令和9年度 障害福祉報酬改定に向けた論点について

2026/09/09

令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)について紹介します。

 令和8年8月27日に、「第62回障害福祉報酬改定検討チーム」が開催されました。本記事では、資料の内容に沿って、令和9年度障害福祉報酬改定に向けた論点(案)を紹介します。資料全体をご覧になりたい方は、 厚生労働省のホームページ をご確認ください。

 


1. はじめに

 障害者総合支援法(旧・障害者自立支援法)の施行から20年が経過し、障害福祉サービス等の利用者は現在約170万人、国の予算は約2兆3千億円で施行時の約4.5倍となるなど、障害者支援は年々拡充しています。
 一方で、特に令和6年度の障害福祉報酬改定(改定率+1.12%)の後においては、総費用額が+12.1%の伸びとなる中で、人材確保の困難さに伴うサービスの質の低下も懸念されています。そのため、令和8年度には、喫緊の課題である従事者の処遇改善に加えて、利用者に提供されるサービスの質と制度の持続可能性を確保する観点から、臨時の報酬改定が実施されました。

 

 また、令和8年の関係法律の成立や改正、各種検討会における報告書等、今年3月に示された令和9年度から令和11年度までの第8期障害福祉計画及び第4期障害児支援計画を作成するための 基本方針 などを踏まえた対応も求められています。このような状況等を踏まえ、令和9年度障害福祉報酬改定の際の主な論点について、案が示されました。報酬改定チームでの団体ヒアリングにおける意見も参考としつつ、検討を進めていく方針としています。

 


2. 令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)

 令和6年度障害福祉報酬改定以降、障害者本位ではないサービスの提供が行われている事案が相次いで明らかとなっています。加えて、「特段の知識や経験は不要」「利益をあげることができる」として、新規の参入・事業実施等を働きかける例もみられる中で、十分に質が確保されていないサービスを提供する事業者も参入してきているという現状があります。令和9年度障害福祉報酬改定に当たっては、質の高い支援の提供にしっかりと資源が用いられるようにするための見直しが必要不可欠であると位置づけられました。
 事業者指定や指導監査等に関する取組に加え、報酬上もサービスの質の確保・向上に向けた取組を徹底し、サービスの質や支援の必要性に応じてメリハリのきいた報酬体系とするなど、総合的な取組を行う必要性が示されています。

 

1.持続可能なサービス提供体制の確保

 物価の高騰、賃金の上昇、支え手が減少する中での人材確保の必要性、経営の状況等を踏まえ、利用者に必要なサービスを提供できるような対応が求められています。賃上げや経営の状況等を把握した上で、物価変動に適切に対応するとともに、他職種と遜色のない処遇改善の実現を図ることが必要です。
 さらに、人材の確保に向けた取組と併せて、介護テクノロジーの活用など、当事者視点に立ったケアの充実を目指し、生産性向上の取組を推進するための方策について検討を進めていくことが示されています。

 


2.希望する地域等での生活の支援や多様なニーズへの対応

①希望する地域生活の実現に向けた支援や、施設等における暮らしの質の確保

 地域共生社会の推進に向け、施設や病院からの地域移行を進め、障害者が希望する地域生活を実現するための支援充実や地域生活支援拠点等の整備が求められています。障害者支援施設については、 障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に関する検討会 で整理された役割や機能を踏まえた、具体的な報酬等のあり方が検討されます。
 そのほかにも、改正住宅セーフティネット法を踏まえた居住支援の推進、のぞまないセルフプランの解消を含む相談支援の質の確保、意思決定支援ガイドラインの見直しを踏まえた意思決定支援の推進、精神障害者に対する地域包括ケアシステムの構築の推進が掲げられています。

 

②多様なニーズへの対応

 障害者の重度化・高齢化が進む中、強度行動障害、高次脳機能障害、医療的ケア、発達障害、盲重複障害、ろう重複障害など、様々な障害特性に応じた支援体制の推進が求められています。手話施策推進法高次脳機能障害者支援法の成立、医療的ケア児支援法の改正を踏まえ、重度障害児者の受入体制の拡充が検討されます。また、障害児から障害者への円滑な移行・接続や、保健・医療・福祉をはじめとする関係施策・関係機関との連携強化を図るとともに、ピアサポートの取り組みをさらに促進するための方策について検討が行われます。

 

③障害児支援の質の向上と更なるサービスの充実

 多様化する支援ニーズ等を踏まえ、障害児支援の質の向上と更なるサービスの充実を目指す方針が示されています。人材育成やチーム支援の推進、支援体制の評価の見直しを行うとともに、医療的ケア児や重症心身障害児など支援ニーズの高い児童への対応を強化される見込みです。また、インクルージョンや家族支援の推進、児童発達支援センターの中核機能の更なる強化を通じて地域全体で子どもと家族を支える体制を構築するとしています。さらに、 今後の障害児入所施設の在り方に関する検討会 報告書を踏まえ、障害児入所施設における家庭的な養育環境の推進や機能強化に向けた必要な対応が検討されます。

 


3.サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性の確保

①事業者の質の確保

 障害福祉サービスの予算額が増加し事業所数が増加する中、制度の持続可能性確保に向け長期化した経過措置への対応を含めたメリハリのある報酬体系への見直しが必要とされています。本来の制度趣旨に沿わない形で加算を算定するなどといった行為による質の低下を防ぐため、各種ガイドラインを踏まえた対応や、虐待防止措置、情報公表制度、業務継続計画の策定を確実に進める方針です。また、改正労働施策総合推進法等を踏まえ、障害特性を考慮したカスタマーハラスメント対策も検討されます。さらに、従事者に求められる要件や研修の見直しを通じて、適切で質の高い支援が提供される環境を整えることが求められています。

 

②各サービスにおける適正な評価

 各障害福祉サービスにおいて、移動時間や定員規模などサービス提供の実態に応じた報酬のあり方や、中立性・公正性の確保、他制度や在宅生活者との平衡・公平性を考慮した見直しが検討されます。就労支援においては、働き方の多様化や新たに開始された就労選択支援の状況、 障害者就労に係る雇用福祉横断検討会 の議論を踏まえ、障害者の希望や能力に沿った就労を促進するさらなる対応が求められています。制度全体の持続可能性を高めるため、各サービスの実態や経営状況を踏まえた適正な評価と報酬体系の構築を目指して検討が進められる予定です。

 


4.地域格差や人口減少への対応等

 令和6年人事院勧告による国家公務員の地域手当の見直しを踏まえ、障害福祉分野の地域区分についても市町村の意向を確認しながら検討が進められます。国庫負担基準のあり方についても、地方自治体の負担を鑑みて検討を行うとしています。また、中山間地域や人口減少地域におけるサービス基盤の維持・確保に向けては、共生型サービスの活用など地域の実情に応じた対応が推進されます。さらに、社会福祉法等の改正により導入可能となった新たな配置基準や包括的な報酬の仕組みについて、具体的な基準等の検討が行われます。

 


3. まとめ

 今回提示された論点案を踏まえ、今後、サービスごとに議論を深めていく方針が示されています。報酬改定に関するサービスごと/横断的事項に関する主な意見は、本検討チームの 資料3  に詳細が掲載されています。
 今後の詳しい日程や各種資料などは 厚生労働省のホームページ をご確認ください。



【参考法令一覧】

障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律、平成17年法律第123号)
住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律、平成19年法律第112号)
手話施策推進法(手話に関する施策の推進に関する法律、令和7年法律第78号)
高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)
医療的ケア児支援法(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律、令和3年法律第81号)
労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、昭和41年法律第132号)
社会福祉法(昭和26年法律第45号)