最近よく聞く「サ高住」って何? 第10回 いろいろなサ高住をご紹介 ②株式会社来夢

2026/09/04

よく耳にするけど、実はよく知らない…そんなサ高住について解説します

サ高住は、何を「強み」にしているかで、そのカラーも変わってきます。そのカラーは、施設の思いそのもの。今回は、私、藤原が注目している、いろいろなサ高住をご紹介します。寄せていただいた、それぞれのサ高住のアツい思いをお届けします。


◆基本情報

名称:株式会社来夢
所在地:富山県氷見市
強み:介護テクノロジーの活用と、一人ひとりの人生や暮らしの歴史に支援を合わせる個別ケア

 

高齢化率約40%と人口減少が進む富山県氷見市で、「リハ・ハウス来夢」などを運営する「株式会社来夢」。同社の管理者統括である矢代虎太郎氏は、高齢者住宅協会の北陸支部支部長としても地域を牽引されています。今回は矢代氏より、地域にかける現在の取り組みやアツい思いを寄せていただきました。介護テクノロジーを駆使した先進的な試みと、どこまでも入居者様に寄り添うケアの姿をご紹介します。

 
一見、ふつうのマンションと変わらない外観

藤原:こちらの住宅ならではの特徴や強み、それを実現するためのこだわりを教えてください。

 

矢代:私たちが最も大切にしているのは、「サ高住に入居者を合わせる」のではなく、「一人ひとりの人生や暮らしに支援を合わせる」ことです。リハ・ハウス来夢では、認知症や精神疾患のある方、医療的ケアが必要な方まで幅広く受け入れ、ご本人の生活歴や身体状況に応じた個別支援を実践しています。日中は住宅看護職員を配置し、訪問介護・通所介護・居宅介護支援・協力医療機関が連携することで、重度化や看取りまで切れ目のない体制を構築しています。さらに、介護テクノロジーも積極的に活用して安心・安全を確保し、職員が入居者と向き合う時間を大切にしています。「家族のように寄り添う、もうひとつの我が家」として暮らしを支え続けることが私たちの強みです。

 

藤原:入居者様が安心して「自分らしい生活」を続けるために、日々のサポートや医療・介護の連携で力を入れていることは何ですか?

 

矢代:「介護を提供する」のではなく、「その人らしい暮らしを一緒につくる」ことを目指しています。入居前にはご本人・ご家族と丁寧に面談を行い、「できない理由」を探すのではなく、「どうすれば実現できるか」を多職種で考えて支援へつなげています。センサー式の見守りシステムから得られる生活データも、異常の早期発見だけでなく、生活リズムを分析して外出や趣味など生活の幅を広げるために活用しています。また、看取り支援では全ての方を対象にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を実施し、ご本人・ご家族・医療・介護職が想いを共有しながら、最期を支えています。

 
やわらかい空気に包まれるデイルーム

藤原:これまでの関わりのなかで、特に心に残っているエピソードや、そこからの気づきがあれば教えてください。

 

矢代:私たちは、「余命」は人生の終わりを示すものではなく、どう支えるかを考える出発点だと捉えています。余命半年以内と診断された入居者様も、「ここで暮らし続けたい」という強い希望を持たれ、多職種が一つのチームとなって支援した結果、意欲を取り戻し、当初の予測を大きく超える約2年間、ご自分らしい生活を送ることができました。また、別の認知症の入居者様では、センサー式の見守りシステムから得られる生活データを医師と共有し、診療やケアへ反映した実践を富山県医学会で共同発表する機会にもつながりました。医療と介護が同じ情報を共有し、本人の想いを中心に支援することの大切さを改めて実感しています。

 
地域とのつながりを大切に取り組んでいる「家族介護教室」

藤原:これからの地域づくりに向けて、今後さらに力を入れていきたい取り組みを教えてください。

 

矢代:サービス付き高齢者向け住宅を、単なる「住まい」ではなく「地域で安心して暮らし続けるためのセーフティネット」として進化させていきたいと考えています。富山県氷見市は高齢化率が高く、人口減少も進んでいます。今後は介護だけでなく、医療との連携、成年後見制度の活用、身寄りのない方への支援など、生活全体を支える役割がますます求められるでしょう。私たちはテクノロジーや多職種連携、地域資源を組み合わせながら、安心して暮らし続けられる地域づくりに挑戦し、「地方だからこそ実現できる介護」のモデルを全国へ発信していきたいです。


◆まとめのコメント(by 藤原)

「サ高住に人を合わせるのではなく、その人の人生に支援を合わせる」という矢代支部長の言葉は、これからの高齢者向け住宅が最も大切にすべき本質を突いています。
来夢さんの取り組みで特に素晴らしいのは、センサー式の見守りシステムなどの介護テクノロジーをただの省力化の道具にするのではなく、入居者様の生活リズムを分析して「趣味や外出の幅を広げるため」のデータとして活用されている点です。さらにそのデータを医師と共有し、富山県医学会での共同発表にまで昇華させている実践力には、同じサ高住を支える立場として非常に感銘を受けました。
余命宣告を受けた方が、多職種のチーム力によって意欲を取り戻し、2年間も自分らしい暮らしを全うされたエピソードは、医療と介護が本当の意味で同じ方向を向いたときに起こる素晴らしい事例です。
高齢化が進む地方都市において、住まいを「地域のセーフティネット」と捉え、成年後見や身寄りがない方への支援まで見据える姿勢は、まさに「地方だからこそ実現できる未来の介護」のモデルそのものです。北陸の地から発信されるこの熱い実践は、全国の多くの事業者に勇気と希望を与えてくれるに違いありません。


著者紹介

藤原 雅美(ふじわら まさみ)

高齢者住宅協会兵庫支部長。
看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員。
居宅や老健でのケアマネ経験を経て、現在は富庄トラストパートナーズ株式会社取締役としてサービス付き高齢者向け住宅「アガスティーア姫路」の運営を担う。介護・看護の養成校にて講師も務め、次世代の育成にも尽力する。
「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という利用者の願いに応えるため、看取りまで責任を持って関わり続けることを信念としている。一期一会の縁を大切に、ご縁のあった方を最期まで支え抜くべく日々奮闘中。