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川村匡由の人生設計ゆとりサロン

高齢者所在不明問題を考える(2)~根強い「お任せ民主主義」

弊害となっている公務員の体質の意味

 ちなみに、お役所仕事となっている公務員の体質を揶揄する「官尊民卑」とは吉田茂が先鞭をつけた考え方で、政府や官吏(かんり:国家公務員)に関連する事業などに従事する者が尊いとし、民間の事業などに従事する者を卑しむこと、あるいはその気風を意味します。

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 また、「上意下達」とは、上位にある者がその命令や指示、言葉などを下位者に伝え、問答無用に実行させることを意味します。さらに、「親方日の丸」とは、バックに国がついているため、何を行っても困らないため、真剣味に欠けた意識や態度、費用対効果を意味します。

 一方、「大本営発表」とは、太平洋戦争で日本の大本営の陸軍部や海軍部が犯した戦況などに関する公式発表のことを意味します。

 いずれにしても、お役所仕事を揶揄したこのような体質は、明治維新から150年、戦後65年経った今なお、「主権在民」という憲法の精神が十分浸透されないまま法制度ができており、かつ、それに従って行政機構が整備され、それでよしとされてきたのです。

 いうまでもなく、立法は国会の所管で、議員は選挙期間中、有権者である国民に頭を下げ、支持を訴えるものの、当選したら、ふんぞり返った「センセイ」です。行政は内閣の所管で、国民感情と遊離した豪華な庁舎で、デスクワークを中心に「舌も出さない」、「おいこら」の行政サービスです。司法は裁判所の所管で、法衣をまとった裁判官が壇上に身構え、原告、「被告」人、傍聴関係者を見下ろして審議・判決を下しています。

 もちろん、そのような人たちのなかにも、日夜、精勤している職員も議員も裁判官も大勢います。また、それはそれで、長年にわたる議論のなかで積み上げてきた成果の一つには違いないため、それなりの評価もすべきでしょう。が、いずれにせよ、今回の問題を受け、「主権在民」という憲法の精神に今一度立ち返って現行のお役所仕事を再点検し、見直すべきところは早急にと願わざるを得ません。

 また、国と地方の関係では、地方分権化といわれるなか、法整備もそれなりにされつつあるものの、今なお基本的には国は地方に通達や通知などを出し、地方はそれに従って国民・住民に対するサービスの提供を担っています。それでも、「官から民へ」、「新しい公共」の掛け声のもと、昨年の政権交代でやっとその是正に着手される気配になりましたが、まだ1年足らずしか経っていない今、官公庁や地域、人によってはまだまだ旧態依然とした体質が残ったままです。

■根強い「お上」への意識と依存

 では、その一方の民はどうかというと、確かに、民間の事業などに従事する者、すなわち、一般国民はもとより、企業も「お上(かみ)」の通達や通知、指導に従わざるを得ず、また、このような通達や通知、指導に従っていれば問題はないと意識しているケースが多いことも事実です。

 また、国民・住民は選挙に行く程度で、その財源である税金を納めるので、あとはお任せとなってしまっているのが、今回の問題の背景の1つになっているのではないでしょうか。

 そればかりか、このように「お上(かみ)」に従い、立法、行政、司法の財源である税金を納めれていれば、日々の生活の安心や安全、企業活動における生産性の向上、労使関係の維持に期待し、その構成員であるという立場を十分認識せず、あとはお任せという「お任せ民主主義」が根強いことも事実でしょう。市役所の前が市民広場として一般開放されており、外国人でも自由に見学できるヨーロッパの政治風土をうらやましく思うのは筆者だけではないでしょう。

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国民・住民と一体化したヨーロッパ(イタリア・ベローナにて)


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プロフィール

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川村匡由
(かわむら まさよし)
社会福祉学者・博士(人間科学・早稲田大学)、行政書士有資格、福祉デザイン研究所所長。シニア社会学会理事、世田谷区社会福祉事業団理事、元大学基準協会評価委員、元社会福祉士試験委員。

主著に『地域福祉とソーシャルガバナンス』(中央法規出版)、『社会保障論(編著)』、(ミネルヴァ書房)、『人生100年"超"サバイバル法』(久美出版)など。山岳紀行家としても知られており、本サイトで「山歩きのすすめ」などを寄稿している。

川村匡由+福祉デザイン研究所のホームページ http://www.geocities.jp/ kawamura0515/

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