利用者の「いつもと違う」に気づく! 第1回:バイタルサインの観察と対応のコツ

2026/06/09

利用者の「いつもと違う」バイタルサイン。見逃さないための観察ポイントと、適切な対応を解説します。

著者プロフィール

 

真鍋哲子(まなべ てつこ) 看護と介護の想いを繋ぐ会社 株式会社ONMUSUBI 代表取締役

 

福岡県北九州市出身。看護師として外科、整形外科、内科、精神科などを経験。2002年より高齢者施設の看護師として勤務し、2024年に株式会社ONMUSUBIを立ち上げ現在に至る。生活のなかの看護を追求し、チームケアを大切に現場での実践に取り組む。



介護現場で看護師として勤めていたとき、介護職が「いつもと違う」「なんだかおかしい」と気づいてくれたおかげで、早く対応でき、守れた命がたくさんあります。利用者の安全を守るためには、小さな変化を早期に発見し、適切に対応するスキルが不可欠です。

 

本連載では、症状別の観察ポイントと対応策を分かりやすく解説します。第1回は、命の基本指標となる「バイタルサイン」です。

 

1.熱がある

発熱の目安は体温が37.5℃以上あることですが、大切なのは「ふだんの体温と比べて高いかどうか」です。高齢者は症状が出にくく、訴えが少ない場合があるため、「元気がない」「食欲がない」といった様子から発熱に気づくこともあります。

 

【観察のチェックポイント】

①バイタルサイン、②既往歴・治療歴、③食事・水分摂取量、④服薬情報に加えて、下記のことを確認しましょう。

 

●発熱した日時
●悪寒(体のふるえ)の有無
●上気道症状(咳、鼻水、咽頭痛など)の有無
●消化器症状(吐き気、嘔吐、腹痛など)の有無
●排尿時の異変(色、痛み、残尿感など)の有無
●皮膚の異変(発赤、化膿など)の有無
●関節の異変(痛み、腫れなど)の有無
●食事中、臥床時のむせの有無
●精神状態の変化(興奮している、泣くなど)
●その他、自覚症状の有無

 

【介護職としての対応】

ウイルス感染症が疑われる場合は、マスクの着用や手指消毒など、感染拡大対策をとります。
悪寒や震えがある場合は無理に冷やさず温め、悪寒がない場合も、本人の状態や苦痛の程度に応じて首筋、鼠径部や脇の下などを冷やします。クーリングは必ず行うものではなく、状態に合わせて対応します。
発熱時は脱水になりやすいため、こまめな水分補給が重要です。また、衣類の着込みすぎや室温などの環境要因も確認しましょう。



2.SpO2が低い

SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)の正常値は約96〜99%です。90%を下回る場合は呼吸不全の状態なので、速やかに医療職に報告してください。

 

【観察のチェックポイント】

①バイタルサイン、②既往歴・治療歴、③食事・水分摂取量、④服薬情報に加えて、下記のことを確認しましょう。

 

●意識レベル
●呼吸状態(数、深さ、停止など)
●顔色、チアノーゼの有無
●喘鳴、咳、痰の有無
●息苦しさ、胸の苦しさの有無
●誤嚥の有無
●精神的ショックが大きいできごとの有無
●活気の有無、活動量
●測定部位の抹消循環状態(指先の冷えなど)

 

【介護職としての対応】

誤嚥や痰づまり、精神的ショックなどでも数値が変化するため、原因として考えられることや普段との違いを医療職に伝えます。
一方で、指の位置が適正でない、指先が冷えているなどの理由により、数値が正しく測れていないこともあります。数値が低いときは、指先の冷えを確認して温めたり、測定する指を変えたりして、もう一度測定しましょう。

なお、酸素吸入の開始・停止・流量変更は、介護職の判断で行うことはできません。
在宅酸素療法を行っている人で、一定の条件下で酸素マスクや経鼻カニューレが一時的に外れた場合に、元の位置に戻すことは認められていますが、対応は医師の指示や施設の手順に沿って行い、医療職へ報告しましょう。



3.呼吸に異常がみられる

呼吸数の正常値は、成人が12〜18回/分が目安であるのに対し、80歳以上では10〜30回/分と幅広くなります。ふだんの状態を把握し、変化があれば医療職に報告しましょう。

 

【観察のチェックポイント】

①バイタルサイン、②既往歴・治療歴、③食事・水分摂取量、④服薬情報に加えて、下記のことを確認しましょう。

 

●意識レベル
●呼吸状態(数、深さ、リズム、停止など)
●うめき声、喘鳴、口すぼめ呼吸
●顔色、チアノーゼの有無
●息苦しさ、胸の苦しさ、動悸の有無
●四肢の冷感、生汗の有無
●咳、痰の有無
●環境の変化の有無
●精神的ショックが大きいできごとの有無
●その他、自覚症状の有無

 

【介護職としての対応】

感染症が疑われる場合は、医療職に報告しましょう。心臓の病気がある利用者の場合は、異常がみられた場合にどのように対応するのか、あらかじめ医師から聞いておきましょう。薬が呼吸に影響することもあるので、医師に相談し、必要に応じて薬の量を調整することも大切です。

 

運動やストレス・不安で一時的に呼吸が速くなっている場合は、声をかけてリラックスできる体勢を整えましょう。

 

※利用者の呼吸が停止している場合は、直ちに救急搬送を要請し、AEDを用いた心肺蘇生を行ってください。



4.血圧に異常がみられる

高血圧は脳卒中などのリスクを、低血圧は転倒などのリスクを高めます。血圧は環境の変化や精神状態の影響も受けるため、ふだんの数値を基準に考えることが大切です。

 

【観察のチェックポイント】

①バイタルサイン、②既往歴・治療歴、③食事・水分摂取量、④服薬情報に加えて、下記のことを確認しましょう。

 

●意識状態(表情、視線、反応など)
●顔色、チアノーゼの有無
●頭痛、めまい、ふらつきの有無
●息苦しさ、胸の苦しさ、動悸の有無
●離握手(グーパー)ができるか
●倦怠感、疲労感の有無
●言動の変化の有無
●環境の変化の有無
●精神的ショックが大きいできごとの有無
●その他、自覚症状の有無

 

【介護職としての対応】

運動や入浴後は血圧が上がるため、血圧を測定するときは、安静な状態で行います。血圧が高いときに脱力感や離握手の左右差があれば、早急に受診が必要です。また、高齢者は急に立ち上がったときや食後に低血圧になりやすいため、注意しましょう。降圧剤の影響で低血圧になるケースも現場では多く見られます。利用者が飲んでいる薬を確認し、気になる場合は医師や薬剤師に相談してみてください。


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