【第156回障害者部会】 障害保健福祉施策の動向について解説
2026/06/17
第156回社会保障審議会(障害者部会)における報告・議題について紹介します。
令和8年6月5日に、第156回障害者部会が行われました。令和9年度障害福祉サービス等報酬改定と、障害者就労に係る雇用福祉横断検討会に関する報告、障害福祉サービスの質の確保に関する議論が行われました。本記事では、提示された資料から、重要な点をピックアップして紹介します。
1.令和9年度障害福祉サービス等報酬改定について
障害福祉サービス等に係る報酬については、令和9年度に定時改定が行われます。来年に向け、「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」を開催し、有識者の参画も求めたうえで公開の場で検討が行われます。令和8年6月からは関係団体へのヒアリングが開始され、年内に報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ、令和9年2月に報酬改定案のとりまとめを目指しています。
令和9年度報酬改定チーム検討スケジュール
・令和8年4月28日(火):今後の検討の進め方について
・6月~8月:関係団体ヒアリング(計6回程度開催)
・8月末頃:関係団体ヒアリングの意見まとめ、主な論点案
・9月~10月:各サービスの報酬等の在り方について検討
・11月:サービス横断的な報酬等の在り方について検討
・12月:報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ
・令和9年2月:障害福祉サービス等報酬改定案のとりまとめ
2.障害者就労に係る雇用福祉横断検討会について
障害者の就労支援は、雇用施策と福祉施策との連携のもと取組みが進められてきましたが、就労の場の進展や福祉施策の利用者像の変化などに伴い、障害者就労に係る雇用・福祉の果たすべき役割も変化し、改めて整理・対応すべき課題が存在しています。
就労系障害福祉サービスについては、令和8年2月に「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」により、報告書がとりまとめられ、雇用・福祉の役割分担など、両面から検討していく必要があるとされています。このため、具体的な検討の方向性を議論することを目的に、「障害者就労に係る雇用福祉横断検討会」が開催されます。
報告書については、本サイト「
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書
」の記事でも取り上げておりますので、適宜ご参照ください。
主な検討事項
(1)雇用と福祉の役割分担の基本的考え方
(2)就労継続支援の在り方、それらに対する障害者雇用促進法の適用の在り方(雇用率制度・納付金制度等)
(3)就労選択支援・就労移行支援・就労定着支援の効果的な在り方、障害者就業・生活支援センターとの役割分担
(4)福祉と雇用の相互往来関係(うつ等からの復職、企業雇用における障害者である労働者の加齢に伴う課題等)
(5)その他
3.障害福祉サービスの質の確保について
障害福祉サービスの質の確保については、第156回部会で示された資料の内容をまとめて紹介します。当日は、これらの資料をもとに議論が行われました。
①運営指導・監査体制の強化
近年、事業所数(特に営利法人が運営する事業所数)の急増に伴い、広範囲に影響を及ぼす処分事例が発生するなど、質の確保されたサービスの提供が大きな課題となっています。都道府県等による運営指導の実施率は全国平均で16.5%と低く、自治体向けの運営指導マニュアルや、処分基準の標準的な例も作成されていませんでした。このような状況を改善するため、厚生労働省やこども家庭庁は、事業者への指導・監査体制を大幅に強化する方針です。
重点的な運営指導
令和7年3月の第146回部会において、営利法人が運営する事業所数が急増している特定のサービス類型(就労継続支援A型・B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービス)に対し、3年に1回(実施率約33%)以上の頻度で重点的に運営指導を行う方針を示しています。
また、介護保険分野の取組を参考にし、『
集団指導・運営指導マニュアル(案)
』を作成し、運営指導の際に確認する事項を重点化した「確認項目及び確認文書」として示すとともに、処分の程度をA級〜D級に分類した『
監査マニュアル(案)
』(処分基準の考え方の例を含む)を作成し、令和8年度はこれらの活用状況の実態を把握して必要に応じた改善を加えることとしました。
運営指導の実施体制に関する取組事例
都道府県等においては、人員が限られる中で運営指導を効果的かつ効率的に実施するため、指定事務受託法人やオンラインを活用するといった工夫がみられ、運営指導の実施率向上に資するものであることから「集団指導・運営指導マニュアル」等においても周知することとしています。
自治体の職員に対する研修の充実
都道府県等職員向けの研修は、令和7年度以降、参加率向上を目指して実施時期を年度初期(5〜6月)へと前倒し、グループワークや自治体の実践報告を取り入れた実践的な内容へと見直されています。これにより、全129自治体の研修参加率は、令和6年度の55.0%から、令和7年度には93.8%と急増しています。
国が実施する業務管理体制検査の強化
すべての国所管の障害福祉サービス事業者等に対して、2年に1回程度の書面検査・実地検査を実施することとしています。特に、大規模事業者(100以上の事業所を運営する法人)には、法人本部のみならず事業所に対しても実地検査を行う、通報等があった場合は優先的に実地検査を行うなど、検査の強化を図っています。
一方で、任意のオンライン研修については、参加率がいまだ低調であるため、開催案内や受講の督促を強化することが求められます。
②適正な事業所指定を促すガイドラインの策定
サービスの質を確保・向上するため、事業所指定の適切な運用に向けたガイドラインの策定が進められてきました。(今回の障害者部会において、ガイドラインの案が示されています。)一部の事業者において法令遵守意識の欠如や不適切な支援、行政処分の事例がみられることから、事業の開始段階でのチェックが極めて重要視されているためです。
『 障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン(案) 』では、事前相談・事前確認の段階で、代理人ではなく指定希望者と直接面談して制度の理解度や事業内容を確認することを推奨しています。あわせて、地域のニーズや障害福祉計画等との調整を図るため、市町村が都道府県に意見を申し出ることができる「意見申出制度」(令和6年4月創設)の積極的な活用や、サービスの供給量がニーズに対して過剰な場合に、新規指定を制限できる「総量規制」を導入するまでの一般的な流れが示されています。地域で不足している個別ニーズ(強度行動障害者・重症心身障害者・医療的ケアを要する者への対応など)を例外規定として反映させつつ、質の高い事業者を選定できるような仕組みづくりを目指しています。
③共同生活援助の管理者の資格要件
共同生活援助(グループホーム)においては、障害福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の参入により、障害の特性に応じた適切な支援が行われないといった「支援の質の低下」が懸念されてきました。
令和8年2月には、共同生活援助において守られるべき最低限の基準を示した『
共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン
』を策定し、留意点と併せて自治体に通知されています。
加えて、令和9年4月から、共同生活援助の管理者に新たな資格要件が導入される案が示されています。具体的には、指定障害福祉サービス事業所等で3年以上の障害者支援等の実務経験があり、かつ都道府県等が実施する「共同生活援助管理者研修(仮称)」を修了していることが求められます(令和12年度本格施行予定)。
さらに、管理者だけでなく、世話人や生活支援員といった直接処遇職員に対しても、障害福祉に係る基礎的な研修の受講を義務づける運営基準の改正が検討されています。自治体・受講者の負担を考慮してeラーニング方式の導入などが想定されており、令和8年度の教材開発を経て、令和10年度からの本格的な施行(経過措置あり)に向けたスケジュールが組まれています。
4.まとめ
今回の部会では、令和9年度の報酬改定に向けた動きと、各サービスの質を担保するためのマニュアル策定・研修の強化などが示されました。特に共同生活援助(グループホーム)の管理者要件(研修)の新設、運営基準の改正は、今後の事業所運営に直結する重要な変更点となりますので、今後の障害者部会の動向を注視していく必要があります。
本記事で触れたマニュアル・ガイドライン案を確認したい方は、「
社会保障審議会障害者部会(第156回)の資料について
」をご覧ください。
