最近よく聞く「サ高住」って何? 第13回 いろいろなサ高住をご紹介 ⑤アガスティーア姫路
2026/10/16
よく耳にするけど、実はよく知らない…そんなサ高住について解説します
サ高住は、何を「強み」にしているかで、そのカラーも変わってきます。そのカラーは、施設の思いそのもの。
これまでいろいろなサ高住をご紹介しましたが、今回は、私、藤原が運営するサ高住「アガスティーア姫路」をご紹介します。現場のこだわりと、住まいにかける思いをお届けします。
◆基本情報
名称:富庄トラストパートナーズ株式会社(アガスティーア姫路)
所在地:兵庫県姫路市
強み:医療福祉関係者から選ばれる信頼と、事業者都合の囲い込みではない「自由な選択肢」、そして安心を守る人づくり
開設して11年目を迎えた「アガスティーア姫路」。
田畑に囲まれた緑豊かな環境のもと、広告に頼らず、口コミやケアマネジャー、MSWからの紹介などを通じて、これまで多くの方に選んでいただいてきました。
今回は、相談員経験25年の実績を持ち、同施設の施設長を務める武田久美子氏に、「入居者様・ご家族様の意思と選択」をできる限り尊重する、私たちの住まいづくりへの思いを伺いました。
藤原:こちらの住宅ならではの特徴や強み、それを実現するためのこだわりを教えてください。
武田:私たちが大切にしているのは、広告や紹介業者による営業に頼るのではなく、実際に関わった方々から「ここなら」とご紹介いただけるような仕事を積み重ねることです。実際に、口コミやケアマネジャー、MSW、そして医療福祉関係者のご家族からのご紹介で入居につながるケースが大半です。
法人全体では、介護職の半数以上が介護福祉士の資格を持ち、喀痰吸引等の資格保持者も多く在籍しています。また、重度の方や医療依存度が高い方にも安心して過ごしていただけるよう、必要な設備や環境を整えてお迎えしています。
ただ、資格や設備が整っていれば、それだけで安心できるわけではありません。日々の声かけや接し方、ちょっとした変化への気づきなど、毎日の人との関わりも同じくらい大切だと考えています。
藤原:入居者様が安心して「自分らしい生活」を続けるために、日々のサポートや医療・介護の連携で力を入れていることは何ですか?
武田:一番大切にしているのは、「自社サービスの強制(囲い込み)」ではなく、「入居者様・ご家族様の自由な選択肢」です。 「アガスティーアの看護・介護だからお願いしたい」と信頼して選んでいただくことは、私たちにとって大変ありがたいことです。一方で、すべてを同法人や住宅側で抱え込むことが、ご本人にとって必ずしも良いとは限りません。デイサービスや訪問リハビリについては、ご本人の好みに合わせて外部事業所を自由に利用していただき、介護タクシーを利用して外出を楽しまれている方もいらっしゃいます。
往診医についても、住宅側で一律に指定するのではなく、「最期に診てほしいお医者様」をご本人やご家族に選んでいただき、住宅看護師が多数の医療機関との調整を担っています。また、特浴設備もありますが、安全面や身体状況を考えたときに訪問入浴の方が適している場合には、外部サービスを組み入れることもあります。
もちろん、すべての希望をそのまま実現できるわけではありません。安全面や医療上の制約などから、難しいこともあります。だからこそ、「できません」で終わらせるのではなく、「なぜ難しいのか」「ほかにどんな方法があるのか」をご本人やご家族と一緒に考えることを大切にしています。
藤原:これまでの関わりのなかで、特に心に残っているエピソードや、そこからの気づきがあれば教えてください。
武田:お看取りをさせていただいたご家族様から、今でも命日になるとご連絡をいただき、「あの頃はこうだったね」と昔話をさせていただくことがあります。また、別のご家族様が、法要の際に当施設へ贈り物を届けてくださることもあります。
ご入居中だけのお付き合いではなく、その方が当施設を退去された後もご家族様とのご縁が続いていることを、とてもありがたく、嬉しく感じています。
介護や看護の仕事は、日々の業務に追われがちです。それでも、私たちが関わっているのは「業務の対象となる人」ではなく、一人の人生を歩んでこられた「その人」なのだということを、こうしたご家族との関わりから改めて教えていただいています。
私たちが大切にしているのは、ただ生活の場を提供するだけではなく、その方らしく人生の最期まで過ごせるよう寄り添い、ご本人様やご家族様に「ここで過ごせて良かった」と思っていただける時間をつくることです。
これからも、一人ひとりの思いと選択を尊重し、ご入居者様とご家族様との信頼関係を大切にしながら、心に残る関わりを積み重ねていきたいと思っています。
藤原:これからの地域づくりに向けて、今後さらに力を入れていきたい取り組みを教えてください。
武田:地域との温かいつながりを、さらに深めていきたいです。これまでも自治会のお祭りに参加したり、職員が地域の伝統行事を披露したりと、交流を重ねてきました。
サ高住は、建物の中だけで完結する場所ではないと思っています。入居者様にも地域とのつながりを持ちながら暮らしていただきたいですし、私たち自身も地域の一員として、できることを増やしていきたいと考えています。
11年培ってきた医療・介護の連携力と地域との結びつきを生かし、重度化や看取りの受け入れを支えるとともに、選択の自由と「我が家としての穏やかな空間」を守れる、優しい人間性と思いやりのあるケアを地域へ広げていきたいです。
【藤原のまとめの一言】
最後に、アガスティーア姫路を11年間運営してきたなかで、私たちが大切にしたいと感じていることをお話しします。
11年間、入居者様、ご家族、職員と向き合ってきて、改めて感じるのは、サ高住は単なる「施設」ではなく、入居者様にとっての「おうち」だということです。11年も経つと、決してホテルのように新しくきれいな住宅ではありません。だからこそ、設備の新しさや華やかさではなく、そこで過ごす人の温かさを感じられる住まいでありたいと思っています。
高齢者住宅には、介護や医療の専門的な技術や知識はもちろん必要です。でも、それだけでは十分ではありません。日々の声かけや言葉遣い、そして「この方の暮らしを大切にしたい」という思いが、同じくらい大切だと11年間で実感しました。
どれだけ良い設備や介護技術があっても、職員の接し方ひとつで、そこが「安心できる我が家」にも「ただの施設」にもなりえます。だから私たちは、職員都合の業務を優先するのではなく、一人の生活者として入居者様に寄り添うことを大切にしています。
そして、もう一つ大切にしているのが「選べること」です。日々の暮らしの土台となる看護・介護については「アガスティーアだからお願いしたい」と思っていただける信頼を築きながら、デイサービスやリハビリ、往診医などは、できる限りご本人が自分に合ったものを選べる住まいでありたいと考えています。もちろん、すべてを自由にできるわけではありません。だからこそ、「できません」で終わらせず、「どうすれば希望に近づけられるか」を考える。それが私たちの考える入居者本位の住まいです。
・その人らしく暮らせること。 ・自分で選べること。 ・そして、安心して過ごせること。
この3つを大切にしながら、これからも「我が家のような穏やかな時間」と「妥協のない安心」を両立できる、温かみのある住まいをつくっていきたいと思います。
第9回〜第13回にわたって、各地のサ高住の取り組みをご紹介してまいりました。
それぞれの住宅に、それぞれの考え方や強みがあります。そして共通しているのは、「その人らしい暮らしを最期まで支えたい」という、現場の温かい情熱だったように思います。
これからも地域に開かれた「安心の我が家」として、全国のサ高住の皆様と共に学びながら、より良い暮らしの場を創造してまいりたいと思います。
著者紹介

藤原 雅美(ふじわら まさみ)
高齢者住宅協会兵庫支部長。
看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員。
居宅や老健でのケアマネ経験を経て、現在は富庄トラストパートナーズ株式会社取締役としてサービス付き高齢者向け住宅「アガスティーア姫路」の運営を担う。介護・看護の養成校にて講師も務め、次世代の育成にも尽力する。
「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という利用者の願いに応えるため、看取りまで責任を持って関わり続けることを信念としている。一期一会の縁を大切に、ご縁のあった方を最期まで支え抜くべく日々奮闘中。
