道なき道をゆく! オルタナコンサルがめざす 強度行動障害の標準的支援 第24回 コンサル導入事例❶ 組織マネジメントの見直しで、利用者の行動が変わった!
2026/02/13
この記事を監修した人

竹矢 恒(たけや・わたる)
一般社団法人あんぷ 代表 社会福祉法人で長年、障害のある方(主に自閉スペクトラム症)の支援に従事。厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修」のプログラム作成にも携わる。2024年3月に一般社団法人あんぷを設立し、支援に困っている事業所へのコンサルテーションや、強度行動障害・虐待防止などの研修を主な活動領域とする。強度行動障害のある人々を取り巻く業界に、新たな価値や仕事を創出するべく、新しい道を切り拓いている。
前回は、国が示している基本的な方向性をふまえて、コンサルの活用イメージを説明しました。
今回から数回にわたって、いよいよ私が実際にコンサルテーションに入らせていただいた事業所の事例を取り上げてみたいと思います。コンサルを活用した感想もうかがってみました。
「支援の問題」は、個人の力量の問題だと思っていた
――属人化していた組織との出会い
千葉県市原市にある第2クローバー学園(社会福祉法人クローバー会)さんとは、2014(平成26)年度以来のお付き合いになります。最初は、法人の経営コンサルタントからの紹介で、支援に関する相談をお受けしたのがきっかけでした。
当時の第一印象は、よくも悪くも「役職者のパワーが非常に強い法人」でした。その一方で、役職者と現場職員との力量差が大きく、支援が属人化している様子が目立っていました。
「私が夜勤のときには問題行動は出ないんだけど、〇〇さんのときは起きる」
そんな言葉が自然に交わされ、行動障害の課題が、組織の課題というよりも「力量の足りない職員個人の問題」としてとらえられている印象でした。
今振り返ると、当時の私自身も、その構造を十分にとらえきれていなかったように思います。コンサルタントとしての自覚もまだ薄く、「事例検討をきちんと進めていけば、何とかなるのではないか」と、どこか楽観的に考えていた時期でもありました。
組織に目を向けたとき、最初に変わったのは利用者だった
――人・組織・事業へのアプローチ
やがて、支援をめぐる職員間の対立や退職が目立つようになり、事例検討だけでは限界があることが明確になっていきました。話題は次第に、人材育成や組織編制、事業計画の考え方へと広がっていきます。
事例検討は継続しながらも、「人」「組織」「事業」という視点で法人全体を見直し、改善に取り組み始めたとき、ある変化が起こりました。
それは、利用者の変化です。
事例検討が個人任せではなく組織的に展開され、コンサルテーションで示した支援が現場で実行される確率が高まった結果、利用者の課題となっていた行動が、目に見えて改善していたのです。
この経験は、私がコンサルテーションを続けていくうえで、大きな転換点となりました。安心して実践できる環境が整うことで、職員は正しく育ち、結果として支援の質が高まっていく。その循環を、現場で実感させていただいたように思います。
現在、第2クローバー学園さんは、強度行動障害支援に限らず、さまざまな分野で力を発揮され、地域に向けた事例報告会や研修にも積極的に取り組む法人へと成長されています。
支援を変えたのは、利用者への工夫ではなかった
――チームマネジメントが生んだ変化
その歩みを象徴する支援事例を一つご紹介します。
コンサルテーションにかかわって数年後、入所施設で生活していた女性利用者全員が、法人が新たに整備したグループホームへ移行するという変化が起こりました。グループホームは、入所施設に比べると職員数が限られ、常勤職員にパート職員が数名という体制も珍しくありません。この事業所も同様でした。
移行した後、グループホームでのある日の事例検討会で、大きな声を出す利用者の支援が取り上げられました。事例を持ち込んだのは、25歳の常勤職員 Iさんです。Iさんは、アセスメントや行動の機能分析を的確に行い、記録や支援手順書、絵カードの作成も丁寧に対応する優秀な職員でした。
しかし、綿密に組み立てた支援は、一定の効果はあるものの、決定的な改善にはつながっていませんでした。事例検討会で焦点となったのは、支援内容そのものではなく、パート職員への指示や共有のあり方でした。
「理解してもらうこと」よりも、「まず支援を統一することを優先してみてはどうか」
そんな議論を経て、Iさんは利用者への支援ではなく、パート職員への共有方法を工夫します。具体的には、利用者に提示するカードの裏面に、パート職員向けのメッセージを書き込みました。
「声かけは一言までにしてください」
誰が見ても迷わない、具体的で現実的な指示です。
翌月、利用者の課題となっていた行動は、明らかに減少しました。支援が変わったのではなく、チームの動き方が揃ったことが、結果につながったのです。
この事例は、「標準的支援」「チームマネジメント」「組織マネジメント」の3つが重なり合ったときに、支援が大きな力を持つことを教えてくれました。
長い時間をかけて組織が整い、その上で現実的なチームマネジメントが機能するとき、支援は個人技ではなく、チームの力として実装されていく……。
そのことを、第2クローバー学園さんの実践は示してくれています。
コンサルを導入してみて
第2クローバー学園 支援課長 床井祐介さん
第2クローバー学園では、当初コンサルが入ることに対し、あまり積極的ではない職員も多くいました(業務が増える、自分は困っていない、入っても利用者は変わらない等の理由から)。事例検討を重ねていくうちに、竹矢氏はその状況をよくわかってくれて、支援だけではなく組織のマネジメントも合わせて、第2クローバー学園が変わっていくように一緒に考えてくれました。今思えば、この組織のマネジメントについての勉強が、私にとっても施設にとっても大きな収穫であったと思います。
コンサルから数年が経過し、マネジメントがうまくいき始めると、支援に結果が現れる部署も出てきました。結果が出てくると、少しずつ職員の意識も変化していきます。10年前と比べると、今では障害特性の考え方や対応方法等も大きく変わってきたと感じています。
コンサルに自分達の施設の弱みを明らかにし、受け入れていくことはとても勇気のいることです。しかし、自分達だけではなかなか解決できないことも、第三者から助言をもらうことで解決の糸口になること、組織の改善につながっていくことをこの10年で実感しました。
今は、同法人の別の入所施設にもコンサルに入ってもらうことになり、自分も一緒に参加しています。10年前の自分達を重ね合わせながら人材を育て、少しでも早く標準的な支援ができる組織づくりをしていくことを日々目指して頑張っています。
