利用者の「いつもと違う」に気づく! 第7回:口の観察と対応のコツ

2026/10/06

よだれが出る、入れ歯が合わない、口の中が痛む……。口の「いつもと違う」に気づくポイントと正しい対応を

著者プロフィール

 

真鍋哲子(まなべ てつこ) 看護と介護の想いを繋ぐ会社 株式会社ONMUSUBI 代表取締役

 

福岡県北九州市出身。看護師として外科、整形外科、内科、精神科などを経験。2002年より高齢者施設の看護師として勤務し、2024年に株式会社ONMUSUBIを立ち上げ現在に至る。生活のなかの看護を追求し、チームケアを大切に現場での実践に取り組む。



口の中の状態や口唇の色は、利用者の健康状態を示す重要なバロメーターです。高齢になると、噛む機能(咀嚼)や飲み込む機能(嚥下)、さらには唾液の自浄作用が低下するため、口腔内のトラブルが起きやすくなります。口の異変は、日々の食事介助や口腔ケアで直接口元を見る介護職だからこそ早期に発見できる部分です。
連載第7回は、食事や生活の質(QOL)に直結する「口」の観察ポイントと対応をまとめます。

 

1.口唇の色が悪い

口唇の色は健康のバロメーターです。健康なときは薄紅色〜赤みを帯びていますが、青や紫、黒、白っぽいときは身体の異変が疑われます。

 

【観察のチェックポイント】

・意識状態
・口唇の色(白、青、紫、黒など)
・口唇の傷、乾燥、腫れ、痛みの有無
・入れ歯や歯の状態
・爪、四肢末端の色(チアノーゼの有無)
・呼吸器症状の有無(胸痛、呼吸苦、咳嗽、喀痰、喘鳴、動悸など)
・消化器症状の有無(胃痛、腹痛など)
・誤嚥、窒息などのエピソードの有無
・健康状態(栄養障害、ストレス、睡眠不足など)

 

【介護職としての対応】

まずは意識状態や四肢冷感、チアノーゼの有無を確認します。貧血の人は口唇が白っぽくなるため、ふだんの色を把握しておきましょう。また、交感神経が過度にはたらくと、血管が収縮して血流が悪くなり、口唇が白く見えることもあります。ストレスがその原因になることもあるので、精神状態への気配りも大事です。寒さで色が悪くなることもあるため、冷房の風が当たりすぎていないかなど室温にも配慮しましょう。
※声をかけても反応がない、食後に強くむせ込んで苦しそう、唾液や嘔吐物で窒息している場合は緊急事態です。すぐに119番通報をしてください。



2.よだれが出る

唾液は通常無意識に飲み込まれますが、加齢による筋力低下や、口腔疾患、脳血管障害、パーキンソン病などの神経性疾患があると口からあふれ出ることがあります。

 

【観察のチェックポイント】

・意識状態
・口唇、口腔内の状態(口内炎、傷など)
・歯の状態(入れ歯を含む)
・唾液の量
・栄養状態
・誤嚥、窒息などの有無
・消化器症状の有無(胃痛、腹痛など)
・健康状態(栄養障害、ストレス、睡眠不足など)
・姿勢の状態
・精神的な変化、エピソードの有無

 

【介護職としての対応】

食事中の食べこぼしやよだれは、咀嚼力や嚥下力が低下しているサインかもしれません。「パタカラ体操」やマッサージで舌や喉の筋肉を鍛えましょう。また、薬の影響で唾液の分泌量が増えることもあるので、その場合はかかりつけ医や薬剤師に相談してみてください。口や首回りについたよだれは、汚れや肌荒れの原因になるため、清潔な布でこまめに拭き取りましょう。
※急に呂律が回らなくなった、口を閉じられずよだれが出る、声かけへの反応がない、といった場合は、脳卒中が疑われます。急いで医療機関を受診してください。



3.歯ぐきが腫れている・出血している

口の中が不潔だと細菌が付着し、歯ぐきが炎症を起こしてブヨブヨに腫れたり、わずかな刺激で出血したりします。

 

【観察のチェックポイント】

・口腔内の汚染状態
・歯ぐきの腫れの程度
・口腔のただれ、炎症の有無
・腫れの部位、色
・痛み、出血の有無
・口臭、口臭以外の異臭の有無
・歯、口の中の粘つき状態
・歯ぐきが化膿していないか

 

【介護職としての対応】

出血するからといって口腔ケアをやめるのではなく、やわらかい歯ブラシを使って優しく口腔ケアを継続します。特にドライマウス(口が乾燥している状態)の人は唾液の分泌量が少ないため、自浄作用が低下し炎症を起こしやすくなります。保湿ジェルを塗るなどの対応が効果的です。感染予防のため、口腔ケア時は必ず使い捨て手袋を着用してください。



4.入れ歯が合わない

入れ歯が合わないと、口腔内を傷つけるだけでなく、食事が摂れなくなって栄養不足に陥るなど全身に二次障害を及ぼします。

 

【観察のチェックポイント】

・入れ歯の適合性(入れ歯の浮きなど)
・歯や粘膜の不快感、痛みの有無
・歯ぐきの赤み、腫れ、潰瘍の有無
・食事摂取時の状態
・言葉の発音の違和感の有無
・入れ歯の清掃、口腔ケア状態
・顎の不随意運動の有無
・頬の内側を噛んでいないか

 

【介護職としての対応】

入れ歯の着脱時は、歯ぐきに赤みや腫れ、潰瘍ができていないか観察する癖をつけましょう。不具合があれば早急に歯科医に調整を依頼します。手入れの際は、①熱湯で洗わない、②食後や就寝前はしっかり洗う、③乾燥させない、④入れ歯専用の洗浄剤や歯磨剤を使う、⑤強い衝撃や力を加えない、⑥漂白剤にはつけない、⑦硬い歯ブラシやスポンジを使わない、などを徹底し、丁寧に扱いましょう。



5. 舌が白い・黒い

舌の表面に付着した白い苔状のものを舌苔(ぜったい)といいます。唾液の減少による乾燥や自浄作用の低下、脳梗塞の後遺症、胃ろうの使用などでつきやすくなり、口臭や誤嚥性肺炎の原因にもなります。

 

【観察のチェックポイント】

・舌苔の色(赤、黄色、緑、黒など)
・口腔内全体の汚染状況
・口臭の有無
・体調不良の有無
・口腔内の乾燥状態
・精神的ストレス、疲労の有無

 

【介護職としての対応】

舌苔は口臭の原因になるだけでなく、呼吸器に入って誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。毛先のやわらかい歯ブラシや舌ブラシを使い、細菌を喉の奥へ送り込まないよう「舌の奥から手前へ」優しく動かして除去します。ただし、磨きすぎると味覚障害を引き起こすこともあるため、注意してください。口腔用ジェルで乾燥を防ぐほか、大きく口を開閉したり表情筋を動かしたりして唾液の分泌を促すことも有効です。


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