独立・開業で広がる!ソーシャルワーカーの新しい働き方ガイド Vol.1 ソーシャルワーカーとして独立・開業する意味①
2025/09/05

福祉職(社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー等)必見!
この連載は、介護や福祉の仕事に熱い想いをもち、これから資格取得を目指している方、あるいはすでに資格をもっていて、さらなるスキルアップを考えている方に向けてお届けします。
「もっと自分のソーシャルワーク実践を深めたい」「将来的には独立・開業という道も考えてみたい」――こんな思いがある方は、ぜひこの先を読み進めてみてください。
あなたのソーシャルワーク実践を具体的に形にするために、知っておくべきことを事例と解説を交えながら、わかりやすくご紹介していきます。
「なりたい自分」への「スタートライン」に立つためのヒントが、きっと見つかるはずです。
著者
横田 一也(株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ代表)
松谷 恵子(まつたに社会福祉士事務所所長)
小川 幸裕(弘前学院大学社会福祉学部教授)
自らの理想を形にする「独立」という選択
日々の支援の現場では、幾度となく、制度や組織の壁に直面します。「もっとこうすれば、本当に必要な支援を届けられるのに…」という葛藤を抱えた経験は、皆さんも少なくないはずです。
支援で直面する壁の例
また、ソーシャルワークの仕事への情熱をもちながらも、時間的な制約や自身の裁量の小ささから、「この働き方が本当に理想なのだろうか?」と悩むこともあります。
働き方の悩みの例
独立・開業はまさに、こうした制度や組織の枠組みを乗り越え、自身の理想とする支援を主体的に実践する有効な手段といえます。
独立のメリット・デメリット
ただ、独立・開業はそうしたメリットがある一方で、リスクも伴うため、両面を整理してみましょう。
メリット
「本当に届けたい支援」を自分の手で
・制度や組織の枠にとらわれず、利用者一人ひとりのニーズに沿ったソーシャルワークを追求できる
・「こうありたい」という理想の支援を、自らの信念に基づいて形にできる
新たなサービスの創出、専門分野の追求
・複雑化する社会課題に対し、自由な発想と専門性で、既存の枠組みにとらわれない新たな支援を展開できる
・特定の分野に特化しスキルを磨くことで、その分野の第一人者として活躍できる
自分らしい働き方をデザイン
・時間や場所に縛られない働き方で、ワークライフバランスが向上
・子育てや介護との両立など、より主体的な生き方を実現する
収入アップの可能性
・自身の事業運営の成果が直接収入に反映される
・信頼を得ることで、組織に所属している場合より高い収入を目指せる道が開ける
デメリット
収入の不安定さ
・毎月保証された給与はなく、自ら仕事を開拓し、継続的な依頼獲得のための努力が必要
・収入が途絶えるリスクに備えて、十分な準備金や資金計画が不可欠
経営責任の重圧
・事業全体の維持・運営に関するあらゆる責任を一身に背負う
・資金繰り、集客、人材育成、法的手続きなど、多岐にわたる業務を自ら管理・遂行しなければならない
社会的信用の壁
・組織の看板がない個人としての活動は、実績と信頼をゼロから積み重ねていく必要がある
・関係機関や地域社会からの信用を得るには、相応の時間と丁寧な活動が求められる
法的・倫理的リスクへの備え
・契約書の作成・締結、個人情報保護、ハラスメント対策、利用者とのトラブル対応など、事業運営においてはさまざまな法的知識が求められる
・予期せぬ事態や、倫理的な判断に迷う場面が出てくる可能性もあり、専門家への相談体制を整えておくことも重要
このように、独立・開業は、理想の支援を追求できる魅力的な選択肢である一方、組織に守られない厳しさ、そしてさまざまな責任とリスクが伴います。独立・開業を成功させるためには、楽観的な見通しだけでなく、起こりうる困難を具体的に想定し、周到な準備と覚悟で臨むことが重要です。
著者紹介
横田 一也(よこた かずや)
株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ 代表/認定社会福祉士(地域社会・多文化分野)・介護福祉士・介護支援専門員・大阪府人権擁護士等。
障害者・高齢者福祉分野を中心に支援経験を重ね、2012年に独立。ソーシャルワーカーとして子どもから障がい者・高齢者まで幅広い支援活動を行う。成年後見人等の受任のほか、スクールソーシャルワーカーや大学等講師を務める。訪問ケア・人材育成事業で地域に根ざした活動を展開。
松谷 恵子(まつたに けいこ)
まつたに社会福祉士事務所所長/認定社会福祉士(児童・家庭分野)・介護支援専門員。
高齢者の通所介護・グループホームの勤務を経て、2011年10月まつたに社会福祉士事務所開設。福祉全般の相談業務、第三者委員やオンブズマン、成年後見人等の受任、スクールソーシャルワーカー、スーパーバイザー、非常勤講師・研修講師等を行う。
小川 幸裕(おがわ ゆきひろ)
弘前学院大学社会福祉学部 教授/社会福祉士。
独立・開業したソーシャルワーカーを対象とした調査に基づき、ソーシャルワーク実践の構造や要因を分析。研究活動の傍ら、地域の活動をとおして地域の社会福祉連携の推進に貢献し理論と実践の架け橋となる活動に取り組む。