今月のケアマネジャー(5月号) 7つの技法から学ぶ ケアマネジャーの実務に活かす心理療法

2025/04/24

『月刊ケアマネジャー』2025年5月号から、特集(7つの技法から学ぶ ケアマネジャーの実務に活かす心理療法)の内容を一部ご紹介します。

ケアマネジャーの業務は、利用者・家族との意思疎通や相談対応が大きな割合を占めます。こうした業務では、専門的な心理学やカウンセリングの技法を理解しておくことが役立ちます。本特集では、7つの代表的な心理療法を紹介し、現場で実践する際のポイントをやさしく解説します。


相談援助に活きる7つの心理療法

ケアマネジャーは、高齢者や障害のある人の生活を全人的に支援するうえで、利用者や家族と円滑なコミュニケーションを図り、その相談にしっかりと対応していくことが求められます。
本特集では、そうした相談援助の実践に活かせる7つの技法を紹介します。

 

心理療法がなぜケアマネジャーに役立つのか? 

 心理療法やカウンセリングの基礎を学ぶと、利用者との面談やアセスメントの精度が高まるだけでなく、家族との関係性調整や自身のストレスマネジメントにも大きく役立ちます。なぜなら、心理療法とは、対象者が自らの心理的な問題や感情的な困難に対処できるように、さまざまな心理学的立場に基づく知識や技法を用いて行うアプローチであるため、生活課題に直面している利用者・家族との相談援助場面で大いに活用でき、支援者の心の健康維持にも役立つからです。
 特に、1 認知療法、2 応用行動分析、3 解決志向アプローチ、4 動機づけ面接、5 対人援助の基本姿勢、6 家族療法とシステムズアプローチ、7マインドフルネスは、ケアマネジャーがかかわる援助場面に導入しやすく、実践的な技法です。これらを学んで活用することで、より総合的な支援が行いやすくなるでしょう

 

さまざまな心理療法

 今回は7つの心理療法を紹介しますが、それ以外にも、「精神分析的心理療法」「森田療法」「ナラティブ・セラピー」など、さまざまな心理療法があります。
 心を病んでいる人や、心理的に苦しい状況にある人、葛藤を抱えている人たちと向き合う際に役に立つものばかりですので、この機会に学んでみることをお勧めします。

 

心理療法①認知療法

 「考え方(認知)」と「行動」に注目し、問題を整理しつつ、具体的な対処法を学ぶ心理療法です。従来の考え方がもたらすネガティブな感情や行動を別の視点で見直し、新しい行動を試していくことで、よりよい状態を目指します。

 

心理療法②応用行動分析

 学習心理学の理論に基づき、その人の行動を理解し、改善・強化するための方法です。このアプローチでは、観察可能な行動に焦点をあて、ある行動を強めていたり、弱めていたり する状況を細かく分析します。そして、その行動を変えるために、具体的にどうかかわるとよいか検討する技法です。

 

心理療法③解決志向アプローチ

 問題の原因ではなく、できていることに注目し、これからの解決のイメージを具体的に話し合う技法です。「小さな成功体験」や「すでにある資源・強み」を活かすポジティブな内容であるため、相手を否定したりせず、利用者、家族とよい関係を築きやすい特徴があります。

 

心理療法④動機づけ面接

 主に「変わりたいけれど、なかなか行動に移せない」という利用者や家族が対象となるアプローチで、相手の内面からのやる気や意欲を引き出すことを重視します。相手を説得するのではなく、本人のなかにある「変わりたい気持ち」と「変わりたくない気持ち」に寄り添いながら、本人の意思や価値観を明確にしていきます。

 

心理療法⑤対人援助の基本姿勢

 どのカウンセリング技法でも、根底には「あなたの話をしっかり聞いていますよ」「もっと教えてくださいますか」という姿勢や態度があります。支援者として「早く提案したい」「すぐ答えを出したい」と焦る場面でも、相手の気持ちを受け止めじっくり傾聴し、利用者から信頼してもらえる関係を築くことが、よい結果につながります。

 

心理療法⑥家族療法とシステムズアプローチ

 要介護者が自宅で生活する場合は、家族の協力が欠かせませんが、介護疲れや意見の相違などで疲弊してしまうケースが多々あります。この技法を活用することで、家族間の意思疎通面で課題に気づきやすくなり、サービスの調整だけでなく「家族間の相談の場づくり」や第三者機関の活用など、幅広いサポート方法を検討しやすくなります。

 

心理療法⑦マインドフルネス

 「今、この瞬間」に意識を向け、あるがままを受け入れることでストレスを軽減する技法です。呼吸法や簡単な瞑想法、身体の感覚を丁寧に感じ取るエクササイズなどがあります。 医療・介護の現場でも、ストレス対処や不安軽減、うつ傾向の改善などを目的に導入されることが増えています。

 

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執筆:
Technique03,05,06
植田俊幸
鳥取県立厚生病院・精神保健福祉センター 精神科医
Technique01,02,04,07
竹田伸也
鳥取大学大学院医学系研究科 臨床心理学講座教授

 

特集

Introduction
相談援助に活きる7つの心理療法
Technique01
認知療法
Technique02
応用行動分析
Technique03
解決志向アプローチ
Technique04
動機づけ面接
Technique05
対人援助の基本姿勢
Technique06
家族療法とシステムズアプローチ
Technique07
マインドフルネス


『月刊ケアマネジャー』2025年5月号

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