Q&Aでわかる!介護施設の看護実務 【Q11】

2025/06/20

「看護師」の職場といえば、真っ先に病院が思い浮かぶと思います。しかし、実際の職場は多機にわたり、介護施設もその一つです。本連載では、介護施設に勤務する看護師の業務内容や考え方、介護職などの他職種との連携について、特に重要な項目をピックアップしてQ&Aの形で紹介していきます。

 

【著 者】

前川 静恵(まえかわ・しずえ)
社団法人是真会病院病棟師長、慈恵病院看護部長、長崎市医師会保健福祉センター、老人保健施設ハーモニーガーデン副施設長、有限会社Gracias かいごの花みずき施設長、株式会社パールの風代表取締役、社会福祉法人鳳彰會副理事長などを経て、現在社会福祉法人鳳彰會理事、特別養護老人ホームひこばえ施設長、ケアハウスひこばえの苑施設長。看護師、介護支援専門員。
主な著書に、『訪問介護事業所サービス提供責任者仕事ハンドブック』中央法規出版、2006、改訂版2009、三訂版2013、『デイサービス業務実践ハンドブック』中央法規出版、2014、改訂版2015、など。

 

Q11 職員間の信頼関係を築くには?

[Answer]

 施設の職場環境では、看護師、介護職員、生活相談員、ケアマネジャーなど、多職種が各々の立場で協力しあって仕事をしています。そのため各々の立場に立っての仕事内容の理解が必要です。
 看護師が医療的展開から病気の治療ばかりに力を入れていると、利用者の生活の支援に重きを置いて働いている介護職員と方向性が噛み合わず、そこにズレが生じ、良い関係は生まれません。
 忙しい業務の中でこそ「チームケア」という意識を持つことでお互いの信頼関係を築き、利用者によりよいサービスの提供、最善の支援ができます。

 

[解 説]

 多忙な業務の中だからこそ、「チームケア」という意識を強く持ち、お互いを尊重し協力することで、利用者に対してより質の高いサービスと最善の支援を提供することが可能になります。特に看護師と介護職員間の信頼関係は、利用者に適切な支援を提供する上で非常に重要です。例えば、業務上のミスが発生した際に、一方的に相手を責めるような言動は信頼関係を損なう原因となります。看護師は介護職員に対し、指示を出すだけでなく、利用者の変化や留意点などを丁寧に説明し、助言を行うことが求められます。同様に、介護職員も日常生活支援の中で気づいた点を看護師に積極的に伝えるなど、互いの役割を理解し、共通の方針を持って業務に取り組むことが大切です。仕事に対する自信を持ち、積極的に情報を共有していくことで、相互の信頼関係は自然と深まっていくでしょう。
 お互いの性格を理解し、良い点を見出し、助け合う気持ちを示すことが、信頼関係構築の近道です。具体的には、コール対応時の声かけや協力、一人での対応が難しい場合の積極的な手助けなどが挙げられます。施設によっては、職員間の交流を目的としたレクリエーションや懇親会などが開催されることもあり、普段話す機会の少ない職員とのコミュニケーションを図る良い機会となり、信頼関係構築のきっかけとなることがあります。

 

※本連載は、前川静恵先生の著書『Q&Aでわかる!介護施設の看護実務―特養の実地指導・連携・ケア』(中央法規出版、2022年10月発行)をもとに作成しています。施設看護師の業務をさらに深く知りたい方は、本書をぜひご覧ください。