最近よく聞く「サ高住」って何? 最終回 サ高住の課題とこれから

2026/10/30

よく耳にするけど、実はよく知らない…そんなサ高住について解説します。

これまで、サ高住の入居要件や一日の流れ、そこで働く人々、実際のサ高住などについてご紹介してきました。最終回となる今回は、一般社団法人高齢者住宅協会の事務局メンバーである小林事務局長、楠木さん、加藤さんに、サ高住の課題などについて聞いてみました。


藤原:事務局の方から見て、「ここは良いサ高住だな」と思うのは、どういうところですか?

 

楠木:自らの「売り・強み」をはっきりと伝えられると、良い印象を受けますね。さらに言えば、検討者に対して他のホームとの差別化、メリット・デメリットなどもきちんと示されたうえで選んでいただけるように受け答えをされていると、実際に入居したら、「期待していたのと違った…」というようなギャップも生じにくく、従業者にとっても「良いサ高住」となるのではないかと考えます。

 

加藤:自宅としての自由度が保たれていることですね。たとえば、サ高住から会社に出勤し、会社から帰ってきて食堂で食事をとられる入居者様や、ほぼ毎週末、サ高住に住む父親のところへ泊りに来られ、晩酌や将棋、趣味を一緒に楽しむご家族がいらっしゃいます。このように、基本的に入居者様やご家族等の出入りに制限がなく、気軽に出かけたり、ご家族が会いに来たりできる自由さがあるところは、とても魅力的だと思います。また、サ高住は、自宅で暮らす高齢者にとって、家族を呼ぶほどではないちょっとした手伝いをお願いできたり、困ったときにすぐに頼れたりする存在があることが魅力です。なので、スタッフと入居者さまの関係性ができているところ(入居者様が笑顔で暮らしているところ)を見ると、「良いサ高住だな」と思います。


藤原:サ高住の課題は何だと感じていますか?

 

楠木:ほかの業態でも発生しがちな期待と実態とのギャップが、特にサ高住では課題に感じます。介護保険施設、シニアマンションとどこが違うのか、世間一般に浸透しきらないのは多岐にわたる類型、名称の問題もあるでしょうし、改善の余地が多々あると思っています。 医介連携のようなシームレス、ボーダーレス化は望ましいですが、享受するサービスとかかる費用など複雑化しているのはやはり解消すべき課題ではないでしょうか。将来的には公的、行政機関のサイトなどでも有効にAIを取り入れ、自分のニーズに見合ったサービス、住まい・ホーム選びが適切に進められるようになればいいなと考えています。

 

加藤:サ高住は有料老人ホームにも該当するケースがある一方で、扱いはあくまで「賃貸住宅(ご自宅)」であり、そこに介護保険の事業所が併設されているという利用者にとってはわかりづらい仕組みとなっていると感じています。働いている職員側が迷わず説明ができ、利用者様やご家族にわかりやすい制度設計となることで、納得して選択できるようになってほしいと思います。

 

小林事務局長:サ高住は現在、29万個あまりの登録戸数があります。このなかには、自立した生活を送るうち(介護が必要になる前)から自分で選んで住み替えるもの、介護を受けながら暮らすものなど、さまざまな種類があります。しかし、その8割弱が住戸面積25㎡未満で、それまでと変わらない暮らしを送るのに適したものはごく少数なんです。高齢者の単身世帯が今後増加する想定のなか、それまでの自宅に一人で暮らす高齢者が、介護が必要になる前に、自ら住み替え、健康寿命を延ばすような暮らしを支える受け皿として、介護施設的な役割だけでない、高齢者の幅広いニーズに応えることがサ高住としての課題ではないかと考えています。


藤原:上記の課題を踏まえ、事務局として今後どのように解決していこうと考えていますか?

 

小林事務局長:このたび、改正老人福祉法が公布されました。これまでサ高住の約96%が食事や介護のサービスを提供することで有料老人ホームに該当しており、その届出は免除されていました。しかし、このたびの法改正により、中重度の要介護の方や一定の医療ニーズを要する方を対象とする有料老人ホームに該当する住宅は、「有料老人ホームの登録制度」の対象となり、法的な管理・規制が強まると思われます。さらに、サ高住と有料老人ホームの境目が見えづらくなり、入居先を探す方にとって、サ高住であることの意味や価値が不透明になっています。自立した生活を送るうちから豊かに暮らして、結果、健康で暮らせる期間を延ばすような住まい、また、夫婦や姉妹で暮らす住まいなど、介護施設的な住宅にはない取り組みのサ高住の事例を増やして、そのような高齢者向け住まいのあり方をサ高住の強みにしていきたいと考えています。


【藤原のまとめの一言】

 今回、事務局の皆様のご意見を通じて改めて感じたのは、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の大きな魅力は、安心できる環境のなかでも、一人ひとりが自分らしい暮らしを続けられることにある、ということです。

 一方で、制度やサービスの仕組みがわかりにくいことや、入居を検討される方の期待と実際の暮らしとのギャップなど、まだまだ解決すべき課題もあります。

 これからのサ高住には、介護が必要になってから暮らす場所というだけでなく、自立した生活を送る時期から、健康で自分らしく暮らし続けるための住まいとしての役割も期待されています。

 

「安心」と「自由」、そして「その人らしい暮らし」をどう両立していくか

 

 それぞれのサ高住がもつ強みを明確にし、入居される方やご家族が納得して住まいを選べる環境を整えていくことが、これからのサ高住の価値を高めることにつながるのではないでしょうか。

 今回のご意見が、サ高住のこれからを考えるきっかけになればと思います。


これまで14回にわたり、サ高住の現場で生まれる日々のできごとや、一人ひとりの人生に寄り添うケアのあり方をお伝えしてきました。

あらためて感じるサ高住の最大の魅力は、自宅のような自由や家族との時間を守りながら、すぐそばに寄り添う手が差し伸べられる安心感にあります。介護が必要な時期だけでなく、自立した時期から健康寿命を伸ばし、心豊かに過ごせる「住まい」としての可能性――これこそがサ高住の本当の価値です。

一方で、制度の複雑さや入居前のイメージとのギャップなど、現場として向き合うべき課題もあります。だからこそ、それぞれのサ高住が独自の強味や価値を明確に示し、ご本人やご家族が納得して選択できる環境を整えていくことが求められています。

私が看護や福祉の現場、そしてサ高住の運営を通じて大切にしてきたのは、「一期一会」の出会いを尊重し、住み慣れた場所で最期までその人らしく生きることを支える姿勢です。

「安心」と「自由」、そして「その人らしい暮らし」。

これらを両立させるには、サ高住というハードだけでなく、ケアマネジャーをはじめとする地域の多職種が手を取り合い、暮らしのパートナーとして伴走していくことが欠かせません。

サ高住は単なる「介護の受け皿」ではなく、高齢期の人生を豊かに彩るための「選択肢」です。これまでの連載が、皆様にとってサ高住の未来や豊かな暮らしを考えるきっかけとなれば幸いです。

これまでお読みいただき、本当にありがとうございました。地域のなかで紡ぐ温かい支援の輪が、これからも大きく広がっていくことを心より願っております。


著者紹介

藤原 雅美(ふじわら まさみ)

高齢者住宅協会兵庫支部長。
看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員。
居宅や老健でのケアマネ経験を経て、現在は富庄トラストパートナーズ株式会社取締役としてサービス付き高齢者向け住宅「アガスティーア姫路」の運営を担う。介護・看護の養成校にて講師も務め、次世代の育成にも尽力する。
「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という利用者の願いに応えるため、看取りまで責任を持って関わり続けることを信念としている。一期一会の縁を大切に、ご縁のあった方を最期まで支え抜くべく日々奮闘中。