今月のおはよう21 価値観ギャップを乗り越える !  職場のギクシャク・離職・ハラスメントを防ぐコミュニケーション

2026/10/13

『おはよう21』2026年12月号から、特集(価値観ギャップを乗り越える !
職場のギクシャク・離職・ハラスメントを防ぐコミュニケーション)の内容を一部ご紹介いたします。


スキルや年齢、仕事の意欲などには個人差がつきもの。
価値観や世代が異なる職員たちと仕事をするうえで、彼らの考え方や行動を変えようとするのは、骨が折れます。
むしろ大事なのは、お互いの価値観や双方のギャップを理解し、そしてともに歩むための方法を探ることです。
価値観の相違が浮き彫りになっているなか、コミュニケーションを改善するためのヒントを考えていきます。


「若者あるある」の正体から考えるコミュニケーションの溝

この「若者あるある」うそ? ほんと?

Q指示したことしかやらない
A「サボっている」のではなく「正しくやりたい」

「洗濯物を畳んで」と指示すると畳むだけで棚への片づけまでしない現象が起こります。
これは日頃からSNSや検索で情報を確認し「脳内シミュレーション」をしてから動く習慣があるためです。
「勝手なことをして怒られたくない」「指示された通り正しくやりたい」という真面目さの裏返しであり、指示の範囲を限定的に捉えていることが原因です。

 

「情報の空白」への恐怖を取り除く

人間関係の問題には、スキルや経験不足以上に「この場所に馴染めない」という強烈な「アウェイ感」が背景として存在します。
このアウェイ感は、単なるコミュニケーション不足ではなく、現代特有の情報の捉え方の変化に起因する「情報の空白への恐怖」があると考えられます。

 


シミュレーションという生存戦略

デジタルネイティブ世代が社会人として活躍している現在、私たちの多くも、スマートデバイスですぐに情報を検索するようになりました。
そうした時代において「事前のシミュレーション」はもはや生存戦略の一部となっています。

つまり、不確かな情報をできるだけ避けたい傾向が強まっているということです。

 

初めての飲食店へ行く際であれば、お店の場所やメニュー、内装、口コミ、混雑状況、さらには乗る電車の時間に至るまで事前に検索し、ある程度の脳内シミュレーションを済ませてから現地に赴きます。

 

この特性が一般化していくなかで、マニュアルが不透明で「見て覚えてね」「まずはやってみて」という曖昧な指示がまかり通る現場は、地図を持たずに知らない街に放り出されたような恐怖を伴うものになります。

 

フリーズ状態は恐怖心の表れ

「情報の空白」は、「勝手に判断して怒られたくない」「正解がわからないものには着手したくない」という心理的フリーズを引き起こします。
このフリーズこそが、すでに現場で活躍している職員から「やる気がない」と誤解される要因となります。
こうした誤解からコミュニケーションエラーが起こり、職員が萎縮してしまうと、まさに負の連鎖です。

 

「失敗したくない」というデフォルト設定が、正解の定義されない現場業務において強い恐怖心を生みます。
一度でも「そのやり方じゃない」と否定されると、次の動作に入ることが困難になるのです。

彼らはサボっているのではなく、正しくやろうとするあまり、確証が得られないとフリーズしてしまうのです。

 


「言葉通り」の行動とリスク回避の心理

たとえば、ある職員に「洗濯物を畳んでおいて」と指示を出したとします。
指導側にとっては、畳んだ後、所定の場所へ片づけるまでがセットです。
しかし、その職員が畳むだけで棚には収めなかったら、どうでしょうか?

 

こうした行動を能力不足と判断し、「気が利かない」と断じるのは早計です。
この職員にとって、指示を逸脱して自律的に動くことは、「勝手な判断をして叱責されるリスク」を孕んだものとなりえるのです。

 

もしも、かつて「余計なことをするな」「勝手に決めるな」と一度でも注意された経験があれば、彼らは「言われたことだけを完璧にこなす」という防御策を選択します。
これは彼らなりの、真面目すぎるほどの適応行動なのです。
ここで「片づけるまでが当然だろう」と突き放される一方で、自発的に動けば「勝手に判断するな」と叱責される。
この矛盾こそがダブルバインドです。

 

かつての介護現場は「言わなくてもわかる」という阿吽(あうん)の呼吸に支えられてきたと言えます。
しかし、価値観の多様化に伴って、明確に言語化することが求められるようになってきました。
かつて外国人スタッフ特有の課題だった「1から10まで教えないと動けない現象」が、今や現場全般に共通する課題になったと言えます。
いわゆるハイコンテクストからローコンテクストなコミュニケーションへの移行が進んだわけです。

 

若手職員が指示を限定的に捉えるのは、彼らが「言葉にされたことを基準として行動する」傾向を持っている表れでもあります。
指導側が前提条件をアップデートし、丁寧な言語化を心がけることは、マネジメントの生産性を高めるための必須要件と言えるでしょう。
「マニュアルがないこと自体が問題である」という認識を持ち、情報の格差を埋める努力を怠らないこと。
それが新人の心理的な壁を取り払い、彼らの自律的な行動を促す鍵となります。

 

 

「察する」から「言語化する」へ

かつての「背中を見て覚えろ」という阿吽の呼吸が通用しにくくなり、情報の多さゆえに「確実な正解」を求める性質が強まっています。
この変化を無視し、現場で「自分で考えて」という曖昧な指示を投げかけることは、部下を身動きの取れない「ダブルバインド」へと追い込みます。
詳細で明快な指示を望んでいないか、注意しておく必要があります。

 

また、その仕事をこなすこと以上に、「今の自分の仕事が何の役に立っているのか」と自問しながら働くことは、モチベーションの低下につながります。
すべての指示を1から10まで細かく丁寧に伝える必要はありませんが、自分の仕事が職場全体のどのポジションにあり、ほかの仕事とどうかかわっているのかを伝えることが重要です。

 

そのような全体を把握しながら仕事をすることで、何をどこまですればよいのかという、仕事の本質の部分が見えてくるはずです。
もし、職員の表情に「?」が浮かんでいるようなら、この部分を丁寧に説明するとよいでしょう。

 

現場のリーダーがついつい発してしまいがちな「自分で考えて」という言葉は、しばしば職員を思考停止に陥らせます。
ここには、教える側と教わる側の決定的な解釈の乖離が存在します。
「背中を見て覚えろ」という旧来の指導法は、情報の非対称性を利用した支配構造を生み出します。
受け入れ側は最初から新人と「対等な目線」に立ち、情報を積極的に共有・開示する姿勢が必要です。


解決のための3ステップ

❶指示の限定化……具体的にどこまでやるかを言語化して伝える。
❷「どう思う?」の問いかけ……「どういう手順で進めようと思う?」と部下の脳内シミュレーションを確認する。
❸断定による承認・許可……「それで間違っていないよ、やってみて」と背中を押す。

 

この「間違っていない」という断定的な一言が、若手の不安を解消し、自律的な行動を促すスイッチとなります。


続きは本誌でご覧いただけます。

 

取材協力

大野萌子(一般社団法人日本メンタルアップ支援機構 代表理事、公認心理師、産業カウンセラー)
井口健一郎(社会福祉法人小田原福祉会 理事、特別養護老人ホーム潤生園 施設長)


以上は、『おはよう21』2026年12月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。

 

特集

価値観ギャップを乗り越える !
職場のギクシャク・離職・ハラスメントを防ぐコミュニケーション

CONTENTS

1なぜ、介護現場でコミュニケーションがこれほど問題になるのか?
2「若者あるある」の正体から考えるコミュニケーションの溝
3職場内でのコミュニケーションのズレを解消する


『おはよう21 2026年12月号』

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