今月の月刊ケアマネジャー(10月号) “言葉かけ”を極める プロ直伝! 面接・対話のスキル

2026/09/16

『月刊ケアマネジャー』2026年10月号から、特集(“言葉かけ”を極める プロ直伝! 面接・対話のスキル)の内容を一部ご紹介いたします。

 

 ケアマネジャーには、面接や対話の技術を用いて利用者の本質的なニーズを把握し、支援に活かすことが求められます。しかし、現場では「本音を引き出せない」「真のニーズにたどりつけない」という悩みが絶えません。面接などの場で対話が深まらない背景には、実は「言葉かけ」に原因があることも少なくありません。本特集では、心理的アプローチに詳しい著者が、言葉かけに着目した面接と対話のスキルを紹介します。


面接・対話の基本理論――言葉かけに力を宿す

利用者と信頼関係を築く第一歩は、対話の入り口である「言葉かけ」から始まります。ここでは、相手も自分も尊重するアサーティブな姿勢と、非言語コミュニケーションに着目し、面接・対話の基礎を解説します。

 

言葉かけが対話を左右する理由

「皆さん、こんにちは」

 お読みいただいている時間帯が朝なら「おはようございます」、夜なら「こんばんは」ですね。こうしたあいさつを向けられると、きっとあなたも自然とあいさつを返したくなるのではないでしょうか。
 では、対話が次のような始まり方だったらどうでしょう。
「今回は、言葉かけの大切さについて、一緒に学んでいきましょう」
 もし「ちょうど、“言葉かけ”が気になっていたところなんです!」という人なら、この出だしでも対話は続いていくでしょう。けれども、特に言葉かけについて考えていなかった人にとっては、「急にどうしたの?」と感じられ、この先のやりとりは続かないかもしれません。
 ここで私があなたにお伝えしたいのは、どんな言葉かけを選ぶかによって、対話は深まりもすれば、途絶えてしまうこともあるという、とてもシンプルで、しかし本質的な事実です。
 皆さんの仕事は、利用者や家族との対話によって進んでいきます。対話なしには仕事が回らない。だからこそ、日頃から対話を深めるための工夫や学びを重ねているのだと思います。
 とはいえ、こちらは対話を深めたいのに、実際にはなかなか深まらない。むしろ止まってしまう。そんな経験も多いのではないでしょうか。
・利用者の本音がうまく引き出せない
・よかれと思った提案が拒否されてしまう
・説得しても聞き入れてもらえない
・家族の意向を聞きたいのに「おまかせします」と丸投げされる
 こうした場面に直面すると、「どうすれば対話が深まるのか」と悩みますよね。
 ところで、特集タイトルは「プロ直伝! 面接・対話のスキル」です。面接や対話のスキルは数えきれないほどある。いくら特集とはいえ、数多のスキルを網羅することはできっこありません。ここで、私は次のいずれかの言葉かけをします。
「数多のスキルを伝えるなんて、私には無理。とりあえず、誌面の許す限り説明してみましょう」
「数多のスキルを身につけていなくても大丈夫。どんな対話も、言葉かけ次第で深まります。そのコツをこれからお伝えしましょう」
 どちらも「数多のスキルは伝えない」という点では同じです。でも、「読もう」という気持ちになるのは、きっと後者だと思います。同じことでもどこに注目するかによって、こんなふうに言葉かけは違ってくる。対話が深まるかどうかを決めるのは、言葉かけ次第。その理由は、言葉かけは対話の入り口だからです。正しい入り口を選べば、その先へと対話という歩みは続いていくのです。
 入り口の言葉かけが変われば、対話の深まり方が変わる。その実感を、これから一緒に確かめていきましょう。


対話を支える「やり」と「とり」

 対話とは、互いに言葉を“やりとり”する営みです。だからこそ、その入り口である言葉かけが重要になります。言葉かけには、大きく3つのタイプがあります( )。

 

 
 1つ目は、攻撃的な表現。相手の気持ちを脇におき、自分の言いたいことを強い調子で一方的に伝えてしまうパターンです。たとえば、「なんでできないんですか」と責めるように言ってしまうような場合です。
 2つ目は、非主張的な表現。言いたいことが曖昧になり、相手からすると「結局、何を言いたいの?」と受け取りにくい表現です。たとえば、「もしよかったら……できれば……なんですけど……」と、肝心な部分がぼやけてしまうような言い方です。
 対話が深まるには、やりとりが続くことが欠かせません。やりとりが続くには、こちらが相手に「やる」言葉が、相手にとって受け取りやすいものでなければなりません。また、相手が伝えた言葉を、こちらの解釈や思い込みでゆがめて理解するのではなく、相手が言いたいまま「とる」ことができなければならない。こんなふうに、言葉の「やり」と「とり」がうまくいくことで、「やりとり」である対話が深まるのです。
 ところが、攻撃的な表現は相手にとって一方的で理不尽に感じられ、受け取りにくい。非主張的な表現は何を言いたいのかがわからず、やはり受け取りにくい。どちらも、こちらが言葉をうまく「やれて」いないため、相手も適切に「とる」ことができません。これでは、対話が深まらないのも当然です。


心の状態が言葉かけを決める

 では、なぜ攻撃的になったり、非主張的になったりするのでしょうか。その背景には、心の状態があります。ここでは「私」と「あなた」という対象に、「よい」「だめ」を組み合わせて考えてみましょう。


執筆:

竹田伸也(鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻教授)


特集

Chapter1
面接・対話の基本理論――言葉かけに力を宿す

Chapter2
実践! 面接・対話で役立つ言葉かけのスキル


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