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川村匡由の人生設計ゆとりサロン

生涯学習を学ぶには

 前回では生涯学習の必要性について記しましたが、国民はどこで生涯学習を学ぶことができるのでしょうか。

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 最も身近なものは、まずは、前回に少し記した公民館です。これは、社会教育法にもとづき、市町村、その他一定区域内の住民に対し、日常生活に関わる教育や学術、文化に関わる各種事業を行い、住民の教養の向上をはじめ、健康の増進や情操の純化、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与すべく、市町村が設置・運営している社会教育施設です。

 歴史的には、明治維新後、イギリスのセツルメント運動の流れを受け、設置された隣保(りんぽ)館や労働福祉会館にさかのぼり、1941年、岩手県水沢町(現奥州市)にできた後藤新平の公民館が、わが国では最初のものです。

 セツルメント運動とは、大学教授などの知識階級が地域の貧民街に住み込み、貧困の労働者に対し、貧困など労働や福祉の問題は個人の責任ではなく、国家の責任であることを教授する社会活動で、ソーシャルワークの一つとされています。

 このセツルメント運動の発祥地はイギリスで、19世紀の後半、産業革命によって労働者の貧困が著しくなったため、当時、経済学者で、ケンブリッジ大学教授でもあったアーノルド・トインビーがロンドンの貧民街に学生とともに住み込み、貧困にあえぐ労働者に対し、貧困は国家の責任であることなどを教授したものです。その運動の拠点として、大学の関係者などから寄付金を募り、「トインビーホール」をその一角に設けたのが世界で最初のセツルメントハウスです。これが、今日にいう公民館の走りです。

 わが国では1897年、この「トインビーホール」を視察した社会運動家、片山潜により、東京・神田の三崎町(現東京都千代田区神田三崎町)に「キングスレーホール(館)」が設置され、社会運動や学生運動の発展に貢献したほか、その後の大正デモクラシーに大きな影響を与えました。

場所は公民館、コミセン、生涯学習センター、地域交流館など

 さて、公民館は、みなさんもよくご存知のはずですが、近年は、コミュニティセンターや生涯学習センター、地域交流館、ふれあい館、市民協働サロンなどといった名称で設置・運営されている自治体も増えているため、それぞれの自治体の広報紙やホームページを見て、どのような事業を行っているのか、調べて参加するとよいでしょう。
 また、なかには住民が自主的に運営しており、講座の講師の人選や講師の謝金のみ自治体が行っているところもあります。受講料も基本的に実費以外に無料です。

 また、新聞社やテレビ局、専門学校などでもカルチャーセンターや文化センター、文化・教養教室などといった名称で、それぞれの建物や学校の一角、都心の雑居ビル、あるいは住民の有志が学校や商店街の空き店舗、自宅などを活用してサロンを開いているケースもあります。もっとも、これらはいずれも民間のため、受講料はやや割高になります。

 いずれにしても、幼児教育や子育て、生涯教育、社会保障、社会福祉、環境美化、文化伝承、時事、悪質商法、郷土史などと内容もさまざまで、かつそれぞれの地域の問題や関心事も自由に取り上げることができるため、単に参加するだけでなく、運営にも関わって老後の生きがいの促進や社会参加に活用されてはいかがでしょうか。


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なかには住民が自主運営している公民館も(沖縄にて)


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プロフィール

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川村匡由
(かわむら まさよし)
社会福祉学者・博士(人間科学・早稲田大学)、行政書士有資格、福祉デザイン研究所所長。シニア社会学会理事、世田谷区社会福祉事業団理事、元大学基準協会評価委員、元社会福祉士試験委員。

主著に『地域福祉とソーシャルガバナンス』(中央法規出版)、『社会保障論(編著)』、(ミネルヴァ書房)、『人生100年"超"サバイバル法』(久美出版)など。山岳紀行家としても知られており、本サイトで「山歩きのすすめ」などを寄稿している。

川村匡由+福祉デザイン研究所のホームページ http://www.geocities.jp/ kawamura0515/

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