最近よく聞く「サ高住」って何? 第7回 サ高住で働く介護職
2026/07/24
よく耳にするけど、実はよく知らない…そんなサ高住について解説します
目次
1.サ高住における「医療ニーズ」の現状と不安
近年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居する高齢者の要介護度は上昇傾向にあり、それに伴って医療ニーズ(インスリン注射、胃ろう、たん吸引、在宅酸素など)の高い方の受け入れも増加しています。
そこで重要になるのが「医療職(主に看護師)」の存在です。しかし、サ高住における看護師の配置基準や役割は、医療機関はもちろん、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの「施設」とは大きく異なります。
第7回では、サ高住で働く看護師が「何をしていて、どのようなルールで動いているのか」、現場の柔軟な連携体制を交えながら解説します。
2.配置基準の違い:サ高住に看護師の義務はない
住まいを探す際や、プランを組む際に絶対に押さえておきたい最大のポイントは、「一般的なサ高住(一般型)には、看護師の配置基準(義務)がない」ということです。
第5回で解説したように、サ高住は「日中の生活相談員(ケアの専門家)」の常駐は法律で義務付けられていますが、看護師を置くかどうかは事業者の任意(独自の強みとしての配置)です。
一方、特養や老健などの「介護保険施設」、あるいはサ高住であっても「特定施設入居者生活介護(特定施設)」の指定を受けている住宅には、人員基準として看護師の配置が義務付けられています。そのため、サ高住を選ぶ際は「ここに看護師は常駐しているか、あるいは外部から定期的に来るのか」を事前に確認することが大切です。
3.働き方の違い:「施設の看護師」と「サ高住の看護師」
看護師が日中勤務しているサ高住であっても、そのかかわり方は施設とは根本的に異なります。
①施設の看護師(特養・老健など)の動き
施設では、看護師は施設全体の「健康管理責任者」です。入所者全員のバイタル、配薬、日常的な処置を、施設の管理スケジュールに沿って包括的に行います。緊急時の判断も、施設配置医(嘱託医)の指示のもと、施設内で完結させることが多いです。
②サ高住の看護師(一般型・訪問看護併設など)の動き
サ高住に勤務する看護師の多くは、住宅に併設または提携している「訪問看護ステーション」の看護師です。個別の契約に基づき、主治医の「訪問看護指示書」の範囲内で特定の居室を訪問し、1対1の看護ケアを行います。基本はケアプランに沿った動きですが、第6回の介護職と同様に、同じ建物内にいるからこその強みがあります。万が一、館内で別の入居者の緊急事態が起きた際には、現在入っているサービスの利用者に了解をいただいて一時的にバイタル測定や状況確認に駆けつけるなど、「同じ屋根の下に医療職がいるからこそできる、臨機応変な初期対応」が現場の安心感を支えています
4.各住まい・施設における医療職の違い
施設での介護のやり方やスタッフの動きをまとめると、以下のようになります。
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 住宅型有料老人ホーム | 施設(特養・老健など) | |
|---|---|---|---|
| 看護師の配置基準 | なし(任意配置) | なし(任意配置) | あり(義務) |
| 医療ケアの提供方法 | 主にお部屋への「訪問看護」が中心 | 主にお部屋への「訪問看護」が中心 | 施設の看護職員による包括的ケア |
| 医療処置の指示出し | 入居者個人の主治医(往診医) | 入居者個人の主治医(往診医) | 施設の配置医(嘱託医) |
5.サ高住の看護師ならではの強みと役割
ルール上は「在宅の訪問看護」であるサ高住の看護師ですが、一般的な訪問看護とは異なる大きなメリットを持っています。
①サ高住スタッフ(生活相談員・介護職)とのリアルタイム連携
同じ建物内にサ高住の生活相談員や、第6回で紹介した「兼務スタッフ(介護職)」がいるため、「〇〇さん、最近お食事の量が減っている」「ちょっと足元がふらつく」といった、日常の細かな気づきがリアルタイムで看護師に伝わります。病気になる前の、ちょっとした変化に気づきやすい環境です。
②住宅全体の「医療の安心感」の底上げ
サ高住の生活相談員や介護スタッフは医療行為ができないため、医療ニーズの高い入居者の対応に不安を抱きがちです。建物内に看護師の目があることで、介護スタッフに対し「この数値までは様子を見て大丈夫」「このサインが出たらすぐに訪問看護に連絡して」と具体的な助言ができ、住宅全体のケアの質を高めることができます。
6.おわりに:主治医(往診医)を軸としたネットワークづくり
サ高住における医療連携において、最も大切なのは「主治医(往診医)とのライン」です。
施設であれば「施設配置医」という一本の動線がありますが、サ高住は居宅であるため、入居者ごとに主治医(地域の開業医や往診クリニック)が異なります。サ高住の看護師(訪問看護)は、それぞれの主治医が発行する指示書に従って動いています。
「サ高住に看護師がいるから医療対応は万全」とすべてを任せきりにするのではなく、その看護師が「どの医師の指示で、どう動いているのか」を関係者で確認・共有することが不可欠です。日中常駐しているサ高住の生活相談員とも情報を共有し、主治医・訪問看護・サ高住スタッフを結ぶネットワークを構築することが、サ高住での安心の暮らし、ひいては在宅での「看取り(ターミナルケア)」までを可能にする強固な基盤となります。
著者紹介

藤原 雅美(ふじわら まさみ)
高齢者住宅協会兵庫支部長。
看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員。
居宅や老健でのケアマネ経験を経て、現在は富庄トラストパートナーズ株式会社取締役としてサービス付き高齢者向け住宅「アガスティーア姫路」の運営を担う。介護・看護の養成校にて講師も務め、次世代の育成にも尽力する。
「住み慣れた場所で最期を迎えたい」という利用者の願いに応えるため、看取りまで責任を持って関わり続けることを信念としている。一期一会の縁を大切に、ご縁のあった方を最期まで支え抜くべく日々奮闘中。
