今月の月刊ケアマネジャー(9月号) “資源がない”であきらめない 地域づくり・社会資源づくり入門
2026/08/21
『月刊ケアマネジャー』2026年9月号から、特集(“資源がない”であきらめない 地域づくり・社会資源づくり入門)の内容を一部ご紹介いたします。
多忙なケアマネジャーにとって地域づくりや社会資源づくりの取り組みは敷居が高いかもしれません。しかし、個別支援から見えた課題をきっかけに、資源を探す・創ることは自身の財産となり、地域力の向上につながります。本特集では具体的な手法や事例を通して、地域づくりを学びます。「自分事」としてとらえ、地域力を高める第一歩を踏み出しましょう。
地域づくり・社会資源づくりとは?
主任ケアマネジャーの役割として地域づくり・社会資源づくりが求められています。では、具体的にどんなことをすればよいのでしょうか。まずは、そこから紐解いていきます。
旅人と寝台
ソーシャルワークを教えるとき、ギリシャ神話の「プロクルステスの寝台」をたとえ話として用いることがあります。プロクルステスというのは強盗で、親切にもてなすと偽って旅人を捕えては寝台に乗せたのですが、旅人の身長が寝台より短ければ体を無理やり引き伸ばし、はみ出るようなら足を切り落とすという残酷な話です。このことから、個々の事情を無視し、強引に基準に当てはめることを意味する比喩になったと、広辞苑では説明されています。
この話をソーシャルワーカーも肝に銘じるべきなのは明らかです。相手の身体の形や大きさ(つまりクライエントの生活状況、障害の有無やADL、それらに伴うニーズや要望)は一人ひとり違っており、必ずしも寝台のサイズ(制度の枠組み)に合うわけではないのに、「制度がこうなっているから」と杓子定規に当てはめようとすると、それに合わないクライエントはとても窮屈な思いをするでしょう。サービスの提供にあたり、制度を優先するのか、
本人のニーズから考えるのかという「価値」を問う比喩なのだと筆者もかつて教えられました。
あきらめる? 創造する?
では、既存の制度やサービスが本人の状況やニーズに合っていない場合はどうすればよいのでしょうか。「ないものは創る」、つまり「社会資源開発」は、ソーシャルワーカーの専門技術であり、対人援助職としての価値や態度です。上の比喩でいえば、寝台からはみ出た足が宙に浮かないようにあれこれ工夫することが求められるのであって、「ないものはあきらめさせる」というのあれば「ソーシャルな」ワーカーと呼べません。ケアマネジャーもソーシャルワーカーですからもちろん同じですし、主任ケアマネジャーはなおさらでしょう。
昨今、いわゆるごみ屋敷、ひきこもり、孤立死、近隣トラブルのような社会的孤立や排除にかかわる問題が拡大しています。8050問題やダブルケアのように、個人・世帯に逼迫した問題が重複しているケースも珍しくなく、既存の制度・サービスだけでは把握や解決が困難な生活問題は、「制度の狭間の問題」「複雑化・複合化した問題」といわれています。
ホームヘルパーやケアマネジャーが訪問介護の相談に入ってみると、実は8050世帯だった(80代の親と同居のひきこもりの50代の子がいることがわかった等)ということがあります。通常、介護保険制度で子のほうを支援することはできません。このような場合、選択肢としては「そのままにする」か「介護保険以外の手だてを講じる」の二つしかないでしょう。後者の場合、「自前でニーズ充足を図ろうとする」という方法もありますが、多くの
場合、「誰かに知らせる、頼る」のではないでしょうか。
では、「誰」に知らせますか? 行政、社会福祉協議会、民生委員を思い浮かべる人は多いでしょう。子の状況によっては精神科等の専門機関、ひきこもり支援団体、生活困窮者自立相談支援事業者かもしれません。その際、「地域住民に相談してみよう」という発想ももってほしいと思います。
また、「そういえば、地元の商店街で何か新しいことをやってみたいと言っていた」とか、「農家の方々が人手不足で困っていたな」など、一見すると福祉とはかかわりがなさそうな“つぶやき”に、解決のヒントが隠れているかもしれません。
社会資源開発の視点
社会資源を「開発する」といえばハードルが高いと感じることでしょう。しかし実際には既存のものの使い方を工夫することが多いので、「社会資源の活用・調整・開発」という言い方もします。
住民はそれぞれが仕事や趣味などの得意分野がありますし、地元の企業・商店街や大学などもそれぞれ専門のサービスやノウハウがあります。
どの町でも、まちづくり、コミュニティづくり、生涯学習、地元の文化伝承、地域経済の活性化、防災・減災、多文化共生など、多様な地域づくりが進行しています。従来、それらは縦割りの行政機構にしたがって分かれていましたが、人口減少や少子高齢化が進む今、協働することによってwin-winの効果が生まれています。横断的に取り組むための自由度・裁量権も拡大しつつあります。さまざまな地域づくりと福祉が連携することで開発的な実践もしやすくなっています。
ここで「社会資源(社会福祉資源)」と「地域資源」という整理の仕方をしておきましょう。前者は福祉行政、福祉施設、福祉NPOのように福祉を第一目的とする資源、後者は病院、学校、一般企業、宗教施設、自然環境、歴史・文化のように、福祉を第一目的としていない資源を広く指します。後者とも連携することで、創造的・開発的な実践が生まれやすなります。つまり、「地域資源の社会資源化」です*。
そのきっかけは一人のクライエントのニーズを満たすための取り組みかもしれませんが、温かい支援の輪は不特定多数の人々の喜びへと波及し、「互いに気にかけ合う関係づくり」「困ったときに『助けて』と言える地域づくり」へと近づけていくものに違いありません。
宝探しから始めてみる
このように広い視点で眺めてみれば、地域には有形無形の資源の“種”があります。その種に水や栄養分を与えて(つまり、福祉的な意味づけや道筋を通して)花を咲かせるのが、いわばソーシャルワーカーである皆さんの役割です。
資源開発と関連して、「地域アセスメント」という技術があります。ケアマネジャーの皆さんが通常行うのは「個人アセスメント」ということになりますが、そのときにクライエントの生活課題を把握すると同時に解決資源となるストレングス(強み)を探すのと同様、地域に顕在・潜在する課題を調べ、それと併せて解決の手がかりとなるストレングスも探します。後者は「宝探し」です。「わが町の宝物」を探すことから、「資源開発」を考えていきましょう。
【本文注】
*上野谷加代子・原田正樹編(2016)『地域福祉の学びをデザインする』有斐閣,pp.240-242
執筆:
Chapter1・2
加山 弾(東洋大学福祉社会デザイン学部教授)
Chapter3・4
佐賀由彦(ライター)
特集
Chapter1
地域づくり・社会資源づくりとは?
Chapter2
地域づくり・社会資源開発の実際
Chapter3
個別支援から見えてくる、社会資源づくりのかたち
Chapter4
支える人を支える地域のしくみ
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『月刊ケアマネジャー』2026年9月号

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