支援の背景やプロセスを振り返り、「支援がどう深まっているか」をチームで共有できるようになります。
こうした積み重ねによって、現場は外部の指示に頼らずとも、自分たちで支援を組み立て、見直していける状態へと近づいていきます。
おわりに
助っ人が入ったからといって、現場が必ず劇的に変わるわけではありません。ですが、
役割が整理され、
仕組みが回り、
支援が深まっていく。
その積み重ねによって、現場は少しずつ、チームとして機能し、自立的に動ける「強い現場」へと変わっていきます。
助っ人とは、現場を変える存在ではなく、現場が自分たちの力を取り戻すための伴走者――
私は、そんな距離感でこのお仕事に向き合っています。
もっと詳しく知りたい方はこちら
『本人の「困った!」、支援者の「どうしよう…」を軽くする 強度行動障害のある人を支えるヒントとアイデア』もぜひ参考にしていただければ幸いです。
